良質の睡眠とは

睡眠時間を長く確保することが、良質の睡眠であるとはいえません。
睡眠の質が低下すると、脳や身体が休まらず、ホルモンバランスが崩れます。それだけでなく、免疫力の低下にもつながります。

良質な睡眠を得るためには、『レム睡眠』と『ノンレム睡眠』のバランスと、『成長ホルモン』の分泌が関係しています。

レム睡眠・ノンレム睡眠とは

レム睡眠とは、浅い眠りのことで、脳が活動しているので、夢を見ることがあります。
一方、ノンレム睡眠は深い眠りのことです。

人間の睡眠では、一晩で4~5回ほど、レム睡眠とノンレム睡眠の周期が繰り返されます。
最も深い眠りは、最初の1~2回の周期で得られやすいとされており、この深い眠りを寝初めて約3時間で獲得することができれば、良質な睡眠となります。

成長ホルモンの分泌

成長ホルモンには疲労回復や細胞修復を活性化する作用があります。
寝初めてから3時間ほどで分泌されますが、質の高い睡眠を得られれば、より分泌が促されます。

睡眠時の正しい姿勢

日本人の平均睡眠時間は、約7.5時間であり、1日の約1/3を占めます。
この睡眠時間を正しい姿勢で過ごすことにより、良質な睡眠の獲得へつながります。

ここでは、睡眠時の正しい姿勢について、ポイントをいくつかご説明します。

●背骨のS字カーブを保つ

人間の脊柱(背骨)は、立位ではS字カーブを描いています。このS字カーブにより、重力の負担を軽減させ、歩行を可能としています。

睡眠姿勢もこのS字カーブを確保することにより、自然な姿勢になり、身体の負担を減らすことができます。
S字カーブを作るには、身体が沈み込む柔らかい敷布団やマットレスではなく、やや硬めの寝具を使うことが重要です。
また、首のくぼみにフィットする枕を選ぶことで、睡眠時の深い呼吸が促されます。

●寝返りをうつ

通常、人間は一晩で20~30回の寝返りをうつといわれています。

寝返をうつことで、体重の圧が一か所に集中するのを防ぎ、全身にバランスよく分散され、血の巡りを促します。
また、寝返りをうつことにより、日中の身体の歪みを修正しているともいわれています。
ベッドや布団は、十分に寝返りをうてるようなサイズのものを選びましょう。

●大の字がおすすめ

リラックスするためには、身体を圧迫しないことが大切です。
仰向けで大の字で寝ると、筋肉がリラックスしやすく、広い面で体重を支えるので、神経や血管を圧迫しません。
腕を広げて眠ることで、熱を放出する脇が広がり、体内に熱がこもりにくくなります。

睡眠時の悪い姿勢

デスクワークや家事をしている時に、不良姿勢だと肩がこったり、腰が痛くなったりします。
同じように、睡眠時の姿勢が悪いと、多くのデメリットがあります。

ここでは、睡眠時の悪い姿勢の例をご紹介します。

●腰が反っている

腰が反っている姿勢は、立っていても、寝ていても、腰の筋肉に大きな負担をかけます。
腰が反ったまま眠ると、腰の筋肉がリラックスできず、腰痛につながることもあります。

●背中が過度に丸くなっている

立っている時や座っている時、背中が丸く、猫背になっていると、肩こりや首こりの原因になります。
寝ている時も同様に、背中が過度に丸くなっていると、首や肩に負担がかかります。起床時に首や肩にだるさや重みを感じる場合は、寝る時の姿勢が原因となっているかもしれません。

良質な睡眠を得るために気を付けること

良質の睡眠を得るための3つのルールを解説します。

●体内時計をリセットする

人間の身体には体内時計がありますが、1日24時間ではなく、24時間11分になっているという研究もあります。この場合、体内時計をリセットしないと、1週間で約1時間ずれてしまいます。

体内時計がリセットされることにより、睡眠を促す『メラトニン』という物質が、しっかりと分泌されます。
体内時計をリセットするには、身体に朝だということを意識させることが大切です。毎朝、太陽の光を浴びたり、朝食を食べたりするとリズムが調整できて良いでしょう。

●入浴で身体を温める

入浴は血流を促し、身体を芯から温めることができるので、深い睡眠の導入につながります。

シャワーでは、表面のみしか温まらず、身体を芯から温めることがなかなかできません。
40度くらいのお湯を浴槽にため、ゆっくり浸かるのがポイントです。熱すぎるお湯では、身体がリラックスできず興奮してしまうので、ぬるめのお湯でゆっくり浸かりましょう。
そうすることで、筋肉がリラックスし、身体を効率よく休めることができます。

●睡眠時間を調整する

一日の睡眠時間は、約7時間が理想的だと言われています。
例えば、朝6~7時に起きる場合には、夜23時~0時には眠るようにします。睡眠時間が長すぎると体内時計が崩れてしまうので、注意しましょう。

また、食後すぐに寝てしまうと、胃腸が活動しているため、身体が休まりません。食事を就寝予定時間の3時間前には済ませることが大切です。

おわりに

良質な睡眠を得るために気を付けることと、寝る時の正しい姿勢・悪い姿勢を解説しました。

睡眠の質は、日常の健康はもちろんですが、寿命にも影響を与えます。
脊柱のS字カーブを守るために枕やマットレスは妥協せず、ご自身に合ったものを使用し、正しい姿勢で寝るようにしましょう。
また、生活のリズムを調整し、上手に睡眠時間を管理することで、しっかりと休息が得られます。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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