しもやけとは

しもやけは『凍瘡(とうそう)』とも呼ばれ、主に手や足、耳たぶ、鼻、頬などに赤い湿疹や腫れが生じるものです。
女性や子供に多く、赤くなった箇所にかゆみや痛みを感じます。
寒冷がきっかけとなって発症するものの、寒さが厳しい地方特有というわけではなく、冷え性などの体質によっても、なりやすさが変わると言われています。

しもやけの2つのタイプ

しもやけは大きく分けると2つのタイプに分類することができます。
1つは手足が熟れた柿のように腫れあがる『樽柿型』、もう1つは手足の指や鼻、頬などに赤い発疹が出る『多形滲出性紅斑(たけいしんしゅつせいこうはん)型』です。
いずれの場合でも、悪化することによって水ぶくれが生じ、それが破れると『びらん(ただれ)』を生じることもあります。
樽柿型は子供に多くみられ、逆に、多形滲出性紅斑は大人に多くみられるという特徴があります。

『しもやけ』と『あかぎれ』の違い

しもやけとよく似ている症状としてひび、『あかぎれ』があり、いずれも冬によくみられます。
しもやけは寒さによって指などが赤く腫れます。それに対し、あかぎれやひびは、空気の乾燥によって水分不足になった肌が、弾力性を失って割れることにより、出血や痛みなどを生じます。

しもやけの原因

しもやけの原因になるのは、「一日の気温の落差」と「皮膚表面の温度低下」であると言われています。

昼夜の気温差が大きくなる冬から春先にかけて起こりやすく、冷え性や体が冷えやすい体質の人では、特に起こしやすいとされています。
また、手足周辺の湿度の高さも影響があります。家事などで手足が濡れたまま放っておくと、水が蒸発するときに皮膚の温度が下がり(気化熱)、しもやけになりやすくなってしまいます。

しもやけのメカニズム

なぜ寒暖差と皮膚表面の温度低下がしもやけを引き起こすかというと、ポイントは人の体温調節の仕方にあります。

人には気温にあわせて体温を調節する機能があります。
例えば、寒さを感じた時には、指先などの細い血管が縮まって温かい血液を流しにくくし、体の表面から体温が逃げないようにします。
逆に、暑い時には血管を広げ、体の表面から熱が逃げやすいようにするのです。

寒暖差があると、寒さと暑さの刺激が繰り返され、血管の収縮と拡張が何度も起こることで血液の流れに障害が起きてしまいます。これが、腫れやかゆみを引き起こすのです。
特にかゆみは、血行が悪くなっているところが急に温まり、血液が流れですことによって血管の周囲の神経を刺激することによって生じ、お風呂などに入った時に痒みが増すのはこのためであると言われています。

しもやけの治療法

●血流を促す治療

しもやけの治療では、まず、指先や足先の血の巡りをよくすることが目標となります。
そのために用いられるのが、『ビタミンE』です。錠剤などを摂取することで、指先や足先の細い血管である毛細血管を広げることができます。
ビタミンEに加え、『ヘパリン類似成分』という、血行を良くする成分の入ったクリームを塗る場合もあります。

●かゆみ・炎症の治療

しもやけによってかゆみが出てきている場合は、皮膚に炎症が起きています。それを抑えるために『ステロイド』の入った塗り薬を用います。
炎症によるかゆみが続くと、掻いたり、引っかいたりすることにより、症状が悪化していってしまうことが考えられます。そのため、早めに強い薬を用いて炎症を抑えることが大切です。
かゆみが強い場合はこれに加え、かゆみ止めとして働く『抗ヒスタミン剤』を用いることもあります。

●水ぶくれ・ただれの治療

しもやけが悪化すると、水ぶくれやただれができ、細菌などへの感染のおそれが出てきます。こうした場合では、細菌の増殖を抑えるために『抗生物質』などが含まれた塗り薬を使うのが効果的です。
病院や薬局などで相談し、処方してもらいましょう。

●治療のまとめ

いずれの治療でも、1週間以上症状が良くならない場合や、悪化した場合は、病院(皮膚科など)にかかることが大切です。
たかがしもやけと思って放置してしまうと、重症化して治りにくくなってしまう可能性もあるので、気をつけましょう。

しもやけにならないための予防法

●衣服で防寒する

しもやけを予防するうえで一番大切なことは、きっちりと寒さ対策をするということです。
冬でも室内で暖房が効いていることが多く、少しの移動であれば、薄着になりがちです。

しかし、ほんの少しでも体が冷えてしまうと、やはりしもやけを引き起こすリスクが高まってしまいます。外出するときは手、足、耳などの露出しやすい部分をなるべく衣服などで覆い、冷えないようにしてください。
ただし、きつすぎる手袋や靴下などは、逆に血行を悪くしてしまうので、避けた方がよいでしょう。

●塗れたままにしておかない

しもやけの原因でも書いたように、炊事・洗濯後などに肌が濡れたままでいると、気化熱によって体が冷え、しもやけになりやすくなってしまいます。
また、厚着によって汗をかいたままの服を着続けていることも、体を逆に体を冷やす原因となってしまいます。濡れた服はこまめに取り換えるなど、きちんと対策を行わなければなりません。

●食事でビタミンEなどを摂る

しもやけ予防には、ビタミンEを多く含む食べ物を摂ることもおすすめです。
ビタミンEを多く含む食べ物には、落花生、アーモンドなどの豆類や、たらこ、マヨネーズ、サラダ油などがあります。このような食材をメニューに組み込むのが効果的でしょう。

ダイエットのために普段から油や脂質を避けているという方は、しもやけ予防のためには、より健康的な植物油をとることが推奨されます。
同時に『βカロテン』や『ビタミンC』を多く含む緑黄色野菜などを摂ると、ビタミンEの吸収率が上がり、高い予防効果を発揮します。

おわりに

しもやけの種類や原因、しもやけになるメカニズムや治療・予防法をお伝えしました。

しもやけは皮膚温度の寒暖差によって生じるため、とにかく冷えることのないよう常に防寒することが大切です。
特に、冷え性の人はもともと手先、足先の血行が悪くなりやすく、すぐにしもやけを引き起こしてしまうので、よく注意しておくとよいでしょう。
しもやけは何よりも予防第一なのです。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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