はじめに

温泉は休暇のリラックス方法のひとつですが、リラックス以外にも様々な効能があります。

今回は、温泉にはどんな種類のものがあって、それぞれどんな効能があるのかをまとめました。

温泉の効能を知って、自分の体の調子を整えるのに役立ててください!

温泉に種類ってあるの?

日本人が大好きな温泉ですが、含まれる化学成分、温度、pH(アルカリ性、酸性などの指標)、色や匂いなど様々な特色があります。それらの特色は温泉に含まれる化学成分の種類と含有量によって決まるのですが、昭和53年から環境省によって改訂された「新泉質名」で、下記の10種類に分類されています。また、泉質以外にも温度や浸透圧などでの分類も多数存在するのですが、温泉の効能を知る上では泉質による分類が最も重要です。泉質と効能を知って温泉の健康効果を利用してみてください。

1.単純温泉(アルカリ性単純泉)

温泉水1kg中の溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg未満で、湧出時の泉温が25℃以上のものです。このうちpH8.5以上のものを「アルカリ性単純温泉」と呼んでいます。

特徴は、肌への刺激が少なく優しい温泉であることです。入浴すると肌が「すべすべ」する感触があります。ほとんどが無色透明、無味無臭なので特色の無い温泉だと思われがちですが、単純泉は成分の含有量のみを評価していて、成分の種類について規定されたものではないです。各地の温泉によって様々な泉質があるようです。

2.塩化物泉

温泉水1kg中に溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が塩化物イオンのものです。 陽イオンの主成分により、ナトリウム-塩化物泉、カルシウム-塩化物泉、マグネシウム-塩化物泉などに分類されます。日本では比較的多い泉質です。

塩化物を含有しているため、汗の蒸発を抑制する作用があります。そのため、温泉から出てもしばらく体が温かい状態を保ってくれます。温泉は無色透明なのですが、ごく一部では黒湯となる温泉もあるようです。

3.炭酸水素塩泉

温泉水1kg中の溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が炭酸水素イオンのものです。陽イオンの主成分により、ナトリウム-炭酸水素塩泉、カルシウム-炭酸水素塩泉、マグネシウム-炭酸水素塩泉などに分類されます。カルシウム-炭酸水素塩泉からは、石灰質の温泉沈殿物、析出物が生成されることがあります。

中には皮膚を柔らかくして汚れを取る効果があるので美肌効果を期待できる泉質のようです。兵庫県の有馬温泉や、大分県の長湯温泉のような炭酸を多く含有している場合は、「炭酸泉」とも呼ばれています。

4.硫酸塩泉

温泉水1kg中に溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が硫酸イオンのものです。陽イオンの主成分により、ナトリウム-硫酸塩泉(芒硝泉)、カルシウム-硫酸塩泉(石膏泉)、マグネシウム-硫酸塩泉(正苦味泉)などに分類されます。

数ある温泉の中でも「薬湯」と言われるくらい健康効果のある温泉です。

5.二酸化炭素泉

温泉水1kg中に遊雛炭酸(二酸化炭素)が1,000mg以上含まれているものです。 日本では比較的少ない種類の泉質です。入浴すると炭酸の中に入ったような感覚があり、爽快な気分になれるのが特徴です。

飲用すると炭酸の爽やかな咽越しが楽しめます。俗に「泡の湯」とも呼ばれることがあります。大分県の長湯温泉や山形県の黄金(こがね)温泉が有名です。血管拡張作用があるため、血圧に問題がある人にお勧めの泉質です。

6.含鉄泉

温泉水1kg中に総鉄イオン(鉄Ⅱまたは鉄Ⅲ)が20mg以上含まれているものです。陰イオンによって炭酸水素塩型と硫酸塩型に分類されます。成分が鉄のため、温泉が空気に触れると鉄の酸化が進み温泉の色が赤褐色になります。そのため、「赤湯」と呼ばれます。

7.酸性泉

温泉水1kg中に水素イオンが 1mg以上含まれているものです。 ヨーロッパ諸国では、ほぼ見られない泉質ですが、日本には数多くみることが出来ます。酸味があり、酸性のため殺菌効果もあります。皮膚病の治療に用いられますが、酸性度が強いため刺激が強いので肌が弱い方には向かないようです。

8.含ヨウ素泉

温泉水1kg中にヨウ化物イオンが10mg以上含有するものです。 非火山性の温泉に多く、時間がたつと黄色く変色するのが特徴です。

9.硫黄泉

温泉水1kg中に総硫黄が2mg以上含まれているものです。 硫黄型と硫化水素型に分類され、日本では比較的多い泉質です。タマゴの腐敗臭に似た特有の臭いは、硫化水素によるものです。 湧き出した直後は無色透明なのですが、空気に触れると白色に濁ります。黄白色の沈殿物は「湯の花」とも呼ばれ、温泉地で売られている事も多いようです。この温泉も薬用効果が高いので古くから万病に効くと言われているようです。

10.放射能泉

温泉水1kg中にラドンが30×10-10キュリー以上(8.25マッへ単位以上)含まれているものです。放射能というと人体に悪影響を及ぼすと考えられがちですが、レントゲン等の放射線量よりずっと少ない量となっています。人工的でなく自然界に存在する放射能レベルは問題になる事はありません。

温泉が持つ色々な効能

温泉の効能は2種類あります。「一般適応症」と「泉質別適応症」です。「一般適応症」は、全ての温泉にある効能で、温泉共通の「温熱効果」によるものです。「泉質別適応症」は、温泉成分による「薬理効果」によるものです。これは、温泉の種類で説明した泉質によって効能が変わります。草津温泉を例にすると、泉質は「酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉」ですが、「酸性泉、硫黄泉、硫酸塩泉、塩化物泉」の効能があるという事です。下記の基本的な泉質別適応症を参考に、実際に温泉地に行った時に確認してみましょう。


1.単純温泉
浴用:自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
2.塩化物泉
浴用:神経・筋肉・関節痛、きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚疾患
飲用:萎縮性胃炎、便秘
3.炭酸水素塩線
浴用:きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症
飲用:胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、耐糖能異常(糖尿病)、高尿酸血症(痛風)
4.硫酸塩泉
浴用:きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
飲用:胆道系機能障害(胆嚢炎・胆石)、高コレステロール血症、便秘、痛風
5.二酸化炭素泉
浴用:きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症
飲用:胃腸機能低下
6.含鉄泉
飲用:鉄欠乏性貧血症
7.酸性泉
浴用:アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、耐糖能異常(糖尿病)、表皮化膿症
8.含よう素泉
飲用 高コレステロール血症
9.硫黄泉
浴用:アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症(硫化水素型については、末梢循環障害が加わる)
飲用:耐糖能異常(糖尿病)、高コレステロール血症
10.放射能泉
浴用:高尿酸血症(痛風)、関節リウマチ、強直性脊椎炎など


疲れを取って健康になる温泉の入り方

1. 食後、運動前後1時間は入浴しない

意外に思われるかもしれませんが、入浴という行為は体にかける負担が大きいです。そのため、血液が内臓に集中し負担がかかる食事後や体に負担のかかる運動の前後は入浴を避けましょう。思わぬ体調の悪さにつながる事があります。

2. 掛け湯を忘れずに

浴槽に入る前にからだを湯に慣らし、のぼせや脳貧血を防止するために掛け湯をします。浴槽の湯を心臓から遠い手足から順に2〜3杯ずつからだにかけてゆきます。ゆっくり長めに掛け湯をすることで血圧の急上昇も防ぐことが出来ます。さらに、浴後の疲労感が著しく軽減されます。

3. 深呼吸をする

入浴時ゆったりと深く、長めの呼吸を心がけます。息を吐く時に意識的にゆっくり吐き、吸う時は自然に任せます。すると、自然と呼吸が深く長くなります。それにより、温泉の成分を肺から体内に取り入れられます。また、頭から掛け湯する事も肺から温泉成分の吸引に良いようです。

温泉に入る時の注意点

1. シャワーで洗い流さない(かけ流しの場合)

温泉の成分は浴後も皮膚をとおして吸収されますので、あがり湯やシャワーで洗い流さないようにしましょう。しかし、循環させている温泉では、塩素や汚染によって皮膚炎を起こす可能性も充分あります。あがり湯をしないのは、かけ流しの温泉にしましょう。

2.入浴後に少し休む

温泉から上がったら濡れている体をふきながら汗を引くのを無理に冷やさずに待ちます。発汗によるデットクスを止めないためです。その後、服を着たら少し横になって休みます。水圧によって縮まっていた血管が湯から出て広がり、心臓は入浴中にも増して一生懸命働いています。心臓への負担を少しでも軽くしてあげましょう。これで浴後の疲労感はほとんど解消できます。

終わりに

是非、温泉に行ったら泉質にも興味をもって見て下さい、温泉の楽しみ方が増えると思います。また、湯治などで健康効果を最大限に享受したい人は湯治の仕方を指導してくれる施設もありますので一度行ってみるのも良いと思います。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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