鍼治療で使用する鍼

鍼治療の使用する鍼は多様なものがありますが、現在では細いステンレス製の鍼を使用しているところが多いです。
治療の方法においても様々ですが、ツボを探した後に場所を固定して筒状の管を使用して刺す『管鍼法(かんしんほう)』が日本ではオーソドックスな方法になっています。

鍼の長さは約40~80mm、太さは直径約0.17~0.33mmで、例えるなら髪の毛ほどの細さです。

最近使われている鍼はほぼ使い捨てで、滅菌した状態から使用してそのまま破棄するので、感染症の心配も低くなっています。
もちろん施術前には手指消毒や患部の消毒も徹底しています。
※ステンレス以外には、銀や金などの様々な材質で作られた鍼を治療に使用する場合もあります。

鍼治療の目的

鍼治療の主な目的も様々です。

代表的なのが痛みを抑えることです。
鍼でツボを刺激することにより、筋肉を緩めたり、痛みをつかさどる神経の働きをコントロールしたり、血行を良くしたりするなど、効果的な刺激を入れることによって痛みを和らげます。
それ以外にも鍼による治療は様々な治療アプローチが存在します。

現在では、美容目的で施術を受けられる方も多くいらっしゃいます。
美容目的の場合は、鍼刺激を行うことによって細胞を刺激したり、あえて微細な傷をつけることで新しい組織再生を促したりすることにより、肌の若返りを目指すことを目的とします。

鍼治療は対象年齢も幅広いです。
刺激の強い刺すタイプの鍼治療だけでなく、鍼を摩るように利用する『小児鍼』も有名です。
乳幼児の夜泣き、夜尿症などの症状に効果があるといわれています。

スポーツ選手などには、貼るタイプの鍼など『円皮鍼(えんぴしん)』と言われる鍼が活用されています。
内側に、小さな鍼が付いた丸いシールを直接皮膚に貼るので、運動中にも使用できます。

鍼治療の流れ

鍼治療は術者からの勧めがあっても、治療を受ける本人からの同意がなければ行えません。
鍼の効果や副作用などの説明を患者さんに説明してから行われます。
同意書を交わしてから施術が開始されることが多いです。

治療では、鍼で経穴(一般にいうツボ)を主に刺激していきます。
刺激の仕方も術者によって様々で、いろいろな方向から刺したり、刺して上下に動かしたり、刺してからねじったりするなどして刺激の質や量を調整します。

鍼治療には即効性があるといわれていますが、しっかりと継続して施術を受けることをおすすめします。

鍼治療の費用

治療内容には、自費治療と保険治療があります。

自費治療は基本的に1回完結の施術となります。もちろん継続した方が高い効果が見込めます。
平均相場は1回1,500円程度ですが、施術機関によって金額は大きく変わり、1万以上するところもあります。

一方、適応症状(事項で詳しく説明)に当てはまれば、保険治療を受けることもできます。
保険が適用されるので、1度にかかる費用が軽減できますが、症状を3ヶ月ごとに医師に診断してもらい、同意書を提出する必要があります。
同意書はかかりつけの病院か、鍼灸院と提携している病院で書いてもらうことになるので、保険施術までに少し時間がかかります。

鍼治療の効果

鍼治療には薬のように科学的に解明されていない効果が多いですが、代表的なのが痛みを抑えることです。
それ以外にも鍼による治療は様々な治療アプローチが存在します。

鍼の刺激がゲートコントロール(脊髄において痛みの根源に作用し、痛みを感じにくくすること)を起こしたり、痛みを和らげるエンドルフィンという物質の生産を促したりするといわれています。
さらに、鍼刺激には、末梢神経を遮断して患部に痛みが届かないようにする作用や、経穴を刺激して疼痛閾値(痛みを感じる刺激の最低強度)を上げる作用があるとされています。

また、筋肉の緊張を緩めて血行状態を良くする効果も期待できるなど多くの効果が期待できます。

その他の効果のある症状

前述したとおり、鍼治療には鎮痛効果があり、肩こりや腰痛などがある場合に受診することが多いです。
しかし、そのほかにも以下のような症状に効果があるといわれています。

1. 神経系疾患:神経痛、脳卒中後遺症、自律神経失調症、頭痛、不眠など
2. 運動器系疾患:関節炎、リウマチ、五十肩、腰痛、ムチウチ、打撲、捻挫など
3. 循環器系疾患:高血圧、低血圧、冷え性など
4. 呼吸器疾患:気管支炎、喘息など
5. 婦人科系疾患:更年期障害、生理痛、月経不順など
6. 耳鼻科系疾患:中耳炎、耳鳴り、難聴、メニエル病、蓄膿症、扁桃炎など
7. 眼科系疾患:眼精疲労、結膜炎、疲れ目、ものもらいなど
8. 小児科系疾患:夜泣き、かんむし、小児喘息、夜尿症など

保険が適用される症状

以下は保険が適用される6つの症状です。保険適用には医師の同意書が必要です。

1. 神経痛:坐骨神経痛など
2. リウマチ:手や足などの関節が張れたり、痛みを発するもの
3. 頸肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん):首から腕にかけて痛みやしびれを発するもの
4. 頸椎捻挫後遺症(けいついねんざこういしょう):事故後にムチウチなどの症状が残ったもの
5. 五十肩:肩に痛みがあり、腕があがらないもの
6. 腰痛:ギックリ腰など

おわりに

鍼治療は怖い・痛いというイメージが強いですが、実際に受けてみると、思ったより恐怖心や痛みを感じなかったという声がよく聞かれます。

主に痛みを軽減・消失させる目的で施術を受けることが多いですが、最近では、美容など幅広い目的で使用されています。
様々な健康効果が期待されていますが、鍼治療には解明されていないことが多いのも事実です。
しっかり説明を聞いてから施術を受けるようにしましょう。
この機会にぜひ一度治療院に足を運んでみてください。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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