心拍トレーニングとは

『心拍トレーニング』とは、心拍数を常時計測しながらトレーニングを行うトレーニング法を言います。
運動の目的には、運動不足解消、ダイエット、マラソンの記録更新など様々あり、それぞれ適した運動強度は異なります。
目的に合わせた運動強度や年齢から目標となる心拍数を設定し、その心拍数を保ちながら運動を継続することで、目的とする運動効果を最大限に高めることができます。

心拍トレーニングのメリット

目的とする運動効果を高められる

心拍トレーニングでは、心拍数を計測するだけで、自分が今どの程度の強度の運動を行っているのかがわかります。
例えば、ダイエットを目的としている場合には、脂肪燃焼を効率よく行うために、心拍数をさほどあげずに軽めの有酸素運動を長時間継続します。
マラソンなど長距離走での記録を伸ばしたい場合には、有酸素運動の中でできる限りスピードを上げていく必要があります。そのため、やや心拍数を上げながらも、長時間継続できる運動強度を保ちます。
目標となる心拍数が明確になることで、ランニング中でも自分のペースが速すぎるのか遅すぎるのか常に確認でき、随時修正しながら走ることができます。そうすることで、より目的とする運動強度に近い状態を保つことができ、運動効果を最大限高められます。

能力向上が目に見えてわかる

長距離走を行う中で、同じ距離を早いタイムで走れるようになると、能力が上がったことが一目瞭然です。
同じように、心拍トレーニングでも、いつもと同じ心拍数で走っていてタイムが上がっていれば、心肺機能が高まったことがすぐに分かります。同じ心拍数で速く走れるようになったということは、マラソンなどの長距離走でさらにペースをあげていけるという指標にもなります。
このように、心拍トレーニングを行うと、自分の能力の向上を数字としてはっきり示すことができます。

安全にトレーニングが行える

長距離走や一定以上の時間継続するようなトレーニングでは、ペース配分を「きつい」「ややきつい」「やさしい」といった主観的なものに任せがちです。
一方、心拍トレーニングでは常に心拍数を計測できるので、主観ではなく、心拍数に合わせてきちんと運動強度をコントロールすることができます。
いつもと同じペースで走っていても、体調の優れないときなどは、心拍数がいつもより高くなってしまうことがあります。そのような時でも、ペースを抑えて安全にトレーニングを行うことができます。

心拍トレーニングのデメリット

心拍トレーニングを行うには、心拍数を常に計測できる器具が必要です。
最近は時計の中に内蔵されているようなものや、心臓に近い胸周りに直接巻くようなものもあります。
ストップウォッチさえあれば測定できる『ペース走』に比べると、誰でもすぐに始められるというわけではないので、手軽なトレーニングとは言いにくいかもしれません。

心拍トレーニングのメニューの作り方

心拍トレーニングの具体的なメニューの作り方についてご説明します。

安静時心拍と最大心拍

心拍トレーニングを行う上で、最初に把握しなければならないのが、自分の『安静時心拍』と『最大心拍』です。
安静時心拍とは、文字通り安静にしている状態での心拍数のことです。
一方の最大心拍とは、自分がこれ以上なくきつい運動をしているときの心拍数のことです。
普段からトレーニングを行っている方は、そのような状況のときに心拍数を測定し、その値を採用しましょう。そういう機会のない方には、年齢を参考にして最大心拍を予想した以下の計算方法が一般的に採用されています(他にも少しずつ異なる式があります)。

最大心拍=220―年齢(回/分)

運動強度ごとの運動効果

心拍トレーニングでは、運動の目的ごとに適した運動強度が定められています。

50~60%:ウォーミングアップ、クーリングダウン
60~70%:脂肪燃焼(ダイエット)、持久力アップ
70~80%:有酸素能力アップ
80~90%:筋力アップ、インターバル走、乳酸耐性アップ
90~100%:無酸素能力アップ、瞬発力アップ

この運動強度と自分の最大心拍数、安静時心拍数を元に目標心拍数を設定します。

目標心拍数=(最大心拍-安静時心拍)×運動強度+安静時心拍
※運動強度は60%=0.6などと少数に変換して計算します。

このようにして算出した目標心拍数になるように調整しながら運動を行いましょう。そうすることで、目的とした運動効果が効率よく得られます。

心拍トレーニングの注意点

ウォーミングアップ・クーリングダウンを行う

高い運動強度で心拍トレーニングを行う際、運動開始から急激に心拍数を目標心拍数まで上げると、心肺機能への負担が大きくなります。
高い運動強度を目標としているときも、まずはウォーミングアップとしましょう。50~60%の運動強度となるジョギングなどを行ってから、徐々に心拍数を上げていくようにしてください。
また、運動終了時も、クーリングダウンを行いましょう。高い運動強度で急に終了するのではなく、徐々に心拍数を下げるようにしてください。

心拍数以外の体調にも目を向ける

心拍トレーニング中は、目標とした心拍数を維持することが優先になり、心拍数ばかりに目がいきがちになります。
しかし、目標心拍よりも少ない心拍数でいつも以上にきつく感じるときがあったり、逆に心拍数が上がっていても楽に感じることがあったりすることがあります。その日の体調やトレーニング疲れ、精神的なストレスなど、様々な要因で心拍数や主観的な運動強度は変化するので、それらにも目を向けましょう。
運動強度を一定にするために心拍数に目を向けることは、とても参考になりますが、その他の要素も観察し、その日その日に適したトレーニングを行うようにしてください。

おわりに

心拍トレーニングについてその意義やメリット・デメリット、具体的なやり方、注意点をご説明しました。
日々トレーニングを積み重ねている方には、それぞれ目的があると思います。心拍トレーニングを取り入れてトレーニング効果を高め、自分の目標に近づくことができれば、さらにモチベーションが上がり、より一層トレーニングに励むことができるのではないかと思います。
現在行っているトレーニングで行き詰っている方や、より効率よくトレーニングの成果を出したいという方は、是非挑戦してみてください。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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