背筋とは

『背筋』とは、上半身の後ろ側、背中から腰にある筋肉の総称です。
背筋は腹部に走行している『腹筋群』と反対に、体幹を伸展させる(反らす)働きがあります。腹筋群と背筋群がバランスを取りながら機能することで、体幹をうまく安定させ、姿勢を維持しています。

背筋に含まれる筋肉は、大きく2つに分けられます。
1つは、『広背筋』と言い、背中から腰にかけて全体に大きく広がっています。もう1つは、背骨の両側にあり、背骨の動きをコントロールする最長筋、腸肋筋、棘筋を総称した『脊柱起立筋』です。
他にも背骨の周りには筋肉が多数あり、それらも含めて背筋と呼ばれています。

背筋を鍛えるメリット

背筋を鍛えることで得られるメリットをご紹介します。

■姿勢がよくなる

椅子に座っているときや立っているときの姿勢は、人によってさまざまです。腰や背中が丸まった猫背姿勢は、疲れていたり、やる気がなさそうに見えたりします。
一方、背筋が伸びて上半身がまっすぐになっている姿勢は、やる気や活気にあふれ、元気な印象を与えます。

背筋を鍛えることで、背筋を伸ばす力やそれを継続する力が向上するので、活気のあるよい姿勢を維持しやすくなります。
また、疲れにくくなることで、仕事や勉強に対する集中力も持続しやすくなります。

■腰痛や肩こりを予防・改善する

腰痛や肩こりは、姿勢不良や筋力不足によって起こる筋肉の痛みが多いため、背筋を鍛えて姿勢がよくなることで、それらの痛みは改善します。

また、背骨の周りにある背筋が働くことで、背骨をしっかりと支えることができます。これにより、『ヘルニア』や『変形性脊椎症』、『急性腰痛症(ぎっくり腰)』など、背骨周囲の変形や病変を防ぐことができます。

■引き締まった背中になる

背筋を鍛えると、背中の周りの脂肪が燃焼して引き締まった背中になります。
肩甲骨がくっきり見える引き締まった背中は、年齢を若く見せてくれます。また、水着や背中のあいた服を着るとき、温泉などで人に背中を見られるときなどに、自分に自信をもつことができるのではないでしょうか。

さらに、トレーニング上級者の方は、負荷の強いトレーニングを行うと、逆三角形のたくましい背中を作り上げることもできます。

■持ち上げる力が向上する

重たい物を持ち上げるとき、腕の力や脚力ももちろん大切ですが、背筋の力もとても重要です。
手で持ったところから、上半身を起こして持ち上げるときには、腹筋と背筋の力が必要になります。そのため、背筋を鍛えておくと、重たいものも楽に持ち上げられるようになります。

反対に自分の背筋以上の重さの物を持ち上げようとすると、腰の筋肉や関節に無理をさせ、ぎっくり腰になってしまうこともありますので、注意が必要です。
普段から重労働をすることもある方は、特に、背筋の筋力を高めておくことが重要です。

背筋の自重トレーニング6選

背筋のトレーニングの中から、自分の体重を負荷として行う、おすすめの自重トレーニングをご紹介します。

■ブリッジ

今回ご紹介するトレーニングの中で、最も難易度が低いので、中高年の方でも始めやすいでしょう。
背筋とともに、『大臀筋(お尻の筋肉)』も鍛えられます。

1. 膝を曲げて仰向けに寝て、両足を骨盤の幅に開きます。
2. 足の裏で床を押しながら、お尻から背中を徐々に浮かせていきます。
3. 身体を横から見た際に、肩から膝までが一直線になるところまでお尻をあげたら、ゆっくり下ろします。
4. 手順2、3の動きを繰り返し行います。

■バックエクステンション

バックエクステンションのトレーニングでは、頭側と足側両方から身体を反らします。
無理をすると、腰痛を発症する原因となってしまいますので、勢いをつけて行わないことと、自分の可動域以上に腰を反らさないことに注意しましょう。

1. うつ伏せに寝て、頭の後ろに手を組みます。
2. 背筋の力でゆっくりと身体を反らし、上半身と足を床から浮かせます。
3. 上げられるところまで身体を反らしたら、ゆっくりと下ろします。
4. 手順2、3の動きを繰り返し行います。

■リバースプランク

リバースプランクでは、肩の十分な可動域と、体重を腕で支える筋力が必要になります。その分、ブリッジよりも難易度が上がります。

1. 両足を骨盤の幅に開いて両膝を立てて床に座り、身体より後ろの床に両手をつきます。
2. 背筋を伸ばして胸を張り、ゆっくりとお尻を持ち上げます。
3. 身体を横から見たときに、膝から肩までが一直線になるようにします。
4. 呼吸を止めることなく、数秒間姿勢を維持してゆっくりと下ろします。
5. 手順2~4の動きを繰り返し行います。

■クロスボディアーチ

クロスボディアーチでは、身体を支えながら手足を動かすので、背筋だけでなく、腹筋も含めた体幹の安定性が必要になります。そのため、体幹トレーニングとしても多く用いられます。

1. 四つ這いになり、両肩の真下に両手を、両股関節の真下に両膝をつきます。
2. 身体を横から見たときに、肩から股関節までがまっすぐになるように、腹筋と背筋で体幹部を固定します。
3. 右手を前に真っ直ぐ伸ばすと同時に、左足も股関節から大きく後ろに伸ばします。
4. 手から足までのラインが滑らかなカーブを描くようにし、手足に対して極端に腰が反っていないか、体幹部が左右に傾いていないかなどを確認しながら行います。
5. 手足ともいっぱいまで伸ばしたら、身体が傾かないように注意しながら、手足を元に戻して四つ這いになります。
6. 手足の左右を替え、交互に対角になる手足を動かします。

■腕立て伏せ

腕立て伏せでは、腹筋と背筋を使い、身体をしっかりと固めて動くので、体幹トレーニングにも使われます。
体幹の筋力に加え、肩周囲や腕の十分な筋力も必要になります。

1. 四つ這いになり、手を肩幅より拳2つ分広くして床につき、肘を伸ばします。
2. 足を腰幅に開いて膝を伸ばし、つま先だけが床につくようにします。
3. 体を横から見たときに、頭、肩、股関節、足が一直線になるようにします。
4. 肘を曲げながら、ゆっくりと体を床に近づけていきます。
5. 頭や胸が床ギリギリまでいったら、肘をゆっくりと伸ばしながら、元の体勢に戻ります。
6. 手順4、5の動きを繰り返し行います。

■懸垂

今回ご紹介するトレーニングの中で、最も難易度が高く、道具を要するトレーニングです。
懸垂では、主に腕の筋力を使うと思われがちですが、肩関節を引く(伸展させる)動きも含まれているので、広背筋も大きく関与しています。

1. 両手を肩幅に開いて手のひらが自分に向くようにするか、もしくは両手を肩幅よりやや広く開いて手の甲が自分に向くようにして、鉄棒を持ちます。
2. 足がついた状態から、ゆっくりと肘を曲げて身体を持ち上げ、浮かせていきます。
3. 顎が鉄棒と同じ高さまで上がったら、ゆっくりと身体を下ろしていきます。
4. 肘が伸び切る少し手前まできたら、また身体を持ち上げていきます。
5. 手順2~4の動きを繰り返し行います。

懸垂は一般的に10回前後繰り返すのが好ましいとされています。
しかし、1回もできない、もしくは連続で3回に満たないときは、『斜め懸垂』をするのが良いでしょう。足が地面につく鉄棒で、斜めに身体を倒し、足が常に地面についた状態で懸垂を繰り返します。
一般的な懸垂より負荷が軽減するので、挑戦してみてください。

おわりに

背筋のトレーニングを行うメリットと、自重トレーニングの具体的な方法をご説明しました。

運動習慣のない方でもすぐに始められるトレーニングから、スポーツ競技のための筋力トレーニングとして十分使えるものまでご紹介したので、ご自身の筋力や目的に合ったものを試していただければと思います。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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