はじめに

フケが増えてなんとも人の前に行きたくない、髪の量が気になって落ち着かない。
こんなちょっとした悩みを持ち始めた人はいませんか?フケはただの洗い不足と判断してよいのでしょうか?地肌が見えてきたのは年齢のせいと諦めていませんか?
フケが原因の脱毛症があるとわかっている人は意外に少ないかもしれません。問題解決するためにも「粃糠性(ひこう性)脱毛症」について知識を深めてみましょう。

粃糠性(ひこう性)脱毛症とはどんな病気?

脱毛症にはさまざまな原因があり、また一番原因が不明確な病気であるとも言えます。
粃糠性(ひこう性)脱毛症もその一つで、いまだ明確な原因や絶対的な条件はなく研究が進められている段階です。

粃糠性(ひこう性)脱毛症とはフケが異常な量で発生し、それに伴って脱毛が起きてしまう病気です。
粃糠性(ひこう性)という言葉もなかなかなじみないのですが、「粃糠性(ひこう性)」は細かい米ぬか状という意味です。肩に落ちる白いフケが米ぬかのような形状なので引用されたとされます。

粃糠性(ひこう性)脱毛症は単独で生じる病気ではなく、脂漏性皮膚炎に関連されて生じた脱毛と考えることが良いでしょう。

粃糠性(ひこう性)脱毛症に至るまでのメカニズム

私たちの頭皮には当たり前のように「フケ」が存在します。
顔や手足の皮膚と同じく頭皮にも新陳代謝が行われます。皮膚を作り出す基礎細胞が古くなると新しい細胞の邪魔になるために毛穴上部に押し出されます。それが角質となって剥がれ落ちるのがフケというわけです。

何らかの理由でフケが増えるというのは、一つに皮脂の過剰物質が原因で常在菌であるマラセチア菌という真菌が繁殖することが原因です。
通常は頭皮にはマラセチアを含む20種類以上もの常在菌があり、雑菌や病原菌などの侵入を防御する働きをする目的があるとされています。

マラセチア菌は皮脂のたんぱく質を栄養として生きているのですが、マラセチア菌が脂質を分解する過程でオレイン酸やアラキドン酸という不飽和脂肪酸を発します。これが原因でかゆみや炎症を起こし脂漏性皮膚炎につながるとされています。
ここで、皮脂が多いとその分マラセチア菌の量も増え、フケが増えるという説があります。
フケが増えると毛穴のターンオーバーがリズムを崩し、今ある髪の維持も髪を作る機能も失われ、脱毛となるわけです。

粃糠性(ひこう性)脱毛症の皮膚症状と特徴

粃糠性(ひこう性)脱毛症の症状は、フケが主な症状ですが、普通にポロポロと落ちる量ではなく、白っぽい色からややグレーがかった色のフケが固まって落ちます。
そのフケはいくら髪を洗っても減少することはなく、かゆみも軽減しません。

ときには髪の生え際が皮がむけた状態でカサツキがみられることもあります。
脱毛の特徴は一気には抜けませんが髪質が細くなったり、徐々に髪の量が減っていきます。
男女問わず発症しますが、統計的には男性に多く見られる脱毛です。

粃糠性(ひこう性)脱毛症を引き起こす根本原因はこれ!

今のところはっきりとした原因がわかっていないので、仮説に伴って原因を排除していくしかありません。
フケが増えることで粃糠性脱毛症に移行してしまう、そのフケを増やす原因は皮脂、皮脂を増やす原因としては、いくつか挙げられます。

男性ホルモン

普段からも女性より男性の方が汗をかきやすい脂ぎる光景はよく目にするように、男性ホルモンが過剰に分泌されると皮脂も増える仕組みになっています。
またホルモンバランスが崩れると免疫力の低下を招きますので炎症が起きやすくなります。

睡眠不足やストレス

睡眠不足は寝ている間に分泌されるメラトニンを減らしてしまいます。
メラトニンは抗酸化作用がありますのでフケを増やさない効果もあります。
またストレスは男性ホルモンの分泌を促進する原因にもなり、皮脂の増量を加速化してしまいます

食事

食事のバランスが悪い、もしくは脂肪分の多い食べ物ばかり食べていると皮脂も増えてしまいますし、頭皮に栄養が行きわたりにくくなります。

洗髪

刺激の強いシャンプーは頭皮を傷めてしまい乾燥もおこします。また洗い残しは菌の繁殖を促す結果にもなり、ターンオーバーを阻害してしまいます。

粃糠性(ひこう性)脱毛症の治療薬と管理方法

かゆみに対する治療としては炎症をおさえてかゆみを除去しようという目的のもとでステロイド外用薬が多く用いられます。
またマラセチア菌が真菌に属するため抗真菌薬のケトコナゾール外用薬の処方や、ビタミン剤、抗アレルギー薬の内服も追加されるケースが多いです。

外用薬では対処療法の役割にしかならないので、根本を変えていく、治していくという意味では生活改善が必要とされます。
シャンプーの仕方はガリガリ、ゴシゴシと力強く洗うのではなくマッサージをするようないたわりの方法が良いとされますし、シャンプー選びにも気をつけなくてはなりません。
化学成分が多い物よりはアミノ酸中心の無添加製品やケトコナゾール入りのシャンプーを使用することがよいとされます。

食事はビタミンB2やビタミンB6の成分が多く含まれている食品を中心にバランスの良い内容に変える、脂質や糖質の多いものは多く食べないなどの考慮が必要です。

ストレスは天敵となりますので、自分なりの解消方法を探すことが先決ですね。ストレスを増やさないということは不眠症からも回避できますし、炎症に勝てるような免疫機能を高めることにもなります。

まとめ

フケが多くなった、髪が薄くなったと気になっている人は少なくないと思います。
社会的にもストレスが多くなっていますから、要因としてはいたるところにあると判断せざるを得ない状況です。
フケを汚い、不潔だとイコールに考えるのではなく、今では一つの病気に分類されます。
症状が大きくなる前に、気になりはじめたらすぐに皮膚科を受診することが良いでしょう。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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