はじめに

高齢者の外出と介護の関係性

皆さんはオシャレをして外出するとどんな気分になりますか?
老若男女問わず、いつもより明るく前向きな気持ちになれる方もいるでしょう。
また、着るものに関係なく、晴れた日に外出することで晴れやかな気分になる方もいるでしょう。
しかし、高齢者の方の中には、身体能力の低下から、外出を控えてしまう方も少なくありません。
本記事では、外出やおしゃれが脳にどのような刺激を与え、認知症の予防や進行を遅らせるために効果的であるかをご紹介します。
高齢者の方は体力の衰えから、若い頃よりも行動範囲が狭くなりがちです。また、外出を控えることで他人との交流を持つ機会が減り、徐々に自宅に引きこもりやすくになります。会話をする機会が減ると脳に刺激を受ける機会も減ってしまうため、認知症などの病気を発症したり、また既に認知症を患っている場合は症状が悪化することがあります。外出しないと体を動かす機会も減るため、身体機能の低下にもつながります。

寝たきりにならないために「運動する」という意味でも、外出することが大切です。また、外出して季節の変化を感じ、見ることで、昔の思い出を思い出したりすることができ、脳を活性化する面においてもよいことです。

外出の機会が少ない高齢者のために介護サービスの1つで「外出支援」というサービスがあります。どのような外出支援があるのかを見てみましょう。

デイサービスなど自身で通うサービス

週に数回、デイサービスやデイケアなどの通いのサービスを利用することで、外出の機会ができるだけでなく、他の人との交流を持つことができます。また、デイサービスではリハビリを行っている施設もありますので、周りの人と楽しみながら、脳を使ったり運動をすることができます。

外出支援のサービス

デイサービスは介護保険適用のサービスですが、介護保険外でも外出支援のサービスを行っているところもあります。サービス内容は散歩や買い物に付き合ってくれるなどさまざまです。しかし、介護保険外のため、デイサービスなどに比べて費用がかかる場合があります。
このように高齢者の方が外出することは、介護サービスを利用するなどして、周りとの関係性が生まれ、かつ体も動かす機会にもつながるため、健康にとって効果的です。

オシャレをすることは脳の活性化や健康に効果的

年齢を重ねた女性でも化粧を施して清潔な身なりを心掛けている方がいますが、オシャレをすることは見た目がキレイになるではなく、脳の活性化にも効果があることをご存じですか?
オシャレをするとどのような効果があるのかをご紹介します。

脳の活性化

化粧をしてオシャレをした自分を見ると気持ちがときめきます。これは、快楽などを生み出す脳内物質であるドーパミンが出ている証拠です。その結果、ストレスホルモンが減少し、脳の活性化にもつながります。

心への刺激

化粧をしてオシャレをすると自分に自信が持てるようになり、他の人と会おうとする気持ちが生まれます。他の人と会ってコミュニケーションをとると一人では味わうことのできない共感する楽しさが生まれ、心の刺激にもなります。こうした心の刺激は、表情を豊かにするだけでなく主観的幸福感を高めます。

体への刺激

化粧やオシャレをするときは、視覚にも刺激を与えていますが、腕や指先も化粧をするために動かしているため、自然と運動していることになります。化粧に必要な動作は、食事をする動作の約2~3倍の筋力を使うといわれています。化粧やオシャレをすることによって筋力維持に役立ち、身体能力の低下を抑えることができます。

口腔内への刺激

化粧をするときにファンデーションを塗るために頬をなでると思いますが、そのことにより唾液腺がマッサージされてリラックス効果を得ることができます。そして唾液の分泌促進にもつながります。高齢者になると唾液の分泌量が減ってしまい、そのことが原因で食べ物を飲み込むための嚥下(えんげ)機能も衰えます。唾液の分泌量が増えると嚥下機能を高めるだけでなく、発声にもよいため口腔リハビリにもなります。
このように高齢者の方が化粧をしてオシャレをすると脳だけでなく体のさまざまな場所に刺激を与えることができます。また、オシャレをした本人だけでなく、その周りの人へもよい印象を与えることができるでしょう。

高齢者が外出するようになるために家族ができること

高齢者の方の外出には介護サービスだけでなく、介護する家族のサポートが大切です。それでは家族の方が実践できるサポート方法を見ていきましょう。

出かける機会を作る

高齢者の方は身体的不安なども増えてくる場合があるので、自分ひとりで行動すること回数が徐々に減ってきます。家族の方が「一緒に行こう」と声をかけてあげることで、初めは嫌がり断ることがあるかもしれませんが、気持ちが切り替わるまで何度か声をかけてあげましょう。

オシャレを勧める

オシャレをすると楽しい気持ちになり外出する意欲がわきます。散歩などの短い外出でもオシャレをすると気持ちが明るくなります。また、新しく素敵だと感じる物を身につけると、気持ちが華やぐので服などをプレゼントをしたり、一緒にショッピングへ出掛けることも効果的です。

転倒などのしないようにする

外出した際、一度転倒してしまうと次の外出を嫌がることがあります。それは次も転倒するのではないかという不安からくるものです。そのような場合は転倒しづらい設計の靴に替えたり、杖を使ってもらうなど工夫するとよいでしょう。

一緒に行動するようにする

自分一人では身体的不安から外出できなくても、家族が一緒なら安心して外出してくれるようになります。一緒に外出する際、歩行をいつでも補助できるように家族の方の荷物は、肩掛けバッグなどではなく、両手があくリュックをオススメします。また、明るい話題の会話をたくさんすることで外出を楽しく感じてくれるようになるでしょう。
このように高齢者の方を外出させるためには、本人の不安を軽くしてあげることが大切です。そのために家族の方が率先して動くことで、本人だけでは難しい気持ちの切り替えができ、外出につながるでしょう。

まとめ

高齢者の方には外出やオシャレが体や脳によいことであるとわかっていただけましたか?
高齢者の方が外出するためには家族や周りの方のサポートが大切です。脳を活性化させるためにも高齢者の方が進んで外出できる環境を作ってあげましょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田 早苗

・総合診療医 院長 豊田 早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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