漢方とは

漢方と漢方薬の違い

『漢方』と『漢方薬』は同じものであると考えている方も多いですが、実は意味が異なります。
漢方は東洋医学の考えの一つで、これには、どんな食材をどのようにして食べるのかを考える『食養生』や、鍼やお灸を使って体調を整える『鍼灸』なども含まれます。

一方、漢方薬とは、医学の理論に基づいて処方される医薬品のことを指します。

漢方薬と西洋薬の違い

漢方薬は、植物など自然の素材に由来する『生薬』を合成して作られています。
処方の際には、検査数値ではなく、自覚症状や個人の体質を重視するのが特徴です。
全身のバランスを整え、身体の働きを高めることを目的としています。

一方、西洋薬とは、科学的に合成された薬のことです。
検査数値や他覚症状を参考に処方され、症状に対して主に局所的に効果を表します。

体調不良や病気の時は、どちらかを一方だけを取り入れるのではなく、症状や体質によって漢方薬と西洋薬の両方をうまく併用することが、症状の緩和につながります。

漢方の基本的な考え方

漢方では、「人間の心身は自然とつながっている」という考え方が基本になっています。
局所的な治療は行わず、身体全体の総合的な治療をしており、「病気ではなく、病人をみる」というのが特徴です。

また、東洋医学では、人間の身体は『気』、『血』、『水』の3つで構成されていると考えられています。これらはお互いに影響し合っていますが、バランス良く構成するのが、漢方の役割ともいわれています。

「証(しょう)」とは

漢方を処方する際には、まず、その人の状態を把握しなければなりません。
東洋医学では、この一人ひとりの心身の状態を図ることを『証』といい、これによって漢方の処方が変わってきます。

心身の状態は、身体や病気のタイプを表す『陰陽(いんよう)』や、体力や免疫力を図る『虚実(きょじつ)』、前項でご説明した『気・血・水』といった様々な要素によって判断されます。
よって、一人ひとりにぴったり合った漢方薬を処方できるのです。

代表的な漢方の種類と効果

ここでは、代表的な漢方薬の種類と効果を紹介します。
今まで医療機関や薬局で何気なく買っていた薬が、実は漢方薬だったりすることもあります。

六君子湯(りっくんしとう)

ニンジン、ビャクジュツ、ブクリョウ、ハンゲ、チンピ、タイソウ、カンゾウ、ショウキョウなどから抽出される漢方薬です。
胃腸の働きを調整し、食欲低下、消化不良、胃痛、嘔吐などにも効果が期待できます。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

ケイヒ、ブクリョウ、ボタンピ、トウニン、シャクヤクなどから抽出されます。
月経不順、月経痛、月経や妊娠、更年期障害などに、ホルモン異常による症状などに効果があります。

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)

シャクヤク、カンゾウから抽出される漢方薬です。
疲労や水分不足などによる、筋肉のけいれん、こむらがえり、腰痛に効果があります。

葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)

カッコン、マオウ、タイソウ、センキュウ、シンイ、 ケイヒ 、シャクヤク、カンゾウ、 ショウキョウから抽出されます。
葛根湯は身体を温めて鼻の通りが良くなるので、花粉症による鼻づまり、鼻水などに効果があります。

漢方の取り入れ方

漢方薬は苦くて服用しにくいイメージがあります。
味に抵抗があって顆粒で飲めない場合は、錠剤など、ご自身が飲みやすい形状のものを選んでください。

ここでは、どんな時に漢方を取り入れたら良いかをご説明します。

軽度の体調不良や痛みを解消する

人間の身体には、天候や精神面など、さまざまなことが影響します。
天候や気温の変化による偏頭痛や関節痛、倦怠感など、病院へは行かないようなちょっとした体調不良のときに、漢方薬がおすすめです。

全身の調子を整える

東洋医学では、身体や心はつながっていると考えられています。
一見、関係のないような別の症状でも、ひとつの漢方薬で解消され、全身の調子を整えてくれることがあります。

漢方を取り入れる際の注意点

漢方薬を取り入れる際には、いくつかの注意点を守る必要があります。注意点をしっかりと守り、効果的に漢方を取り入れましょう。

併用時には専門家へ相談する

漢方薬と西洋薬を併用するときには、専門家へ相談してください。
組み合わせが良くない薬を併用すると、効果が現れなかったり、反対に効果が強くなりすぎることがあります。

服用のタイミングを守る

漢方薬をしっかりと吸収するため、パッケージに記載されている服用のタイミングを守りましょう。
また、他の薬と併用する場合は、服用のタイミングも専門家に相談してください。

白湯か水で服用する

牛乳、ジュース、お茶、アルカリイオン水などは、薬効に影響を与えることがあります。漢方薬はコップ1杯の白湯か水で服用しましょう。

妊娠中や授乳中は専門家へ相談する

漢方薬の成分の一部には、赤ちゃんへ悪影響を与えるものがあります。
漢方薬に限らず、妊娠中、授乳中に薬を服用する場合は、専門家へ相談してください。

おわりに

漢方とはどんなものなのか、西洋薬とどう違うのかなど、漢方の基礎知識をご説明しました。
当記事を期に漢方をより身近なものに感じていただければ、嬉しく思います。

正しく取り入れると、身体と心が整い、生活が豊かになります。しっかりと注意点を守り、漢方のメリットを最大限に活かしましょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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