ふくらはぎの構造

ふくらはぎの筋肉は、『下腿三頭筋(かたいさんとうきん)』と呼ばれ、2つの筋肉から構成されています。
一つは『腓腹筋(ひふくきん)』、もう一つは『ヒラメ筋』といいます。

まずは、この2つの筋肉について、解説します。

腓腹筋

腓腹筋は膝の裏側の膨らみを作る筋肉です。太ももにある『大腿骨』の下方から、アキレス腱を介し、かかとの骨に付着しています。大腿骨に付着している部分が二股に分かれているため、ヒラメ筋と合わせて、下腿三頭筋と呼ばれています。

主な働きは、足関節を下に向けたり、内側にひねったりする動きや、膝関節を曲げる動きです。
膝関節と足関節の2つに作用するため、『肉離れ(筋肉が部分的または完全に断裂すること)』などのスポーツ障害が起こりやすい筋肉です。
また、瞬発的な動きを得意とする『速筋』の筋繊維の比率が高いのも特徴で、ジャンプやダッシュの時に活躍します。

ヒラメ筋

ヒラメ筋は『腓骨』という膝下の外側の骨から始まり、アキレス腱を介してかかとの骨に付着しています。
腓腹筋よりも内側の深い位置で走行しており、腓腹筋に覆われている扁平な筋肉です。

足関節を下に向ける動作にのみに作用し、腹筋とは逆に、持続的な運動を得意とする『遅筋』の筋繊維比率が高いのが特徴です。

ふくらはぎを鍛えるメリット

下腿三頭筋は、二足歩行で移動する人間だからこそ発達した特有の筋肉です。
鍛えることにより、多くのメリットがあるので、以下にご説明します。

1. むくみ予防

下腿三頭筋は、『第2の心臓』と呼ばれ、下半身の血流に大きく関わっています。

血流は重力によって下方向へは流れやすいですが、足先から心臓へ戻るときは、重力に逆らわないといけないので、流れが滞りやすいです。
この下から上に血流を流すときに重要な役割を果たすのが、下腿三頭筋です。下腿三頭筋が収縮することにより、ポンプのように働き、下からの血流に勢いをつけて心臓へと血液を流します。

ふくらはぎの筋肉を鍛えることにより、しっかりとポンプの役割を果たすため、血流が良くなってむくみ予防してくれます。

2. 美脚になる

女性の場合、スカートやショートパンツなどを着て脚を出す機会が多くあるので、ふくらはぎの形が目立ちます。
下腿三頭筋を鍛えるすると、むくみのないすっきりとした脚になります。また、ストレッチやマッサージでケアすることで、筋肉がありながらも、すらりとした美脚を目指すことができます。

筋肉質でたくましく見せたい場合は、体表に筋肉の形が出やすい腓腹筋のトレーニングをすると良いです。一方、すっきりと見せたい場合は、ヒラメ筋のトレーニングをメインに行います。

3. 姿勢の改善

下腿三頭筋には、立っているときの姿勢を維持する働きがあります。
下腿三頭筋が衰えていると、身体の重心が前方に傾き、太もも前側が張った前のめりな姿勢になりがちです。
筋トレでしっかりと鍛えることにより、前方に移動した身体を真ん中へ戻し、正しい姿勢に導いてくれます。

ふくらはぎの筋トレ

下腿三頭筋のトレーニングは、腓腹筋とヒラメ筋の2つに分けて行うことができます。

腓腹筋は膝と足首の2つの関節、ヒラメ筋は足首の関節のみに作用するので、膝関節を曲げるか伸ばすかで、鍛えられる筋肉が変わります。

■スタンディングカーフレイズ(腓腹筋)

『スタンディングカーフレイズ』は、その名の通り、立った状態で行う筋トレで、腓腹筋をメインに鍛えることができます。
膨らみのあるたくましいふくらはぎを目指す方におすすめです。

【やり方】
①足を腰幅に広げて立ちます。
②足の親指と人指し指に体重をかけるように意識しながら、ゆっくりとかかとを上げていきます。
③限界まで上げたら、ふくらはぎに力をいれるように意識します。
④しっかりと力を入れたら、ゆっくりとかかとを下ろします。

■ドンキーカーフレイズ(腓腹筋)

『ドンキーカーフレイズ』では椅子を使って前傾姿勢で行うことで、スタンディングカーフレイズよりさらに腓腹筋に負荷をかけることができます。

【やり方】
①椅子の前に立ち、足を腰幅に広げます。
②前傾姿勢になり、椅子の座る部分に手を着きます。このとき、背中が床と平行になるか、やや頭が高くなるくらいまで身体を前に倒します。
③足の親指と人指し指に体重をかけるように意識しながら、ゆっくりとかかとを上げていきます。
④限界まで上げたら、ふくらはぎに力をいれるように意識します。
⑤しっかりと力を入れたら、ゆっくりとかかとを下ろします。

■シーティングカーフレイズ(ヒラメ筋)

『シーティングカーフレイズ』は椅子に座って行います。膝が曲げたまま固定されるので、ヒラメ筋を鍛えることができます。
すっきりとした脚を目指す方におすすめです。

【やり方】
①膝の角度が90度くらいになる椅子に座ります。
②足を腰幅に広げ、背中を伸ばします。
③足の親指と人指し指に体重をかけるように意識しながら、ゆっくりとかかとを上げていきます。
④限界まで上げたら、ふくらはぎに力をいれるように意識します。
⑤しっかりと力を入れたら、ゆっくりとかかとを下ろします。

ふくらはぎのストレッチ

筋トレ後やお風呂あがり、寝る前にふくらはぎストレッチを行い、しっかりと筋肉をほぐしましょう。
ストレッチも、膝関節を曲げているか、伸ばしているかにより、対象の筋肉が異なります。

■立位でのストレッチ(腓腹筋)

学生時代に部活や授業でやったことのある、いわゆる『アキレス腱ストレッチ』です。膝を伸ばして行うので、実際にはアキレス腱ではなく、腓腹筋がストレッチされています。

【やり方】
①立位姿勢で足を腰幅に開き、壁や椅子背もたれ、手すりなどを持ちます。
②片脚を大きく後ろに下げ、両脚のかかとをしっかりと床に着けます。
③前の脚の膝を前に曲げ、後ろ脚のかかとが浮かないように注意しながら、20秒間ほどこの姿勢をキープします。
④前後の脚を入れ替え、反対側も同様に行います。

■座位でのストレッチ(ヒラメ筋)

座位では、膝が曲がっているので、ヒラメ筋をストレッチすることができます。

【やり方】
①マットの上にしゃがみます。
②正座をするように片脚をお尻の下でたたみます。
③背筋を伸ばし、胸を立てた脚の膝に近づけるように少し前に身体を倒します。
④ヒラメ筋がストレッチされているのを感じながら、20~30秒間ほどこの姿勢をキープします。
⑤脚を入れ替えて反対側の脚も同じように伸ばします。

ふくらはぎのマッサージ

ふくらはぎのマッサージを行うと、血流やリンパの流れが促され、むくみ予防や冷え性が対策できます。
強く押しすぎると痛みが出てしまうので、気をつけましょう。

【やり方】
①マットの上に脚を伸ばして座り、片足だけ立てます。
②両手の親指をふくらはぎの真ん中に当て、ふくらはぎを両手で包み込むようにします。
③ふくらはぎの下の方から膝裏に向け、親指で圧をかけながらマッサージします。
④5回繰り返したら、足を変えて反対側の脚も同じように行います。

おわりに

むくみや姿勢の改善、美脚効果など、ふくらはぎを鍛えることによるメリットが、たくさんあることをおわかりいただけたと思います。
第二の心臓と呼ばれるほどの部位ですので、鍛えたり、ケアしたりすることによって下半身だけでなく、全身に効果が広がります。
トレーニングやストレッチ・マッサージなどのケアも方法も簡単にできますので、ぜひ行ってみてください。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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