ダイエットの目標設定の仕方

スポーツや勉強などの目標設定では、「ちょっと頑張れば手が届きそうな目標にする」「不可能な目標をつくらない」などと言われます。
では、これをダイエットで考えてみるとどうでしょうか。ちょっと頑張れば手が届きそうな目標体重にしてダイエットが成功したとしても、自分の理想の体型になるには、残り10kgダイエットしなければならないとします。
この目標で本当にダイエットする意味はあるのでしょうか。

目標に近づくとモチベーションが下がる?

ダイエットは理想の体型になってこそ成功ですが、目標というゴールに近付けば近付くほど、モチベーションは落ちます。
そのため、目標を高く設定する必要があります。事実、短距離の陸上選手は、実際のゴールより何メートルか先にゴールを設定してトレーニングしているほどです。これは、頑張れば手が届きそうな目標ほど早くモチベーションを失い、失敗しやすくなる可能性があるからです。

また、不可能な目標を作らないことも良く言われますが、可能と不可能との境目に線が引ける人がこの世にいるでしょうか。もし手に入れたい体型が不可能な目標であったのなら、そもそもダイエットをする必要性がなくなります。
これらを考えると、ダイエットの目標設定では、以下の点に気を付けることが大切です。

ダイエットの目標設定のルール

●本当に手に入れたい体型を目標にする

人間は本当に欲しいものでしか行動を変えることができません。本当になりたい自分を目標設定しましょう。

●理想の体型を何のために手に入れるかを考える

理想の体型になって「恋人の目を釘付けにしたい」「好きな異性をふりむかせたい」「誰かを見返したい」など、自分が欲しい理想の体型を手に入れたい理由やメリットも認識しておきましょう。目標を実現されるためのモチベーションとなります。

ダイエットの期間の設定の仕方

期間設定をしてはいけない3つの理由

ダイエットの期間設定をする人が多いのですが、基本的には設定しない方が賢明と言えるかもしれません。理由は大きく3つあります。

1つはリバウンドの要因になるからです。
目標設定の方法でも触れましたが、目標を達成後もしくは達成に近づくと、モチベーションは必ず下がります。そうすると、現状の理想の体型を手に入れても、維持しようとするモチベーションは発生しません。こうして、リバウンドをしてしまうのです。

2つ目の理由は、期間を設定する事で「したい、なりたい」が「しなければならない」に代わってしまうからです。
さらに、期間を決めると、その期間内に目標が達成できない場合にモチベーションの低下につながり、ダイエット自体を諦めてしまうことになりかねません。

最後の3つ目は、期間を設定すると、人間はもっと早く達成できるのに、期間を最大限使ってしまう傾向があるからです。
期間を設定しないと先延ばしになってしまうのではないかと疑問に思う人もいますが、モチベーションが高く維持できれば、期間など関係なく行動できますし、成果もだせます。
また、期間がないため、目標を達成しても、少しでも体重が増えると、また痩せた体に戻ろうと努力します。そのため、リバウンドがなくなります。

ダイエットの期間設定のルール

●期間内の行動を設定する

通常は、結果に対して期間を設けがちですが、ダイエットではプロセスに期間を設けましょう。

例えば、結果に対しての期間設定では、「8月までに5㎏体重を落とす」と目標を設定します。
これをプロセスに期間設定すると、「8月まで1日20分間、週2回のウォーキングを習慣化する」となります。
今やるべき行動が明確だと、モチベーションが行動を起こしやすいという人間の特性を使い、ダイエットにプラスになる習慣を定着させやすくしているのです。

このように、結果に対してではなく、プロセスに対して期間を設定することで、モチベーションを保ちながら効果的にダイエットに取り組めます。

食事制限のルール

ダイエットの中でも、特に重要なのが食事制限です。
どんなに運動をしても、食事制限が上手くいかなければ痩せる事は非常に難しいからです。そのため、しっかりと食事制限のポイントをおさえましょう。

●痩せるために摂取するより、摂取しないことから始める

よく痩せるために〇〇を食べると良いという、テレビ番組や雑誌の記事を見ます。しかし、何かを食べることで痩せるとこを考えるより、日々の生活の中で習慣的に摂取している食べ物の中で太る要因となる物を排除することが重要です。

砂糖類全般や血糖値の上がりやすい食べ物は太る要因となります。代表的な物は菓子類やパンなどです。特に、砂糖類には依存性もあるので、砂糖類が入っている食品をやめるのは大変です。
後述する代替食品などを使い、習慣的に食べている砂糖類を控えることを意識しましょう。

●食事制限は朝食から

食事制限で一番大変なのは、会社や友人との付き合いではないでしょうか。誘いを断るのにも勇気がいりますし、かといって目の前で食事を美味しそうに食べられたら、誘惑に負けるのは当たり前です。

ランチやディナーの付き合いは避けづらいですが、朝食は一人で食べることが多いのではないでしょうか。
ですので、糖質制限やプチ断食をするなら、朝食から始めると良いでしょう。朝の時間帯なら、付き合いの必要もなく、しっかりと糖質などの食事制限をすることができます。
慣れてきたら、付き合いがない日の昼食や夕食も食事制限していくと良いと思います。
急激にやるのではなく、調整しながら実施すると良いでしょう。

●代替食品を準備する

食事制限を始めた頃は、お菓子やパンをやめると、口寂しくなるでしょう。糖質制限やプチ断食も、初めのうちは、耐え難い空腹感を感じます。
このような時は、糖質が少ないものを代替食品として食べることで、欲望をかなり抑えることができます。

おすすめなのが、『素焼きアーモンド』と『アタリメ』です。アーモンドはカロリーが高いために太りやすいと言われていますが、良質な脂質とタンパク質は、多少摂取しすぎても、太る要因にはなりにくいです。
また、タンパク質と脂質を身体にしっかりと満たすことで、必要以上の食欲を抑え、身体を健康してくれます。カロリーは気にせずに食べられるため、食事制限が辛い時は、これらの代替食品で欲求を抑えましょう。

運動のルール

張り切ってダイエットを始めると、過剰に運動を頑張ろうと思ってしまう人が多いです。しかし、運動嫌いな人がダイエットで運動をすると、続かずにダイエット自体を諦めてしまうことがあります。
ここでは、挫折せずに上手く運動を取り入れるポイントをご説明します。

●『チョイ足し運動』を生活に取り入れる

ダイエットでは、最初から決まった運動をしようとする方が多いですが、まずは普段の生活を見直してみましょう。例えば、エレベーターの使用をやめて階段にすることから始めます。

この時に重要なのが、「習慣として定着させること」と、「負担にならない程度の運動をすること」です。
無意識のうちに体が勝手に動くようになれば、運動をしなければならないという意識がなくなるため、精神的にも負担は少なくなります。
また、エレベーターを階段にするのがあまりにもつらいなら、エレベーターに乗っている間は、つま先立ちをするなどして強度を落としましょう。
こういった生活の中で取り入れられる『チョイ足し運動』を少しずつ増やし、体重に変化が出て来たら、少しずつ運動を開始すると良いと思います。

●「痩せられる」と思い込む

皆さんは『マインドセット効果』をご存知でしょうか。マインドセット効果とは、考え方そのもの、考え方の癖を変えることで、身体に与える影響を変えることです。
例えば、ストレスは身体に有害だと考える人は、ストレスを受けた際に体調を悪くしてしまうことがあります。逆に、ストレスは成長に必要だと考える人の身体では、ストレスが有用な効果をもたらします。

ダイエットの運動も同じで「これで痩せるのかしら?」と思いながら運動するより、「この運動は痩せるのに効果的だ」と思った方が、痩せる可能性が高くなります。※参考1
これは運動だけでなく、ダイエット中の食事など、生活習慣すべてに言えます。

おわりに

今回は、ダイエットの目標設定の仕方と食事制限、運動習慣のコツをご説明しました。

ダイエット中は食事制限や運動が、できる日とできない日があると思います。その度に一喜一憂するのは、ダイエットの成功につながりません。
運動や食事制限が上手くいかない時は、その事実を認め、悔しい気持ちを受け入れましょう。そうすることで、挫折せずに継続的にダイエットが続けられる精神状態になれると思います。意外にも、これが最も重要なダイエットを失敗しないルールかもしれません。

参考文献

※参考1
スタンフォードのストレスを力に変える教科書
【著者】ケリー・マクゴニガル、神崎朗子 (翻訳)
【出版社】大和書房

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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