はじめに

スクワットは、自宅などで道具がなくてもできるものとして有名なトレーニングの一つです。
下半身や体幹の筋力をつけるために行う方が多く、動作自体はなんとなくイメージできる方も多いかと思います。
しかし、実際には正しいフォームで行えていない方も多く、フォームを間違えると本来の効果をだせなかったり、身体のどこかに過度の負担をかけてケガにつながってしまう場合があります。
そこで、今回はスクワットの正しいやり方やその効果を中心に説明していきます。

スクワットの正しいやり方

まずは、基本的なスクワットの正しいやり方をご説明します。

1. 足を骨盤の幅に広げ、両足を平行にしつま先が進行方向を向くようにします。手は身体の横に自然に置いておくか、頭の後ろに組む、もしくは腰の後ろで組むようにします。(開始肢位)
2. 開始肢位がとれたら、ゆっくりと股関節、膝関節を曲げて重心を落とします。
このとき、股関節と膝関節が同じくらいの角度で曲がるようにし、重心が前後しないようにします。
3. 目的とするところまで重心が下がったら、ゆっくりと開始肢位まで戻ります。

注意点
・つま先と膝は常に進行方向を向くようにし、つま先に対して膝が内側に入ることのないようにしましょう。(内側に入ると膝が捻られる形になり、ケガの原因になります。)
・股関節があまり曲がっていないのに、膝関節ばかりが曲がってしまうと膝がつま先よりも前にですぎて膝への負担が大きくなってしまいますので注意しましょう。
・腰が丸まったり反ったりすると腰に負担がかかってしまうので、背筋はまっすぐに保持しましょう。
・スクワットが深くなっていくことで踵が浮いてしまうようであれば無理をせず、踵が浮かずに行える範囲で重心を落としましょう。

種類別スクワット

スクワットには色々な種類があります。トレーニングを行っていく中では、特に鍛えたい部位や目的に応じてスクワットのフォームを変えることがあります。
そこで、ここでは代表的なスクワットの種類とそれぞれの特徴をご紹介します。

1. フルスクワット

前に述べた基本のスクワット動作でお尻の位置を膝よりも低いところまで下げるものです。
かなり深い位置から立ち上がることになるので、スクワットの中でもより大殿筋(お尻)や腸腰筋(股関節の前側)など股関節の筋力を要します。

2.ハーフスクワット

フルスクワットの半分くらいの高さまで、膝を45度程度まで曲げて行うスクワットです。
トレーニング初心者でも始めやすいスクワットで、下半身の筋力をバランスよく鍛えることができると同時に、膝や腰に優しい効率の良い動作を習得する練習にもなります。

3.ワイドスタンススクワット

腰幅よりも広いスタンスで足の幅をとり、つま先も45度程度外に開いて行います。
相撲の四股に近い形のスクワットで、足首の硬い方でも比較的深いところまで重心を落としやすく、内転筋(内もも)や大殿筋(お尻)に刺激を加えやすいスクワットです。

4. ジャンピングスクワット

フルまたはハーフスクワットの動作にジャンプを加えたスクワットです。
重心を落としたところから勢いよく高くジャンプし、着地したら速やかにスクワットの重心を落とした姿勢まで戻ります。
ジャンプする際には腕の振りはつけないようにし、高くジャンプするためにどのポジションに重心を落とすのがよいかを意識することで跳躍系競技の練習になったり、瞬発力を高めるトレーニングになります。

5. シングルレッグスクワット

名前の通り、片脚でスクワットを行います。
片方の足を後ろに引いて、膝を軽く曲げた状態で椅子の上などにかけておきます。
両手は胸の前に組み、前になった足のみでハーフスクワットを行います。
片脚で受け止める体重が通常のスクワットの倍になるとともに、膝が左右にグラグラしないように止めることでケガの予防トレーニングにもなり、全身のバランスをとるという点で体幹の安定性やバランス感覚のトレーニングにもなります。
筋力やスクワット動作に対する慣れがないとうまくできないトレーニングなので、基本的なスクワットに慣れた方がステップアップする際に行うとよいでしょう。

今回は、自重を負荷としたスクワットのみでご紹介しましたが、他にもバーベルなど重量物を使った様々なスクワットがあります。

スクワットの消費カロリー

スクワットによってどれくらいのカロリーを消費できるのかについてご説明します。

METsでの算出

運動による消費カロリーを簡単に計算する際に、METs(metabolic-equivalents)という単位を使用します。
METsとは運動強度を表すもので、安静時を1METsとしてその何倍のカロリーを消費する運動なのかを示すものです。
例えば遅めのウォーキングは3METs、速めのウォーキングは4METs、ジョギングやサイクリングは8METs、水泳は11METsといった具合です。
自重でのスクワットの場合、ハーフスクワットのような軽いスクワットは3.5METs、フルスクワットなどをゆっくり行うと5METsとされています。

消費カロリーは
消費カロリー(kcal)=1.05×METs×時間×体重(kg)
で算出されます。

ですから、50㎏の方がフルスクワットを一時間やり続けたとして
1.05×5METs×1時間×50㎏=262.5kcal
となります。

ただし、実際にはスクワットなどのトレーニングを一時間やり続けることはあまりなく、ほとんどの方の場合が回数などで区切って行い、長くても10~20分程度かと思われるので、運動による消費カロリーとしてはあまり期待できません。
ダイエットなどカロリー消費を目的としている場合であれば、ウォーキングやジョギング、水泳が効率的かと思います。

筋肉量を増やすことによるメリット

スクワットを行うことによる消費カロリーはあまり多くありません。
しかし、スクワットを継続して行うことで人間の筋肉の大部分が集まっている下半身の筋肉量が増えます。
そうすると、トレーニングなどを行っていない安静時の消費カロリーが増え、結果としてダイエット効果、太りにくい体質を身に着けることができるのです。

スクワットの効果

筋力トレーニングとして行われるスクワットですが、色々な効果がありますのでご紹介します。

1.下半身の筋力強化

スクワットを行う最大の効果は下半身の筋力強化です。
大腿四頭筋、ハムストリングス、大臀筋、中臀筋を中心に下半身を支える筋肉を鍛えることができます。
また、上に述べたようなそれぞれの筋肉を個別に鍛えるトレーニングに比べ、スクワットという運動学的に理にかなった動作を行いながら全ての筋肉を同時に鍛えるので、バランスよく筋力をつけることができます。

2. ダイエット効果

消費カロリーの部分で説明しましたが、スクワットを行うこと自体での消費カロリーはあまり多くありませんが、下半身の筋肉量を増やすことで安静時の消費カロリーを増やすことができます。結果としてダイエット効果につながります。

3.体幹の安定化

スクワットは自分の体重(自重)を負荷として重心を上下する運動です。
正しいスクワットを行うためには、自分の重心を常に身体の中心においた状態で上下する必要がありますので、重心位置が安定し、日常生活内の動作やスポーツ動作においても体幹を安定させることにつながります。

4.腰痛の改善、予防

スクワットは、背骨を曲げ伸ばしすることなくまっすぐにした状態で、股関節や膝関節、足首を曲げ伸ばしすることで重心を上下します。
この動作は日常生活にある何気ない動作をするときにも応用することができます。
重い荷物を抱える際や、前かがみになって床のものを拾うときなど、股関節や膝関節をあまり使わずに腰ばかりを曲げると腰への負担が大きくなってしまいますが、スクワットに近い動作に変えることで腰への負担を減らすことができます。
スクワットを行いこの動作を身に着けることで、自然に日常生活でもスクワット動作ができるようになり、腰痛の改善や予防につながります。

5.スポーツパフォーマンスの向上

スクワットは常に身体の中心に重心を置き、運動効率のよいジャンプや瞬発的な動きをするために必要な動作の練習が自然に含まれています。
また、その動作は下半身や体幹の筋力をバランスよく使い、膝や腰に負担が集中しないような動作になっています。
そういった点において、スクワットは筋力トレーニングとしての効果以上にスポーツパフォーマンスを高めるトレーニングになります。

おわりに

今回はスクワットについて正しいやり方や種類、効果についてご説明しました。
単純なトレーニングと思われがちなスクワットですが、とても重要な要素が含まれていることをご理解いただけたでしょうか。
スポーツ競技のためのトレーニングとしてだけでなく、健康のためケガの予防のためにもとても効果的なトレーニングですので是非習得していただきたいと思います。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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