筋トレの目的

筋トレをする目的は、人によってさまざまです。
目的が違えば、筋トレの回数や負荷が異なることが多いですが、目的が違っていても同じメニューを選択するべき場合もあります。
ここでは、それぞれ目的と推奨メニューをご紹介します。

■ダイエット

筋トレの目的で最も多いのがダイエットではないでしょうか。
ダイエットで重要な要素はメリハリです。体重が落ちて痩せても、見た目に細くなりすぎて不健康に見えてしまうこともあります。身体を引き締め、ハリが必要な所にはしっかりと筋肉をつけるというのが、理想のダイエットといえると思います。

これには、2つの種類の筋トレメニューが必要となります。
1つは、筋肉を大きくして見た目を良くしつつ、基礎代謝を上げるメニューです。これは下記の「筋肉を大きくしたい人のメニュー」を参照してください。
もう1つは、脂肪を撃退して身体を引き締めるメニューです。こちらは「脂肪を燃焼させ持久力をつけたい人のメニュー」をご覧ください。
どちらか一方のメニューでもダイエット効果はありますが、両方を行うとより効果的です。

■筋肥大

『筋肥大』とは読んで字のごとく、筋肉を太くすることです。
筋肥大を目的とする方は、スポーツのパフォーマンス向上や、ボディビルダーのような腹筋の割れた逆三角形の身体を目指す方が多いと思います。
それに加え、脂肪を撃退したい方にも、筋肉を肥大させることがとても重要となります。運動で消費するカロリー量は意外に少なく、普段から運動をしない方は実感する運動のキツさよりもカロリー消費が少ないことにがっかりすると思います。
そのため、ダイエットで重要なことは、『基礎代謝』を上げることです。基礎代謝とは、何もせずじっとしていても、生命活動を維持するために生体で自動的に行われているエネルギー消費量をいいます。これを向上するのには、筋肉を肥大させることが効果的です。

スポーツパフォーマンスの向上、ボディビルダーのような身体作り、そして、基礎代謝の向上を目指す方は、「筋肉を大きくしたい人のメニュー(負荷と回数)」を参考にトレーニングを行うと良いでしょう。

■筋持久力の向上

『筋持久力』とは、筋肉そのものの持久力のことです。筋肉がある一定の負荷に耐え続けることができる時間の長さを指します。
これはマラソンなど全身の持久力とは異なり、一か所の関節に対して負荷がかかった状態で、運動を繰り返し行った際の力です。
もちろん、筋持久力が向上すれば、全身の持久力も向上につながりますが、今回は筋トレをした際の一定の負荷に耐える時間の向上と考えてください。

筋持久力が上がると、

「スポーツの最大パフォーマンスの持続時間の向上」
「脂肪の燃焼」
「健康効果」

が期待できます。

この3つを得たい方は、「脂肪を燃焼させ持久力をつけたい人のメニュー(負荷と回数)」を参考にトレーニングを行いましょう。

筋肉を大きくしたい人のメニュー(負荷と回数)

メニューは『最大筋力』をもとに作ります。最大筋力は『RM』という単位で表記され、「1 RM=1回しか持ち上げられない重量」となります。
2009年、アメリカスポーツ医学会で、筋肥大を目的とするトレーニングの場合は、最大筋力の70%以上の強度で、初心者は8~12回、経験者は1~12回の回数を行うことを推奨する公式声明を発表したようです。
これが根拠となり、筋肥大を目的とするメニューでは「最大筋力の70~80%の負荷(重さ)で、8~12回を3セット以上行う」というのが主流となっています。

 しかし、現在は筋肥大の効果は、トレーニングの強度(重量)、回数、だけでなくセット数を合わせた『総負荷量』によって決まることが示唆されています。分かりやすくすると下記の通りになります。

総負荷量(筋肥大の効果)= 回数×強度×セット数

そのため、上記のような「高強度×低回数」の筋トレだけでなく、「低強度×高回数」の筋トレでも、総負荷量が一定量を超えれば、筋肥大が期待できるといわれています。

ただし、「低強度×高回数」の場合、高回数になり過ぎると、トレーニング時間が長くなってしまいます。トレーニング時間が長くなると、『コルチゾール』というストレスホルモンが出てしまい、筋肥大にはマイナスな点もあるため、注意が必要です。
さらに、「高強度×低回数」の場合も、回数が1〜5回よりも6回以上の場合に、より高い筋肥大の効果を期待できるという研究もあります。回数が少なすぎるのも効率的でないのかもしれません。

筋肥大のための理想的なメニュー

回数、強度、セット数の総負荷量と、長時間のトレーニングに伴うストレスホルモンも増加を考えると、以下の負荷と回数で行うことが理想的ではないかと思われます。
ここで重要なのは、これ以上できない状態、つまり限界になることです。

筋肥大の効果=
6~20回(回数)× 6~20回で限界になる重量 / 最大筋力の約65%~80%(負荷)× 3セット(インターバル3~5分間)

脂肪を燃焼させ持久力をつけたい人のメニュー(負荷と回数)

筋持久力とは、特定の運動に対し、複数の筋肉が繰り返し出せる力のことをいいます。

脂肪燃焼のための理想的なメニュー

筋持久力の向上には、運動によって生じた『乳酸』などの運動を妨げる物質の処理能力や、筋肉を収縮するのに必要なエネルギーを作り出す力を向上させることが必要です。
そのため、下記のように負荷を減らし、回数とセット数を多くします。

筋持久力の向上=
20回以上(回数)× 最大筋力の約30%~60%(負荷)× 7セット(インターバル1分間)

最大筋力を高めたい人のメニュー(負荷と回数)

最大筋力(RM)とは、一つの動作で一度しかできない重量のことです。
これは筋肉の断面積に比例しているため、筋肉が大きいほど最大筋力も大きくなります。

また、最大筋力は筋肉繊維の密度や『動員率』にも大きく影響されます。
動員率とは、1つの運動神経が命令して収縮する筋線維の量をいいます。これが多ければ動員率は高いとされ、動員率が高ければ、より大きな力を発揮できます。

最大筋力向上のための理想的なメニュー

筋肉繊維の動員率は、筋肉の種類などにもよりますが、トレーニングによって向上させることができます。運動神経の発火頻度を増加させたり、運動神経が命令した時に同じタイミングで筋肉が収縮するようにさせたりすることで、動員率が上がります。
具体的な最大筋力を向上させるための筋トレは下記の通りです。

最大筋力の向上=
1~4回(回数)× 1~4回で限界になる重量 / 最大筋力の約85%~100%(負荷)× 1~3セット(インターバル3~5分間)

おわりに

近年では、筋トレの効果に対する研究も盛んに行われてきているため、負荷、回数、セット数、インターバルの違いによる、筋トレの効果の違いも分かるようになってきました。
だからといって、筋トレの方法で、筋肥大と最大筋力と筋持久力の向上効果のはっきりとした線で区分けできるわけではありません。

色々な情報を集めながら実践してみて身体の変化をフィードバックしながら負荷、回数、セット数などを決めていくことが重要だと思います。
今回ご紹介したものを参考に、自分の目的と身体に合ったトレーニングを見つけていただければと思います。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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