筋トレ中の食事が大切な3つの理由

●炭水化物不足だと筋肉が分解されてしまう?

筋トレを行うにはエネルギーが必要で、主に、炭水化物を分解して作られる『グリコーゲン』という物質が、エネルギーとして使用されます。
食事を抜いたり、栄養の偏りがあったりすると、グリコーゲンが不足します。その状態で筋トレをすると、筋肉中のたんぱく質が分解されてしまいます。分解されたたんぱく質は、アミノ酸となってグリコーゲンの代わりにエネルギーとして使われます。

つまり、エネルギー不足の状態で筋トレをして筋肉を大きくしようとしても、筋肉中のたんぱく質が分解されていくため、筋肉はどんどん細くなってしまいます。
炭水化物(糖質)からグリコーゲンは作られるため、食事前には炭水化物の補給をしてたんぱく質の分解を防ぐことが大切です。

●筋肉の修復にはたんぱく質が必要

筋トレをすると筋組織が傷つけられます。傷ついた筋組織は、時間をかけて修復しながら、より頑丈になろうとします。
この修復に必要な材料がたんぱく質です。たんぱく質不足だと、せっかくハードな筋トレをしても、筋肉が太くなりにくくなってしまいます。

●バランスの良い食事が体調を整える

食事はバランスが大切です。
体脂肪を落とすために食事を抜いたり、肉ばかり食べたり、厳しい糖質制限をしたりしていると、栄養の偏りが出て体調不良を起こしたり、筋トレの効果がうまく現れないことがあります。
色々な食材をまんべんなく食べるように心掛けましょう。そうすることで、身体の調子も良くなり、爽快に筋トレを行えるはずです。

バランスの良い食事については、次項で詳しくご説明します。

バランスの良い食事とは?

バランスの良い食事には、以下の4つの栄養素が含まれています。

●糖質(ごはん、パン、麺、イモ類など)

筋肉を動かすためのエネルギー源となります。摂りすぎると脂肪に変わってしまうので、適度に摂取することが大切です。
厳しい糖質制限をすると、グリコーゲンが不足して筋肉を分解したり、肝臓に負担が掛かったりする可能性があります。

●たんぱく質(肉、魚、卵、乳製品、大豆製品)

筋肉の元となります。
『動物性たんぱく質』である肉類ばかり食べていると、脂質を摂りすぎて血液がどろどろになってしまいます。大豆製品も意識して食べるようにしましょう。

●脂質(油類)

長時間の運動では、脂質がエネルギー源になります。油に溶けやすい脂溶性ビタミンの吸収を助けます。摂りすぎると、脂肪に変わってしまうので注意が必要です。

●ビタミン・ミネラル

ビタミン・ミネラルの種類は非常に多く、その働きも様々です。生きていくうえで必要な栄養素ばかりですが、体内で作ることができないので、食事から摂るようにしましょう。

筋トレ中に取りたいビタミン・ミネラルには以下があげられます。

・ビタミンB₁(玄米、大豆製品、豚肉、ニンニクなど):糖質を分解してエネルギーにする
・ビタミンB₂(牛乳、チーズ、卵、納豆など):脂質を分解してエネルギーにする
・ビタミンB₆(大豆、まぐろ、鶏肉、米など):たんぱく質を分解して筋肉の修復を助ける
・亜鉛(牡蠣、赤身の肉、しじみ、大豆製品など):傷ついた筋肉の修復を助ける

筋トレ前の食事メニュー

摂取したい栄養素 と 摂取のタイミング

筋トレ前は炭水化物とたんぱく質を含む食事を選びましょう。
炭水化物は筋トレ中のエネルギー源となるグリコーゲンの材料となります。
また、たんぱく質を摂ることで、グリコーゲンが不足してしまった時に、筋肉中のたんぱく質が分解されるのを防ぎます。

食事のタイミングは、筋トレの30分~2時間前が理想的です。
主に、エネルギー補給のための食事なので、筋トレ前に消化が終わっているようにします。消化の良い食べ物なら、30分前に摂取しても良いでしょう。
ただし、消化にはその日の体調や個人差があるので、量や食材を調整しながら食べてください。

食事メニューの例

【2時間前に食べる場合のメニュー】
・おにぎり
・全粒粉のパン(白くないパン)
・鶏むね肉
・さつまいも
・卵など

【30分前に食べる場合のメニュー】
・バナナ
・ホエイプロテイン
・はちみつ
・ギリシャヨーグルト
・リンゴなど

筋トレ後の食事メニュー

摂取したい栄養素 と 摂取のタイミング

筋トレ後にも、たんぱく質と炭水化物を摂りましょう。

筋トレ後30~45分間は、筋肉を修復するために栄養素が吸収されやすい時間帯です。この時に吸収の良いたんぱく質を摂ると、筋肉の修復を助けてくれます。
ヨーグルトとバナナを食べたり、市販のプロテインを飲むのも良いでしょう。

また、筋トレでエネルギーを消費しているので、筋トレ後は、身体に貯えられていたグリコーゲンがなくなっている可能性があります。グリコーゲン不足は筋肉分解に繋がりますので、炭水化物も摂るようにしましょう。
果物に含まれる『果糖』は、糖質の中でも脂肪になりにくく、グリコーゲンを回復させます。柑橘類には乳酸を分解する『クエン酸』も含まれているため、特におすすめです。

食事メニューの例

・発芽玄米のじゃこ梅干しおにぎり
・野菜などの具がたっぷりの味噌汁
・豚のしょうが焼き
・千切りキャベツ
・ブロッコリーとチーズと卵のサラダ
・果汁100%オレンジジュース

このような食事を摂ることが理想ですが、難しい場合はたんぱく質と炭水化物が含まれる他の食材で代用しても構いません。

筋トレ中の食事の注意点

満腹状態で筋トレをしない

満腹状態のまま筋トレをすると、消化不良を起こす可能性があります。
また、本来吸収できていたはずの、筋肉を作るための栄養素が吸収できないため、筋トレの効果を十分に発揮することができません。
少なくとも食事から30分は経ってから筋トレを行いましょう。

プロテインに頼りすぎない

市販のプロテインは手軽で高たんぱく質なのでとても魅力的です。
しかし、食事の代わりにはなりませんので、食事で足りない栄養素を摂りながら上手に付き合っていきましょう。

おわりに

筋トレ前・筋トレ後の食事メニュー、そして筋トレ中の食事の注意点をご説明しました。

現在の食事と比べてみて改善点等は見つかったでしょうか?炭水化物・脂質・たんぱく質・ビタミン・ミネラルなど、聞きなれていない方には難しく感じるかもしれませんが、食事メニュー例も一緒に書いていますので、参考にしていただければと思います。
すでにご説明したような食事を取り入れているという方は、ぜひそのまま継続しましょう。
食事を楽しみながら、身体を鍛えていただければと思います。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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