はじめに

妊娠中はホルモンのバランスの変化や体型の変化等によって様々な変調を感じやすいのですが、妊娠後期に出現しやすい症状の1つが頭痛です。

頭痛がしているのに無理に動くと却って悪化してしまったり、日常生活がままらなくなってしまいます。妊娠中はむやみに薬も飲めないので本当に辛いですし、どうにかしたいと思っている方も多いのではないでしょうか?

今回は妊娠中に起こりやすい頭痛の原因やその対処法をお伝えしていきます。

妊娠後期の頭痛の種類と特徴

妊娠後期に起こりやすい頭痛は主に3つあります。

1.緊張性頭痛

頭痛持ちの約半数を占めている位、メジャーなのが緊張性頭痛です。

この頭痛は同じ姿勢を持続させる事で首や肩、肩甲骨等の筋肉が凝り固まってしまい、血流が悪くなって起こる頭痛です。
頭が締め付けられるように痛くなるのが特徴として挙げられます。

筋肉の緊張・ハリが原因ですので、身体を温め、リラックスや軽いストレッチをして筋肉をほぐしてあげるのが効果的です。

2.偏頭痛

緊張性頭痛と同様にこれもメジャーな頭痛で、妊娠後期に一番起こりやすいのが偏頭痛です。

その原因はホルモンの乱れや過労、睡眠足、鉄分の不足等によって起こり、偏頭痛の場合、寝過ぎた後やストレスを解消した後にも起こりやすいのが厄介な所だと思います。
痛みの特徴としてはこめかみの辺りからズキズキと痛みだし、全体に広がっていく事です。

偏頭痛は動脈の伸び縮みの異常が原因で出現するので入浴等で温めるのは逆効果です。そのため、冷たいタオルなどで痛みが出た部分を冷やしたりすると痛みがやわらぎやすいです。偏頭痛は一度出現するとなかなか治まってくれず、人によっては何日も続いてしまう場合があります。

3.群発頭痛

偏頭痛に非常によく似た症状が起こるのが群発頭痛です。

偏頭痛との大きな違いとして、痛みが長時間続く事はなく、1時間位で治まりますが、1日に数回繰り返されるのが特徴といえます。この頭痛はかなりの痛みを伴うことが多いので、一旦始まってしまうと他の事をできなくなることも多いです。

妊娠後期の頭痛の原因

頭痛の原因を知っておく事で頭痛を防げる事もあります。
では、妊娠後期の主な頭痛の原因をみていきましょう。

1.筋肉の凝り

妊娠後期に入ると胎児の体重が増え、段々とお腹が重くなってきます。
正期産位になると胎児と胎盤、羊水等だけで6㎏もの重さになります。

つまり、妊娠後期に入ると少なくとも5~6㎏位の重りを抱えて生活してるようなものなんです。

そうすると普段より全身の筋肉に負荷がかかってしまって首や肩、肩甲骨等が緊張し、筋肉が硬くなってしまいます。その結果、血流が悪くなって頭痛を引き起こしてしまいます。

2.ホルモンバランスの乱れ

ホルモンのバランスは疲れやストレスの影響を受けやすいという特徴があります。

ホルモンには血管を拡張させる働きがあり、血管が拡張するとその周りにある神経を圧迫してしまう事で頭痛が起こります。

3.鉄分の不足

胎児には胎盤から臍帯を通し、血液で栄養や酸素が供給されています。
妊娠中期から後期にかけて胎児が育つ為に、沢山の栄養素が必要なので血液も多く必要になります。

その中で鉄分は赤血球に酸素を含む働きをするため、多く必要とされ、妊娠中は胎児への栄養が最優先に行われるので、母体は不足しがちになります。鉄分が不足すると脳に十分な酸素が送られずに頭痛が起こります。

4.寝不足

お腹が大きくなってくると、寝返りを打つのがままならなくなります。
また、胎動も活発になるので、夜中に起こされてしまう事も増えてきます。

そうすると身体がしっかり休む事ができないので、筋肉が硬直しやすくなり、頭痛が起こりやすくなってしまいます。

妊娠後期の危険な頭痛

緊張性頭痛や偏頭痛の他に、危険な頭痛があります。

1.脳出血

今までに感じた事がない位の激痛を感じ、手に力が入らなくなる等の症状が出現するものです。
若いから大丈夫と思われがちですが、20代、30代でも脳出血が起こる事例も多く、妊娠中も例外ではありません。

脳出血は発見が遅れると最悪の場合、命を落とす怖い病気です。
脳出血は出血部位によっては手足の麻痺、呂律が回らないといった症状が現れます。

2.妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群の場合、我慢できない位の頭痛の他に吐き気が出現します。

急激に悪化する事もあり、この場合、胎児も危険になるので緊急の帝王切開で出産になる事や母子ともに危険な状態になる事が考えられます。

脳出血や妊娠高血圧症候群による頭痛の場合、すぐに医療機関を受診しなければなりません。
こんな症状が出現したら必ず病院を受診して下さい。

・頭が割れるような酷い頭痛
・視界がぼんやりしたり、物がくっきり見えなくなる
・吐き気
・浮腫
・めまい

妊娠後期の頭痛の対処法と予防

頭痛の種類によって対処法は異なりますので、自分に起こっている頭痛がどんな症状なのかを見極めた上で対処する事が大事になります。

1.身体を温める

緊張性頭痛の場合、筋肉が凝り固まって起こっているので身体を温めて筋肉の緊張をほぐしてあげましょう。

効果的な対処法は入浴して身体を温め、ストレッチやマッサージをしてリラックスする事です。
ただ、妊娠中は逆上せやすいので、長風呂は危険です。

温めのお湯でゆったりと浸かり、身体が温まったら早めに出ましょう。

2.血管を引き締める

これは偏頭痛の場合に有効です。
ホルモンの乱れによって血管が拡張してしまって頭痛が起こっている場合、血管を冷やして引き締めましょう。

血管を引き締める方法として、頭痛が起こっている所に保冷剤等を使って冷やすと良いです。
しかし、急激に冷やすと急激に血管が収縮してしまってダメージを与えてしまう事がありますし、保冷剤をお直接当てると凍傷等の危険もあるので、保冷剤はタオル等に包み、保冷剤が直接肌に当たらないようにしましょう。

冷やし方の注意点として少し冷やしたら、保冷剤を離し、ちょっと間隔を置いてまた冷やすを繰り返して下さい。時間をかけてゆっくり冷やしましょう。

また、カフェインも血管を収縮させる作用があります。
妊娠中はカフェインを避けている方も多いとは思いますが、1日1杯程度なら問題ないので、頭痛がするなと思ったらコーヒーや紅茶を少量飲むのもお勧めです。

3.鉄分を積極的に摂取

鉄分が不足している頭痛の場合は鉄分を意識して摂取する事が大事になります。

100g中の鉄分の含有量が最も多いのは豚のレバー、続いて鶏肉のレバーです。
しかし、レバーは取り過ぎても身体に良くありません。

妊娠後期はつわりが起こる人が多く、レバーを沢山摂取すると胸やけや吐き気の原因になることもあります。また、レバーにはプリン体が多く含まれていて、普段は全く異常がない人でも妊娠中に痛風になる可能性もあるため取りすぎないように注意が必要です。

含有量はレバーには劣りますが、パセリやほうれん草、黄卵、あゆ、シジミ、イワシの丸干し、米味噌、油揚げ等も鉄分が多い食品になりますので普段の食事に上手く取り入れましょう。

4.水分をしっかりとろう

身体の水分が少なくなると血液が濃縮されてしまい、脱水症状に陥り、頭痛が起こります。

日頃からしっかりと水分をとるのが一番の予防法です。

また、足等の浮腫みが気になって水分を控えるという話も聞くかもしれませんが、浮腫は脱水症状でも起こります。水分をとらないという選択は大変危険なので絶対にやめましょう。

浮腫が気になる場合は冷たい飲み物を控えて、リンパを流すようにマッサージすると効果があります。

5.お昼寝をしよう

妊娠後期は身体が疲れを感じやすくなります。
寝不足や疲れを感じた時は日中にちょっと横になる時間を作りましょう。

眠れなくても横になって目を瞑るだけでも随分違うはずです。
妊娠後期は自分の体調に合わせて休む時間を作る事も非常に大事になります。
30分位の短い時間でもかなり楽になると思います。

まとめ

妊娠後期の頭痛は主に3つ、緊張性頭痛、偏頭痛、群発頭痛です。

緊張性頭痛は筋肉の硬直によるものが原因で、対処法は筋肉の緊張を緩める為に身体を温め、ストレッチやマッサージをしてリラックスする事です。

逆に偏頭痛の場合、血管の拡張によって神経を圧迫する事で起こるので、患部を冷やし、安静に過ごす事が大事になります。

群発頭痛は偏頭痛に準ずると思って下さい。

そしてかなり危険なのが脳出血と妊娠高血圧症候群の悪化による頭痛です。

激しい痛み、吐き気、手足の痺れ等を感じたらすぐに医療機関を受診しましょう。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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