内臓脂肪とは

私たちの身体についている脂肪は、『皮下脂肪』と『内臓脂肪』に分けられます。
皮下脂肪は皮膚の上からつまむことのできる場所にある脂肪のことで、皮膚とその深層にある筋肉や骨の間にあります。
一方、内臓脂肪は内臓の周りについている脂肪のことをいいます。周りに腹筋や背筋といった筋肉や肋骨などの骨格があるため、体表から触れることはできません。

内臓脂肪の特徴

女性は皮下脂肪、男性は内臓脂肪

内臓脂肪は女性よりも男性に多くつきやすく、中年以降に増える傾向にあります。
これは、年齢とともに基礎代謝が低下しているにもかかわらず、若いときと同じ食事を続けることが原因として考えられます。消費されずに余ったエネルギーが、内臓脂肪として蓄えられているのです。

つきやすく、落ちやすい

皮下脂肪に比べ、内臓脂肪は見た目にわかりにくいため、あまり重要視されていないことがあります。しかし、内臓脂肪の増加は、糖尿病や高血圧、高脂血症といった生活習慣病につながりやすいため、注意しておく必要があります。
ただし、内臓脂肪は皮下脂肪に比べるとつきやすく落ちやすいという特徴があり、一度蓄えた内臓脂肪も、運動や食事改善によって減らすことができます。そのため、万が一、現時点で内臓脂肪型肥満であるとしてもあきらめずに生活習慣を改めましょう。

内臓脂肪(レベル)の測り方

内臓脂肪の測り方をいくつかご紹介します。

■腹囲の測定

周囲の測定は、メジャー一つあればどこでもできる最も簡単な方法です。
脱力した状態で、へその高さの腹囲を測定します。
男性:85㎝以上、女性:90㎝以上で『内臓脂肪型肥満』と診断されます。

さらに、上記の腹囲に加えて高血圧、高脂血症、糖尿病のうち、2つ以上該当する場合は『メタボリックシンドローム』と認定されます。

■体組成計での測定

タニタやオムロンといった会社から内蔵脂肪が測定できる体重計が発売されています。
足の裏にセンサーがついており、通常の体重計のように両足で乗るだけで内臓脂肪レベルが数字で表示されるようになっています。

レベル1~9:健康
レベル10~14:やや過剰
レベル15~:過剰
と判断されます。

通常、内臓脂肪面積が100平方センチメートルを超えると過剰とされるため、レベル10が100平方センチメートルに相当するレベルだと考えられます。

■CTスキャンでの計測

最も正確な方法は、病院などにある『CTスキャン』で内臓部分を撮影し、内臓脂肪の量を算出することです。
メタボリックシンドロームが疑われる方は、一度測定してもらう価値があるでしょう。
ただし、自宅で行うことができないので、自分で経過を追うことができず、費用も手間もかかる方法で、日常的な健康管理には適していません。

内臓脂肪レベルが高いとどうなる?

身体に余分についた脂肪は、老若男女問わず、外見や健康を損ねるという点で排除される傾向にあります。
その中でも、皮下脂肪にはなく内臓脂肪のみにある以下の特徴は、私たちの健康の害に直結するため、特に注意しなければなりません。

内臓脂肪の特徴として、脂肪が血液内に代謝されることがあげられます。内臓脂肪レベルが上がると、血中の脂肪濃度が高まり、『高脂血症』になりやすい傾向があります。
また、内臓脂肪は膵臓から分泌される『インスリン』というホルモンの効きを悪くする働きがあります。インスリンには血糖値を下げる役割があるため、これが働かなくなると、『糖尿病』につながります。
さらに、内臓脂肪は血圧を高める物質を分泌させるため、『高血圧』にもなりやすくなってしまいます。
このように、過剰な内臓脂肪は、様々な生活習慣病を引き起こす原因となるのです。

内臓脂肪の落とし方【食事編】

内臓脂肪を積極的に落とすには、食事の量や内容を改善することが大切です。
ここでは、内臓脂肪を落とすために食事面で気を付けるべきことをご紹介します。

■食べ過ぎない

内臓脂肪は食事から摂りすぎた余剰エネルギーの結果です。そのことを考えると、消費カロリー以上のカロリー摂取が厳禁であることは、一目瞭然です。
成人以降は徐々に代謝が下がり、必要なエネルギー量は減少しますので、自身の年齢や運動量を考慮し、必要なエネルギーを摂取するようにしましょう。

■夕食を控えめにする

朝食や昼食後は、活動することが多いため、摂取した分のエネルギーを消費することができます。しかし、夕食後は活動量が少ないので、エネルギーを消費しきれない可能性が高まります。
一日の食事の中でも、夕食、特に食事時間が遅くなるときは、量やカロリーを控えめにするようにしましょう。

■脂肪の摂取を控える

身体に内臓脂肪が蓄えられないようにするためには、脂肪分の多い食品の摂取を控えることが大切です。

唐揚げや天ぷらといった脂ものを控えて、焼き物や煮物に変えるようにしたり、肉を選ぶときには脂肪分の多い牛肉よりも鶏肉を優先するようにしたりしてみましょう。
また、脂肪分は甘味がありおいしく感じますが、調理で使用するバターやマーガリン、オイルなども控えた方が良いでしょう。
間食では、生クリームやバターが多量に使用される洋菓子よりも、あんこや砂糖の使用が多い和菓子に変えると良いでしょう。

■食物繊維を積極的に摂る

水溶性の食物繊維には、脂肪分や塩分、糖分などの吸収を抑える働きがあります。
食物繊維はごぼうや山芋などの野菜、海藻、きのこ、豆類に豊富に含まれています。これらの食品を積極的に摂るようにしてみましょう。

■アルコールを控えめにする

アルコールの過剰摂取は肝臓の脂肪を増やします。
肝臓の脂肪が増えた状態を『脂肪肝』といい、脂肪肝の方は『肝硬変』→『肝臓がん』へと移行しやすくなります。こうなると、命にも関わる事態になりかねませんので、注意が必要です。

1日あたりビール中瓶1本、または日本酒1合、またはワイン1/4本程度の適量のアルコール摂取は問題ありませんが、飲みすぎには十分注意しましょう。

内臓脂肪の落とし方【運動編】

内臓脂肪を落とすためには、食事の改善とともに。適度な運動習慣も大切です。
ここでは、内臓脂肪を落とすために有効な運動の方法をご紹介します。

■有酸素運動を行う

内臓脂肪を落とすためには、ウォーキングやジョギング、水泳、エアロビクスといった有酸素運動が適しています。
短距離走や筋力トレーニングなどの瞬発的な運動では、体内の糖がエネルギー源の中心となるため、脂肪はあまり燃焼されません。

一方、有酸素運動を20分間以上継続して行うと、エネルギー源が脂肪中心に変化していき、内臓脂肪が燃焼されます。
1日30分間、1週間に180分間の有酸素運動を行うことを目標に運動を習慣づけてみましょう。

■筋力トレーニングを行う

内臓脂肪を落とすために有酸素運動とともに行うと有効なのが、筋力トレーニングです。
前に述べたように筋力トレーニング中は、エネルギー源として体内の脂肪が使用されることはあまりありません。しかし、筋力トレーニングによって体内の筋肉量が増えると、基礎代謝(安静にしていても消費されるエネルギー)が上がります。
基礎代謝が上がることで、同じ生活をしていても必要なエネルギー量が増えるため、食べたものが脂肪として蓄えられにくくなります。

筋トレの習慣がない方は、まずは自分の体重を負荷とするようなスクワットや腕立て伏せに挑戦してみてください。

おわりに

今回は、内臓脂肪の特徴や測り方、そして落とし方についてご紹介しました。

内臓脂肪は皮下脂肪に比べてつきやすく、落ちやすい脂肪ではありますが、毎日の食生活や運動習慣などの積み重ねにより、落とすことが可能です。
今回の内容を参考に、事態が深刻化しないうちに、ぜひ予防として食生活や運動習慣を見直してみていただければと思います。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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