はじめに

風邪だと感じた瞬間から、適当な風邪薬を、適当な薬の飲み方で飲んでいる人が多いのではないでしょうか。
適当が大きな危険につながることもあります。
風邪という病気から、薬の飲み方までを知っておきましょう。

風邪薬は、風邪を治す薬じゃない?

ほとんどの人が使う風邪というのは、実は病名ではありません。
風邪は菌やウイルスが身体の中入り込み、感染した状態のことを総合的に見た名称です。
薬局で簡単に買える風邪薬も、病院で処方される薬も、風邪を治すための薬ではないのです。

では、いったい何の薬で、どういう薬の飲み方が良いのでしょうか。
風邪の症状として、せき、鼻水、咽頭痛、発熱など様々な苦痛が現れます。この諸症状に対して治癒、または緩和させるために対処療法として用いられるものが風邪薬です。

風邪は、体力が低下した時にかかるものです。風邪の菌やウイルスなどが体内に入ると、人間本来の防御機能が働きます。私たちの意思とは関係なく身体が身体を守ろうとします。
こうして免疫力があったうえで、他の器官への悪影響を及ぼさなければ、菌やウイルスと闘いが終わり、自然に回復へ向かいます。諸症状が無くなり完治するというメカニズムです。

風邪という文字が書かれている薬をむやみに飲むのではなく、正しい風邪薬の飲み方としては、風邪を治すのではなく、今の辛い症状をおさえる薬を選択して飲むことが大切です。

解熱剤の使用にはタイミングが肝心

風邪をひくとしばしば熱が上がることがあります。発熱とは、臨床的には体温が37.5℃以上になった場合をいいます。

しかし、人によっては、普段から低体温、何らかの原因によって常に37℃以上ある人もいるので、発熱の苦痛は数字だけでは測れません。いつもより少しでも熱が上がると解熱剤を使う人がいますが、これは間違った薬の飲み方です。

では、薬の飲み方を正しくするためには、風邪で熱が上がるという理由から説明しましょう。
身体の中に菌やウイルスが侵入すると、白血球などの生体防御機能が働きます。
この機能が働くと、脳にある視床下部という体温調節の部分に刺激が伝わり発熱の号令がかかります。
発熱することで、熱に弱いウイルスたちを撃退しようという理由からです。

熱が上がっているときは、外敵から身体を守っているときであり、熱が下がり始めると闘いが終わって来たという意味なのです。
薬の飲み方を知らずに、その熱の上がり始めやピークの時に解熱剤を使ってしまうと、闘う機能が弱くなって風邪を長引かせてしまいます。

また、免疫機能も弱くなってしまうと言われます。
しかし、仕事があって、身体のだるさや、苦痛を一時でも除去しなければならないと言う時は、仕方ありません。
そういった理由なく集中して風邪を早く治したいと考えるならば、発熱の頂上を超えた時点で解熱剤を使用することが、正しい薬の飲み方となります。

風邪薬と飲み物には相性がある!

市販の風邪薬も病院から処方された薬も、薬の飲み方を誤ってしまうと、風邪よりももっとひどい状態になることがあります。
禁忌内容を知り、正しい風邪薬の飲み方を実行することで、薬の効果をもっと上げましょう。

・アルコールで風邪薬を飲むと重体になる可能性もあります。
総合風邪薬には、身体の機能を安静にさせるように、神経に作用する成分が含まれています。
アルコールにも、同じ作用があるため、同時に飲んでしまうと効果が重複してしまい、血圧が下がったり、呼吸が浅くなったりなど風邪どころか、重篤な状態を来たす可能性があります。
また、肝臓は解毒作用という文字通り、毒を解いて排泄するという役割を持っていますが、薬もアルコールもこの作用を大いに必要とします。
薬は役目が終わった後は体外に排泄されなければ、どんどん蓄積されてしまいますし、アルコールは発散されなければ中毒となります。この二つの働きを担うとなれば当然、肝臓に負担がかかることは明らかです。アルコールで薬を飲むというのは100%間違った風邪薬の飲み方です。

・病院から処方される抗生物質の中には、牛乳やヨーグルトで飲むことによって効能が落ちてしまうものがあります。
薬は腸から吸収されて全身に作用されますが、牛乳やヨーグルトのカルシウムが抗生物質と結合してしまって吸収されづらくなってしまいます。
いくら飲んでも風邪の症状が軽減しない結果を生み出します。

・カフェイン含有飲料と風邪薬は、ダブルな悪効果になることもあります。
総合風邪薬には、熱を下げる、身体の痛みを和らげる目的で、少量のカフェインが含有されています。
これと一緒にカフェイン入りの栄養ドリンクや、コーヒーを飲用するとダブル効果が出てしまい、めまいや頭痛、不眠などの症状が出てしまう可能性があります。

風邪をひいてしまったら、どんなことに気を付けるべきか

・普段でも、人が必要な水分量は2リットルです。
風邪をひいてしまうと、熱の上昇や発汗作用が高まってしまうので、普段の水分摂取量よりも、さらに多くの水分が必要となりますので、極力飲水を心がけましょう。
また、汗と一緒に身体の中の塩分も不足してしまうので、スポーツ飲料が効果的です。
正しい風邪薬の飲み方と一緒に、水分を多く摂るということも合わせて覚えておくといいでしょう。

・風邪は、身体の免疫力が低下している証拠です。体温を一度上げることで、免疫力が30%アップすると言われています。
お風呂のあとは湯冷めをしないように、就寝時は寝具などを多めに使用するなど、身体を温めるように気を配ってください。

・睡眠をしっかり摂るようにしましょう。
ベッドの中にいればいいというものではなく、頭の中を休めることで、全身の神経、器官、全てにおいて活性化されます。
かぜのウイルスと闘うには、免疫力が重要です。十分な睡眠で免疫力も増強します。

・熱が上昇したり、喉が痛かったりすると、食事は進みません。しかし、体力が落ちては抵抗力もダウンしてしまうので、風邪に効果のあるものを選んで食べることも大切です。
正しい風邪薬の飲み方と同時に、効果的な食べ方も知っておきましょう。
生姜の成分が入ったお茶や食べ物は身体の保温効果があります。タンパク質を多く含む卵や豆類は、免疫機能のアップに必要です。他には、身体の防御機能を高めるビタミンCの補給も忘れないでください。

・正しい薬の飲み方は、水かぬるま湯で飲むことがいいです。
水なしは、薬が喉についてしまって粘膜がただれたり、出血したりする可能性があるので、水分はたっぷり摂ってください。

まとめ

風邪も、風邪薬も本当の意味をご理解いただけたでしょうか?薬の飲み方を簡単に考えると、命に関わるという重大さも心得て風邪の対処をして行くことが良いでしょう。
また、風邪は万病のもとですので、自己判断ではなく、まずは医療機関の受診をしてください。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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