はじめに

習慣的な排便がなければ、お腹の不快だけではなく、その日一日が憂うつになるかもしれません。

毎日の排便は、正常に腸が活動している証拠と言われますが、排便習慣は人それぞれですので、必ずしも毎日排便が無ければ便秘というわけではなく、逆に毎日排便があっても、腹部がスッキリしない、量が少ないということであれば便秘とみなされることがあります。

毎日の健康を目指して、便秘や便秘の治し方について知っておきましょう。

便秘は、原因に違いによって区分別けされる

口から食べた食べ物は、消化酵素というもので分解と吸収を施されながら、消化管を通過し、便となります。便として排泄されるまで、その距離9m、時間にして約24時間かかります。

腸まで達した食べ物は、腸のヒダ状になっている壁が動くぜん動運動によって、直腸まで移動します。便となった食物のカスが排泄されずにそのまま残ってしまったものを便秘といいます。

便秘の原因や腸に停滞している状況によって、いくつかの便秘に分類されます。

まずは大きく機能性便秘と器質性便秘に二分し、そこからまた、細かく分轄されていきますが、便秘の治し方にもつながるような分類ですので 自分と当てはめて見てもいいかもしれません。

機能性便秘

腸にはこれと言って病気がないが、普段の生活上においての身体、心理状況が乱れることによって生じる便秘です。

●弛緩性便秘
便秘の大半はこの症状と言えましょう。便はしっかり作られるが、大腸の運動機能(ぜん動運動)が低下することによるものです。腹筋でお腹に圧力をかけて排便させるのですが、この力が何らかの要因で低下してしまうことによって、便が腸内に停滞してしまう便秘です。

<特徴>・高齢者は内臓の動きが悪くなるため、高齢者に多い

    ・もともと男性よりも筋肉量が少ない女性に多い

    ・デスクワークなどで運動不足が原因となる

    ・ストレスなどで、自立神経の乱れによるぜん動運動の低下が原因となる

    ・水分不足が原因となる

    ・食事の偏りで、食物繊維の不足が原因となる

●直腸性便秘
便が大腸まで運び下されると、脳へ刺激を与え便意を催すというシステムです。そのサイクルがいくつかの原因で狂ってしまい、便意が感じられず、排泄ができなくなって生じる便秘です。

<特徴>・仕事などで、便意があるにも関わらず我慢してしまった場合に見られる

    ・浣腸を何度も使ううちに便意が無くなることが原因

    ・骨盤底筋の緊張で、息むほど便が出ない


●痙攣性便秘
自律神経のうち副交感神経が活発になることで腸のぜん動運動を亢進させますが、ストレスによって自律神経のバランスが乱れ、交感神経が活発になっているときは、副交感神経の働きが弱くなります。すると、腸に溜まった便の排泄がスムーズに行うことが出来ないため、腸が異常けいれんを起こします。結果、便がスムーズに排泄できなくなります。逆に、副交感神経の働きが異常に活発になっているときは、腸粘膜での水分吸収が間に合わず、排便してしまうため、下痢になります。

<特徴>・うさぎの糞状にポロポロとした便

    ・便秘と下痢を繰り返すことが多い

    ・ストレスや過労で自律神経のバランスを崩している人に多い

器質性便秘

腸管または腸の周辺に疾患があることで、通過障害を来たす便秘です。
便秘そのものの治療ではなく、原因疾患の精査と治療が必要になってきます。

<特徴>・腹部の強い張りや痛みを伴う

    ・食欲不振や嘔吐の症状も出ることがある 

    ・治し方は、食生活などでは改善できない

    ・原因疾患として、腸管の炎症、癌、ポリープ、子宮筋腫、イレウス、
     先天性の腸奇形など
    

便意の我慢が、便秘や全身に悪影響を与える!

便が3日以上、腸に停滞してしまうと、便は悪い状態に変化するしかありません。そして、その変化がまたさらに他の症状を引き起こすのです。
1、水分の吸収が進み、だんだんと硬い便の便秘になる

→次の排便時に腸の粘膜を傷付けるので痔になりやすい
→イレウスを引き起こすことがある

2、排泄されるべきガスも便に含まれているため、その有毒ガスがより多く発生する

→お腹が張り内臓の動きを抑制するので、食欲が落ちる
→血液に混入し、汚染するため肌荒れやニキビの原因になる
→疲労物質が増えて易疲労、血液循環も悪くなり肩こりや腰痛の発生。冷え性の推進など
→体臭、口臭が悪化する

3、血行が悪くなり不快指数が上がると自律神経が乱れる

→余計に便秘が進む
→余計に血行を悪くする
→免疫力の低下

4、腸内の悪玉菌が優位になって増殖する

→免疫力が低下し、流行病や他の感染症にかかりやすい
→大腸がんになりやすい
→肌荒れを起こしやすい

ちょっとした心がけが便秘予防になる

食生活の調整が便秘の治し方として一番!

1、食物繊維を多く摂る

便秘には定番ともいえる食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の二種類があります。
これを1:2の割合で食べるのが良いです。

・水溶性食物繊維=腸内で、ゼリー状になって食品を抱え込み、便を外に出す働き
(オクラ、納豆、海藻類など)

・不溶性食物繊維=腸管の刺激と腸のぜん動運動を促進し便秘を解消する
(きのこ類、切り干し大根、豆類など)

2、乳酸菌の摂取

善玉菌の役割を担う材料となります。便秘の治し方として発酵食品など、意識して摂ることがいいでしょう。

3、砂糖の代わりにオリゴ糖を使用

オリゴ糖は善玉菌のエサとなって増殖を助けます。

便意を感じたら、即トイレ!

便意の無視は 伝達神経の麻痺につながる事なので、できるだけタイミングを逃さず、トイレに行くように気を付けましょう。

自律神経をしっかり整える

ストレスはもちろん、寝不足や疲れも神経を直撃します。便のコントロールは、まず精神のコントロールが便秘の治し方に必須な条件です。

油抜きダイエットは禁物

便だって潤滑な状態であってこそ排泄されやすいもの。腸粘膜の保護にも油は必要です。

継続的な運動が必要

10分から20分くらいの軽めの運動で、酸素の取入れや内臓の活性化を促しましょう。

まとめ

ストレスや食生活の乱れは、もはや現代の病気とも言われます。それが原因の便秘ですが、決して軽視してはいけません。全身にこんなにも悪影響を及ぼす、下手すると発がん原因ともなることをご理解いただけたでしょうか?

便秘に対するちょっとした知識と、排便に与えるほんの少しの時間と精神のゆとりを持つことで便秘の治し方につながり、様々な危険から自分を守れることになります。健康のためにいろいろと便秘解消に取り組んで見てください。

監修

・総合診療医 院長 豊田 早苗

・総合診療医 院長 豊田 早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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