子どもの生活習慣の乱れ

以下のような生活習慣の乱れが起こりやすくなります。

・睡眠時間が短い
夜遅くまで起きている、朝決まった時間に起床することができない、といった睡眠の乱れが多く見られます。

・活動量が少ない
成長するにつれて増えてくるケースですが、外で体を動かす時間が短くなります。他の生活習慣の乱れによる体調不良から、外に出なくなることも考えられます。

・偏食・食習慣に対する意識の低下
コミュニティが広がってくる中学生・高校生以降に多く見られますが、友人との付き合いもあり、自分の好きなものだけを食べるようになります。両親が共働きであるために、平日家にいる時間が短く、子どもの食事に目が届きにくくなる状況が増えてきます。
また、朝起きられないなどの理由から、朝食をとらなくなることもあります。

生活習慣の乱れが子どもへ及ぼす影響

ここまで見ていただいて分かる通り、生活習慣の乱れは、決して子ども自身だけが悪いわけではありません。様々な外的な要因によってこれらの生活習慣が定着してしまうのです。
これらの生活習慣の乱れは、子どもにどのような影響を及ぼすのでしょうか。

・学力の低下

学力低下の大きな原因は睡眠時間の低下です。内閣府の調査によると、10~14歳の子どもの平均就寝時間は22時半とのことです。睡眠不足により授業時間に集中できなくなることはもちろんですが、学校以外の時間を多忙に過ごすことで、自宅学習の時間がなくなることも学力の低下につながります。
学習塾に通っている子どもであっても、本当に子ども自身が望んで行っている習い事でなければ、学力が上がるとは限らず、むしろ生活習慣を乱す原因となる可能性もあります。

・生活習慣病の発症

文部科学省の調査によると、11歳の男の子の10%は肥満の状態であるということです。子どもであっても、肥満による病気のリスクは大人と同じです。糖尿病や高血圧症、脂質異常症(血液中のコレステロール値が高いなどと診断される病気)など、成人の病気と考えられてきた生活習慣病になる確率も、ここ最近子どもの中で増えてきています。今や普通に聞かれるメタボ(メタボリックシンドローム)にも、『小児メタボリック症候群』という言葉が出てきたくらいなのです。

もちろん原因は、大人と同様、食事内容と活動量の低下です。
現在、子どもを取り巻く食環境はかなり多様化しています。出来合いや半調理済商品(材料と一緒にすれば料理が完成するもの)が多く流通し、自宅で食べなくても、24時間様々なジャンルの料理がすぐ手に入る時代です。両親が働いていて、子どもが自身で食べるものを選ぶ場合、本人や親の食事に対する意識が低いと、自分の体にとってより良い食事を選ぶことができなくなり、生活習慣病のリスクが上がります。
活動量の低下に関しては、ゲームやスマートフォンなどの電子機器の普及により、子どもが外で体を動かす機会が減っていることが大きな原因です。

・人間関係の悪化

子どもも親も忙しい現代、家族や友人と、直接面と向かってゆっくり話をする時間をもつ機会が少なくなってきました。そうなると、どうしてもスマートフォンなどの電子機器を使ったコミュニケーションが増えてきます。
友人同士であれば、集団と個人のバランスがうまくとれず、いじめにつながったり、ひどいケースになると、顔も知らない者を含めたSNS上の事件に発展したりすることもあります。家族同士では、同じ家なのにすれ違いの時間を過ごすことで、お互いの心の内を理解しないまま、関係を築けないこともあります。核家族化や、近所や地域でのコミュニティ活動の低下も、集団の中の一人ひとりを孤立化させることにつながっているようです。
人間関係の悪化がもたらす一番恐ろしい点は、子どもがすべての行動に対する意欲や、自分や他人に対する興味を失い、結果的に前述した「学力の低下」や「生活習慣病の発症」など、あらゆる問題点に紐付いてしまうことです。

身につけさせたい生活習慣

このように、様々な環境で様々なストレスを受け続けている現代の子どもにとっては、今の生活を維持しながら、生活習慣を改善することが最も大切です。それは、将来の子ども自身のためになります。
身につけさせておきたい主な生活習慣は、睡眠・食事・活動量です。

1.睡眠

睡眠は人間にとって、特に子どもにとっては成長のために必要な習慣です。睡眠のゴールデンタイムというのをご存知でしょうか?「お肌のために、この時間に寝たほうが良い」という話をよく聞きますが、実は子どもの成長にとっても最も大切な時間帯なのです。午後10時から午前2時までの4時間は、成長ホルモンの分泌量が1日の中で最も多くなるので、この時間に良質の睡眠をとることが大切です。
また、睡眠時間というのは、短いのはもちろん、長すぎるのも逆に生活リズムを崩します。長く寝すぎることにより、食事が不規則になったり、翌日の睡眠時間が短縮されたりするからです。

2.食事

「きちんと親が手作りした食事を毎食とる」というのは、今や昔の話といえます。両親の共働きが当たり前となった現代では、食事の調理時間をしっかりとること自体が難しくなってきています。
もちろん手作りのほうが良い部分は多いですが、重要なのはタイミングと中身で、1日3回、量・栄養素・食材を偏りなくとることが大切です。メインのおかず(肉、魚、卵、大豆製品の料理の中から必ず一品)、主食(ごはん、パン、麺など)、野菜・海藻・きのこのおかず、この3点セットをできるだけ毎食取り入れてください。

また、「朝ごはんは学力を向上させる」ともいわれています。朝食で、糖質を始めとする栄養素を体内に入れることで、脳、内臓、筋肉が朝からしっかり働き、集中力の向上・維持につながります。内容は、前述の3点セットが理想ですが、難しい場合は、果物1つ、おにぎり1つでも問題ありません。食べて、体を目覚めさせることが重要です。

3.活動量

「運動をしましょう」というのは簡単ですが、運動するとなると、設備や道具など最低限の準備が必要となります。運動するというよりも、外に出て空気を吸い、リフレッシュするなど、日頃に取り入れられる運動をすることが大切です。親子で体を動かすような施設に行く、近所をサイクリングするなどがおすすめです。もちろん散歩でもかまいません。

子どもに習慣づけさせるコツ

1.睡眠

悪い睡眠習慣をいきなり完璧にするのはなかなか難しいことです。睡眠改善方法の一つとして、子ども向けの睡眠サプリメントが販売されています。このサプリメントは、緑茶に含まれるカテキンの一種として有名なテアニンと、パエリアの色味として利用されているサフランの2つの成分が含まれています。これらの成分は、ストレスによって活性化する交感神経を抑え、心身をリラックスさせる副交感神経を高める働きをします。
http://www.maruiri.jp/shakkirism/

2.食事

食習慣を改善するためにまず子どもにさせるのは、決まった時間に食卓に呼ぶ、ということです。決まった時間に食卓に座って食べることが習慣化し、規則正しい食生活が身につきやすくなります。また、3食きちんととることで、間食の量も減るため、体の健康にもつながります。

3.活動量

日頃から、子どものスケジュールがゆとりあるものになるよう調整しましょう。予定ばかり入っていると、休日は寝て終わってしまうという不規則な生活スタイルになってしまいます。ゆとりがあると、その分余裕が生まれ、外に出て活動量を増やすことを促しやすくなります。

おわりに

なるべく早い時期から、正しい生活習慣を身に付けることは、生涯健康な体を維持するだけでなく、精神的にも安定した日々を送ることにつながります。
お子さんの生活習慣の改善には、親御さんのサポートが必要です。ぜひ、今回の内容を参考に、今一度、お子さんの生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか?

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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