再生医療の現状とは?

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ケアクル:まず再生医療の現状についてお聞きしたいのですが、かなり範囲が広いですよね?

磐田:そうなんです!実はものすごく範囲が広いです。

私たちは、主に整形外科領域に関わる軟骨や関節に関わる部分にフォーカスしていますが、他の診療科も含めると、まず胚性幹細胞と体性幹細胞に分けることができます。
胚性幹細胞にはiPS細胞が含まれ、万能細胞としてなんでも治す細胞とされます。
その他に、体性幹細胞があり、それが血液になったり、血管になったり、軟骨になったり、神経になったり、内臓になったり、というように細分化します。

日本の大学で一生懸命研究しているのは、よくニュースなどで耳にするiPS細胞です。
これは人工的に作られた細胞であり、今後の医療にとってとても期待されている分野ですが、現状ではガン化のリスクや、コストなど様々な問題があり、世の中に普及させるにはまだまだハードルが高い状況です。 iPS細胞は人工的に作られるものであり、これの作り方を考えたのが山中伸弥先生です。

一方、体性幹細胞は自身の体から採取することが可能な細胞です。 体性幹細胞を利用した再生医療はかなり汎用性が高く、臨床で治療として選択肢にも入れられるレベルに来ています。 この体性幹細胞に含まれる、間葉系幹細胞という幹細胞が軟骨に変化する作用を利用して治療を行なっています。 ですので、当院では患者さん本人の体にある間葉系幹細胞を利用することで、治療可能な再生医療を取り扱っています。

ケアクル:再生医療の話をする時に、iPS細胞などの胚性幹細胞か間葉系幹細胞などの体性幹細胞かで分けて考えたら良いでしょうか?

磐田:そうですね、現状は2つに枝分かれします。 (PRPも存在しますが幹細胞のサポート役を勤めています) リソークリニックでは患者さんご自身の体内から採取し、培養して増やした幹細胞を使用しています。

再生医療はどこに効くのか?

ケアクル:この再生医療はどこに効くのでしょうか? 使用方法のメインは関節になるのでしょうか?

磐田:そうなります!
関節や軟骨の治療に使います。 整形外科領域で言えば軟骨がメインになります。
壊れたら戻らない軟骨を再生させることができるので利用価値があるということです。
※PRPという方法も存在しますが主に幹細胞のサポート役を担っています。
こちらのリソークリニックは安全で利用価値の高い治療を行なっているということです。
基本的には軟骨の治療が多く、通常壊れたら戻らないのが軟骨です。

ですので、それを安全に戻すことができるので非常に有用な治療法だと思っています。
あと、これは当院ではないですが他の例では、間葉系幹細胞を豊胸などにも使用されるケースはあります。
乳がんになってガンの摘出手術をした時に、見た目を戻す時などの脂肪欠損にも使用されます。

再生医療とPRPとの違いとは?

ケアクル:再生医療とPRPとの違いはどんなところなのでしょうか?

磐田:そこわかりにくいですよね。説明します。
例えば、ある調理が出来上がるとして、その材料になるものが細胞です。
そして調味料となるものがPRPです。うまく行くために助けるものサポート役になるものです。
またPRPを入れることで炎症を抑える働きがあります。 壊れたものが治るように、作用する。助けている。基本的には治る反応を起こさせます。
治るものがないのに促しても仕方がないときはあります。 PRPは炎症が治ることで痛みが減ることも考えられます。

ケアクル:ということは炎症が止まることによって痛みが治まっているということもあるということでしょうか?

磐田:そうです。その可能性も十分に考えられると言えます。

ケアクル:すごく求められている治療ですね。でも本当に効くんですか? その確率などもお聞きしたいです。

磐田:そこやっぱり気になりますよね。
当院の実績をベースに説明します。 症状的に、細胞を入れる前後に改善を感じる人が7割、感じなかった人が3割です。 まだ3割がなぜ結果が出ないのか、あまりにも要素が多すぎて、詳しくはわかってはいません。 現状では個人差が大きいです。 細胞の質の違いや細胞数など、様々な要素が関わって効果が変化してきます。

良くなった症例とは?

ケアクル:それでは再生医療が効いた例を教えてください。

磐田:症例をいくつか紹介します。

30代女性:足を引きずってまともに歩くこともできなかった。 原因不明の膝痛で画像診断でわからなかったが、内視鏡検査で見た時に関節軟骨に穴が空いていることがわかりました。そこの一部剥がれていたところに再生医療を施しました。 経過関節をしながら、4ヶ月後に再度確認したら軟骨が再生していました。 足を引きずって歩けない人が今はサッカーやってます。

60代男性:半月板と軟骨が悪い方で激痛を呈している人でした。 寝返りでも痛い、歩いても痛いと言う状況で症状はかなり悪かったです。 半月板は内視鏡で縫い合わせるように手術しました。 軟骨の治療をするのに再生医療を行い細胞を注射しました。 こちらも経過をみながらですが、3ヶ月で痛みが取れました。 術後の経過も良いです。

60代女性:リウマチがあって足首の関節が全く動かなかった人でした。 関節がかなり壊れていたので、可動域もほとんどありませんでした。 当初はなんとかならないかということで相談を受けました。 注射で細胞を入れたところ、1ヶ月で足首は動くようになりました。 それに伴い痛みもかなり軽減しました。 ご自身の一番変わったところを聞いてみると、特に階段の運動が特に変化がでました。 かなり楽にスムーズに、一段一段を普通に階段を上がれるようになりました。 足の腫れやむくみもかなり取れたのでご本人も満足していただけました。


成功率と値段は?

ケアクル:成功率を上げるために必要なこととは?

磐田:はい、これも同時に工夫や試行錯誤はもちろんしています。
効果を感じることができなかった3割の人を少なくするためには、細胞に接着剤が必要です。 ヒアルロン酸を使用しているのですが、改良がまだまだ可能です。
治療の効果がまだまだ上がる可能性を秘めています。
とある大学の研究している糊材があります。これを使用することによって、定着率をあげることができるかもしれません。 再生医療に使用する細胞そのものは、マックスの質まで来ているので、あとはどう生着させるかを考えています。

ケアクル:値段はどのくらいするのでしょうか?

磐田:大事な部分ですね。値段は自由診療になるので保険適用外です。 ですので自ずと負担金額も実際高いです。 そして、値段はクリニックによりバラバラです。 一番安いところは60万くらいですが、だいたい100万から150万くらいだと思います。 細胞数によってやはり値段が格段に違います。そのくらい差があります。 うちのクリニックでも価格は税別で一箇所150万円です。二箇所同時は198万と非常に高額です。 採取した細胞をストックを作っており、こちらを使用する場合は60万円です。 何に一番お金がかかるかというと細胞の培養に一番お金がかかります。 また細胞だけでなく、成長因子やサイトカインという再生を促してくれるものも一緒に入れるのでそのぶんのコストがかかっています。 リソークリニックでは、基本的に6ヶ月は経過観察するので、フォローする費用も込みになっています。 自由診療なので、ある程度自由に値段を決められます。 また治療の過程でサポートしていくのにヒアルロン酸の注射をしたりサポートしますのでそれも込みになっています。

ケアクル:再生医療といってもかなり差があるのですね。

磐田:そうなんです。
細胞治療の中でも値段に差があります。
そしてその値段に何が含まれているかが重要です。

・入れる細胞数はどうなのか?
・入れる細胞をどの組織からとるのか?(おなか?ひざ?)
・入れる細胞の質はどうなのか?
・他に一緒に入れるものは何か?
・リハビリ含めた術後のサポートはどうか?

など内容によって値段にも大きく反映されます。
これが各クリニックで違うので値段もバラバラの状況になっています。 こだわりと自信を持って患者さんにお勧めできるようにしています。
あとは違う視点でお話しすると、健康保険が聞いていると他の手術も安く感じますが、 例えば人工関節の手術は本来約380万円します。
自由診療の再生医療は保険適用ではないので確かに自己負担金額が高いのですが、もっと総額の高い手術もあるので比べると安いという見方もできます。 医療は本当にお金がかかります。

痛みはどれくらいあるのか?

ケアクル:痛みはどのくらいあるのでしょうか?

磐田:痛みの部分、もちろん重要ですよね。 シンプルですが痛みは注射の痛みのみです。 再生医療に使用する組織を採取するときに切開1、5センチ切開します。 この時に局所麻酔の注射をするのでその痛みは伴いますが切開による痛みを訴える人はほぼいません。ですので基本的には注射の痛みのみと説明しています。

ケアクル:細胞を入れた後、リハビリ時に痛みは出ますか?

磐田:ストレッチや可動域訓練中ですね。確かにそこも気になりますよね。 これはあまり痛みが出るということは聞きません。 例えば、従来のPRPだと痛みがかなり強くでるという治療も以前はありました。 しかし、リソークリニックの治療は注射後には痛みは出ません。 はじめは必要な組織を塊で採取するので切開必要です。これを行う前に麻酔注射をします。 培養後に注射で入れるので、注射が2回ほど痛い可能性はあります。

再生医療のメリットとは?

ケアクル:一般的な整形外科の手術と比べてメリットはあるのでしょうか?

磐田:メリットは明確です。
・入院がいらない
・全部日帰り
・体への負担が少ない

あとは使用するもののほとんどが自身の体から採取したものばかりなので拒絶反応が少なく負担がないというのもメリットだと考えられます。

ケアクル:年齢による適用はあるのでしょうか?

磐田:これはないと考えて良いと思います。

ケアクル:本当にないんですか?笑

磐田:体の中にある、幹細胞の数に違いがあるとされています。 しかし、細胞のレベルも質も年齢では変わらないとされています。 変化するのは数であるとされています。

まとめ

ケアクル:最後にメッセージをお願いします。

磐田:何か症状があって、2ヶ月以上治療をしているにもかかわらず効果がない場合は保険治療の中で選択肢がなくても、自由診療の範囲も含めて違う治療を検討してみてはいかがでしょうか? 近年は新しい治療として選択肢がたくさん出て来ています その治療法も症例や実績も溜まって来ているものがたくさんあります。 その中で、自分に会う治療法があればトライしてみるのも良いのではないでしょうか? これからさらに困っている人を助けられるように、そして治療実績が上がるように尽力していきたいと思います。

ケアクル:本日はありがとうございました!

プロフィール

・整形外科医 磐田 振一郎

・整形外科医 磐田 振一郎

専門分野 
膝関節外科、人工関節手術

経歴
平成08年 慶應義塾大学医学部 卒業
平成14年 Stanford大学工学部 留学
平成21年 特定非営利活動法人 腰痛・膝痛チーム医療研究所 設立(理事長)

資格
日本整形外科学会専門医
日本体育協会公認スポーツドクター
NSCA-CSCS
(NSCA公認コンディショニング&ストレングス スペシャリスト)
日本ダイエット協会認定ダイエット指導者

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