はじめに

乳幼児は成人に比べて食物アレルギーを持っている確率が高く、1歳では約1割の子どもが何らかの食物に対してアレルギーを持っているとされています。成長とともに寛解することがほとんどですが、子どもの食事に携わる保護者としては我が子に食物アレルギーがあるのかどうかというのはとても気になるところです。

そこで、今回は小児の食物アレルギーについて分類や原因、症状に加えて注意するべき食品についてまとめてみました。

食物アレルギーの定義と分類

人間の体は体内に異物が入ったと感じると免疫グロブリンE(IgE抗体)という抗体を産生して異物を排除しようとします。このときに起こる反応が過剰になり、人間にとって障害を及ぼす状態になることをアレルギーといいます。食物アレルギーの場合、食物内のたんぱく質を異物として反応しアレルギー症状が出現します。

次に、食物アレルギーの分類について説明していきます。
食物アレルギーは大きく分けて4つに分類されます。

1. 新生児・乳児消化管アレルギー

主に新生児に多く、牛乳や育児用粉乳に反応してアレルギー症状を起こすものですが、ほとんどは2歳ころまでに寛解します。嘔吐や下痢などの消化管症状が起こります。

2. 食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎

乳児期の食物アレルギーとしてもっとも多い症状です。生後3か月ころまでの乳児で、顔から始まる湿疹がなかなか寛解しない、また皮膚科などでもらった塗り薬を塗っても寛解しない場合に疑われます。

鶏卵や小麦、牛乳がアレルゲンとなっており、お母さんが食べたこれらの食材が母乳を通して乳児の口に入ることでも発症します。あせもやかぶれとの見分けがつきにくいので慎重な医師の判断が必要ですが、ほとんどは成長とともに寛解します。

3. 即時型

乳児期から成人期にかけて起こる食物アレルギーで、アレルゲンとなる食材を口に入れてから数時間以内に症状が現れるものです。蕁麻疹や発疹などの皮膚症状が最も多いですが、消化器症状や呼吸器症状が現れることもあり、ひどい場合にはショック状態に陥ることもあります。

アレルゲンは、乳児期から幼児期には鶏卵、牛乳、小麦、魚類、ピーナッツなどが多いですが、成人期にかけてはえび、かになどの甲殻類や果物類が多くなってきます。

4. 特殊型

1) 食物依存性運動誘発アナフィラキシー
アレルゲンとなる食材を食べたあとに運動を行うことで症状が発現しますが、アレルゲンを口にしていても運動を行わなければ症状がでないというものです。アレルゲンとしては小麦やえび、かにが多く、小学生から高校生に多い症状です。

2) 口腔アレルギー症状
アレルゲンを口にすると、唇が腫れたり、口の中がいがいがするなどの口腔症状だけが現れるものです。
花粉症を有する成人に多く、どの果物や野菜がアレルゲンとなるかはどの食材の花粉に対してアレルギーがあるかということになります。

小児の食物アレルギーの原因

食物アレルギーは、食べ物の中のたんぱく質が十分分解されず、大きい分子の状態で胃腸に吸収されることで起こります。

乳幼児期は胃腸の機能が未発達で、たんぱく質が十分に分解されることなく吸収されてしまうため、アレルギー反応を起こしてしまいます。特別な食物アレルギーの治療を行わなくても、消化機能が備わってくると自然と治ってくることが多いのも小児の食物アレルギーの特徴です。

小児の食物アレルギーの症状

食物アレルギーによる症状の出方は人によってさまざまですが、ここでは症状を分類しながら説明していきます。

1. 皮膚症状

食物アレルギーの約9割に出現する症状です。
蕁麻疹やかゆみ、赤みが見られます。

2. 呼吸器症状

皮膚症状の次に多い症状です。
くしゃみや咳をはじめ、息苦しさ、ぜーぜーやひゅーひゅーといった喘息のような症状がみられます。

3. 消化器症状

腹痛や嘔吐、下痢といった消化器症状がみられます。

4. 粘膜症状

口の中がいがいがしたり、唇や口の中が腫れるという症状がみられることがあります。のどの粘膜が腫れている場合には息がしづらくなるため、声が枯れたり出にくくなるなどの症状がみられることもあります。ひどい場合には呼吸困難に陥ることもありますので、注意が必要です。

5. アナフィラキシーショック

上にあげたような症状が複数重なり、全身的に症状がでる状態です。その中でも、血圧低下や意識レベルの低下が起こるショック状態になると命にもかかわってくることがありますので大変危険です。

小児の食物アレルギーの原因となる食品

小児といっても、年齢によってアレルギーの原因となりやすい食材は変わってきます。

乳幼児期は、『3大アレルゲン』と呼ばれる鶏卵、小麦、牛乳がアレルギーの原因となりがちです。
成長して学童期に入ると、『3大アレルゲン』に対しては徐々に耐性がつき、えびやかになどの甲殻類やピーナッツ、そば、果物や野菜がアレルゲンになることが増えてきます。

鶏卵、牛乳、小麦に加え、そばや魚類、ピーナッツはアナフィラキシーショックに陥るリスクがあるため注意が必要です。

おわりに

小児期の食物アレルギーは比較的多くのお子様が持っており、必要以上に心配することなく消化機能の発達を待つということが大切ですが、症状や程度によっては医師による治療を行いながら経過を見ていく必要のある場合もあります。
お子様が食物アレルギーを疑う症状を持つ場合は、一度かかりつけの小児科医に相談し、今後の方針を確認しておくとよいでしょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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