はじめに

突然ですが、「最近おならが多くて困る」、「おならが臭くて嫌だな」と感じたことはありませんか?つい厄介者扱いされてしまいがちなおならですが、実は全く出ない方が問題なのです。そこで、そもそもおならとは何なのかや回数が増えたりニオイがきつくなるとき体では何が起こっているのかを説明します。また、それらの解決方法もご紹介します。

おならとは

おならはなぜ出るの?

私たちの腸管は口からおしりまで一本の長い管でつながっています。口から食事を摂ったとき、一緒に飲み込んだ空気がガス(口からはげっぷ、おしりからはおなら)として排出されます。つまり、おならとは腸内に溜まっているガスなのです。

なぜ臭いおならが出るの?

おならはほとんどが空気のため本来無臭なのですが、腸内細菌のバランスが崩れることによって、おならが臭くなることがあります。 

(1)腸内細菌とは
腸内には善玉菌、悪玉菌、日和見菌という3種類の菌がいます。善玉菌は腸内環境を整える働きをします。悪玉菌はタンパク質を分解して、ニオイの強いガス(アンモニア、硫化水素、インドール、メタン)を発生させます。日和見菌は善玉菌優勢のときには良い働きをし、悪玉菌優勢のときには悪い働きをします。理想的な腸内細菌のバランスは日和見:善玉:悪玉=7:2:1ですが、現代人はストレスや不規則な生活習慣によって、このバランスが崩れている人が多いそうです。

(2)便から分かる腸内細菌のバランス
 自分の腸内細菌のバランスが崩れているかの目安として、毎日の便を観察してみましょう。以下の項目が当てはまる人は、腸内細菌は悪玉菌優勢になっています。

①便が少ない(バナナ3本分以下)
②よく下痢(または便秘)をする、あるいは繰り返す
③便が柔らかすぎる(または硬すぎる)。理想は練歯磨き粉やみそ程度
④キレが悪い(すっきり落ちない)
⑤においが異常に臭い

おならの回数が増えたり、ニオイがきつくなる原因は?

腸内細菌のバランスの他にも、おならが臭くなったり、回数が増えることがあります。ここではその原因について説明します。

おならが臭くなる主な原因

(1)腸の病気
臭いおならが続く場合は重大な疾患がある場合があります。
下記が主な病気になります。

・大腸がん
血便、細い便、軟便と便秘を繰り返すなどの症状があります。大腸がん患者のおならはメタンチオールという腐った玉ねぎのようなニオイに似ています。

・潰瘍性大腸炎
大腸の粘膜がびらん(ただれのこと)や潰瘍(かいよう)を起こし、下痢や血便などの症状が出ます。おならのニオイがきつくなります。

・大腸憩室(けいしつ)炎
大腸の腸管内壁の一部が外側に飛び出して、憩室と呼ばれる空間ができ、その空間に炎症がおこる病気です。おならが臭くなります。

・過敏性腸症候群(IBS)
検査で炎症や潰瘍などの異常所見がないのにも関わらず、下痢と便秘を繰り返したり、おならが増える病気です。自律神経の乱れ、ストレスなどが原因とされています。

(2)食べ物の影響
・ニオイがきつくなる食べ物の摂取
動物性タンパク質の肉、硫黄化合物の多いにんにく・ニラ・ネギなどはニオイの元になるため、これらを過剰摂取するとおならのニオイがきつくなります。
ただし、健康的な体を作るためにはどちらの成分も必要なため、食べるタイミングを工夫しましょう。

・消化不良を起こしている
消化不良を起こすと、おならのニオイはきつくなります。
※消化不良を起こしているかどうかの目安
胃腸の働きが低下することによって、腹満感(おなかが張った感じ)、胸焼け、吐き気、食欲不振、下痢、便秘などの様々な消化器症状が現れます。

おならの回数が増える主な原因

(1)空気嚥下症・呑気(どんき)症
食事やそれ以外の生活でも、ストレスなどが原因となって大量の空気を飲み込んで、げっぷやおならの回数が増えることがあります。これを空気嚥下(えんげ)症あるいは呑気(どんき)症と言います。

(2)食べ物・食べ方の影響
①早食い
飲み込むように食べる癖があると、食べ物と一緒に空気も吸い込んでしまうためです。

②炭酸飲料
炭酸飲料は体内に入って二酸化炭素に分解されるため、ガスとして排出されるげっぷやおならの回数が増えます。

③食物繊維
食物繊維は大腸で分解されてガスを発生させるため、おならの回数が増えます。野菜、豆類、イモ類、きのこ類などに多く含まれます。ただし、スムーズな排便や生活習慣病の予防など、食物繊維には様々なメリットがあるため、1日男性25g、女性20gの摂取が推量されています。さらに、食物繊維は悪玉菌を減少させる働きもあります。そのため、おならの回数は増えても、ニオイは抑えられたおならが出ることになります。

おならの回数を減らしたり、ニオイを改善する方法とは

おならの回数を減らす方法

おならは便などを排出するために、本来必要なものであり、健康な人でも1日20回程度は出ています。その回数よりも大幅に多い場合は、以下のような改善策をとってみましょう。

(1)食べ方を改善する
早食いは食事と一緒に空気を飲み込む量を増やしてしまうため、ゆっくり食事をするように心がけましょう。

(2)ストレスコントロール
ストレスが溜まっていると、空気を飲み込む量が増えてしまいがちです。自分がリラックスできる方法を知り、こまめにストレス解消をするようにしましょう。

(3)適度な運動でガス抜きをする
運動不足などによって、おならが腸内に貯留していると、じっとしているときでもおならをしたくなってしまいます。ウォーキングやストレッチなどを取り入れたり、就寝前に布団の上などでごろごろ回転する動きをすることで腸の蠕動(ぜんどう)運動が活発になり、排便時に上手くおならも出せるようになります。

おならのニオイを改善する方法

(1)善玉菌を増やす食材を摂る
善玉菌が豊富に含まれる食材を摂ることによって、崩れた腸内細菌のバランスを改善しましょう。乳酸菌やビフィズス菌を含むヨーグルト、乳酸菌飲料、牛乳、キムチ、味噌などがおすすめです。
また、善玉菌の活動を活発にする働きをもつオリゴ糖を一緒によることで効果が高まります。オリゴ糖はヤーコン、きなこ、ささげなど豆類、大豆加工食品、野菜などに多くふくまれます。

(2)おならのニオイがきつくなる食品を摂り過ぎない
おならのニオイが気になる方は、前述した動物性タンパク質やニオイの元となる食材の摂取量を減らしてみましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
おならのニオイで健康状態がわかるだけでなく、どうしたら改善されるか分かりましたでしょうか?
おならの事を理解して、自分の健康状態を確かめると良いかもしれません。

また、臭いおならが続く場合は、何かの病気が潜んでいる危険性があります。その際は、早めに近くの医療機関を受診しましょう。

監修

・千葉大学医学部附属病院 宮山 友明

・千葉大学医学部附属病院 宮山 友明

専門分野 
循環器内科

経歴
1998年 千葉大学医学部医学科卒業。
2008年 千葉大学大学院医学薬学府環境健康科学を専攻し、医学博士号を取得。
現在 千葉大学医学部附属病院循環器内科医員として、心臓専門医として診療、研究。

資格
医師免許

活動:
日本抗加齢医学会専門医としてアンチエイジング医学、日本医師会認定健康スポーツ医としてスポーツ医学にも取り組み、各種メディアで活動中。

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