はじめに

腰痛症は多くの方が抱えている悩みですが、そのなかでもいつどこで起こるかわからず、一度なったことのある方にとって大きな不安の種になるのが『ぎっくり腰』です。

そこで、今回はぎっくり腰になったときのケアの仕方から必要な治療や予防についてまとめてみました。

どうしたら痛みを和らげることができるのか?
少しでも楽にするための対処法を紹介します。

どのように腰痛やぎっくり腰と付き合って行けば良いのか、しっかり覚えておきましょう。

ぎっくり腰とは

『ぎっくり腰』というのは通称であり、正式には『急性腰痛症』と言います。

重い物を持った瞬間や前かがみになったとき、くしゃみをしたときなど何かしらはっきりしたきっかけによって急に腰が痛くなった状態です。

痛みを発しているのは腰部の関節や靭帯、筋肉などそのときによって様々ですが、多くの場合は痛みを生じた瞬間から動きがとれなくなり、しばらくの間日常生活に大きな支障をきたします。

ぎっくり腰になったらまずやるべきこと

突然のぎっくり腰。激しい痛みと共に始まるこの症状はどんな姿勢をとっても辛い、という状況が起こるので、少しでも早く楽にしたいものです。

そこでぎっくり腰になってしまったらまず何をすべきか?
ということを説明していきましょう。

まず、激しい痛みがどの体勢になると楽になるのか?
可能な限りで良いので少しでも楽な姿勢を取るようにします。
次に、深呼吸を数回繰り返して気持ちを落ち着かせてください。
その後にどこが痛いのか?を明確にするために確認をします。

患部を触って強い熱を持っていたり、腫れがある場合には冷やすようにしましょう。
急性期は冷やすことで楽になることが多いです。
急性期をすぎたら温めるようにします。
痛みがどこにあるのか?患部を確認しながら熱が引いたか?腫れは出ていないか?
という部分を確認してください。

冷やしたら良いのか?温めたら良いのか?

というのはご自身が気持ち良いと感じる方を優先してください。

初期のぎっくり腰の痛みを和らげるために痛み止めを服用することも一つの選択肢です。
痛みのあまり腰の筋肉が固まりすぎたり、強い緊張が続いてしまうと状態を悪化させる恐れがあるだけでなく、治癒までの期間を遅らせてしまう原因になります。

まずは楽な姿勢を見つけて冷静な判断をすることが不可欠です。
助けを呼べる状況であれば、身の回りのことをお願いできる助っ人を呼ぶのも良いでしょう。
ぎっくり腰になってから、はじめに行う処置が、症状の予後を左右します。

ぎっくり腰になったときのセルフケア

ぎっくり腰になったときは思うように体が動かせず、どのように対処すればよいのか困ってしまうのではないでしょうか?そこで、ここではぎっくり腰になったときのセルフケアの仕方についてまとめます。

1.とにかく安静にする

ぎっくり腰は腰部の何らかの組織が炎症を起こしている状態です。動かさなければそのまま固まってしまうと思い、無理やり動かそうをする方がおられますが、痛みを我慢しながら動けば動くほど患部の炎症が強くなってしまい、治るのに時間もかかってしまいます。
ですから、ぎっくり腰になってから数日はできる限り無理のないような姿勢を取ることが大切です。

コルセットを持っている場合には、患部の安静のために着用するのも良いでしょう。
病院を受診するのも無理に当日しようと思わず、数日経って少し動けるようになってからでも遅くはありません。

2.患部を冷やす

炎症を起こしている部位を温めてしまうと余計に炎症が強くなり、痛みも増してしまいます。
ですから、ぎっくり腰になったときにはまず袋に入れた氷を患部にあてるなどして冷やすようにしてください。15~20分ほど冷やしては離し、皮膚の感覚が元に戻ったらまた冷やします。炎症を落とすだけでなく痛みの感覚を麻痺させる効果もあるので、安静にしていても痛いような場合にはとても効果的です。保冷剤の使用も悪くはありませんが、凍傷になる恐れがありますので、十分に注意が必要です。

また、湿布の使用についても炎症を抑えるために効果的ではありますが、湿布には冷やす効果はほとんどなく、抗炎症剤が含まれていることによるものなので、特にぎっくり腰になったばかりの急性期には湿布だけでなく氷で直接冷やすことが重要です。

3.深呼吸を心がける

ぎっくり腰は痛みが強いこともあり、体全体を硬直させてしまいます。
全身の緊張が強かったり、背中の筋肉が固くなると治癒までの時間が長くなってしまいます。
深呼吸を意識することで、心も体もリラックスを促すことが重要です。
呼吸は、肋骨が動いたり、背部の筋肉や、体幹の筋肉が自然に動かされるので、全体が固まってしまうのを防ぐことができます。
また冷静に判断するためにも落ち着かせることが重要です。
焦って行動してしまうと悪化させてしまったり、再発を誘引するので気をつけてください。

ぎっくり腰の痛み止めの薬

とにかく早く痛みを抑えたいという場合に、痛み止めの薬の使用は効果的です。ぎっくり腰の炎症を抑える場合に有効なのが『解熱鎮痛剤』です。飲み薬と貼り薬があり、市販薬も医師に処方される薬もあります。

しかし、急性期の炎症の強い時期を過ぎ、痛みの原因が炎症よりも筋肉のコリなどになってくると痛み止めはあまり効果がなくなってきます。そのようなときに自己判断で薬の量を増やしてしまう方がいますが、これは大変危険です。

薬の量については用法用量を守り、痛み止めの効果が感じられなくなってきたら、医師や薬剤師に相談し、リハビリなど次の治療を検討しましょう。

温める?冷やす?どっちが効果的?

ぎっくり腰になったとき温めるべきなのか冷やすべきなのかということは、色々な説があり、混乱してしまう方も多いのではないでしょうか?色々な説が出回っている原因は、状態やぎっくり腰になってからの期間によって正しい対処方法が異なるからです。そこで、どのようなときに冷やしてどのようなときに温めるのがよいのかまとめてみました。

1.急性期

ぎっくり腰になったばかりの炎症の強い時期はとにかく冷やすことが大切です。
最初の数日間は、上に述べたような方法で冷やすことを繰り返してください。

2.亜急性期から慢性期

受傷後、数日から一週間ほど経過し、急性期の炎症が落ち着いてきたらお風呂などで体を温めることも痛みの緩和や動きやすさにつながってくる可能性があります。これは、患部の周りの血流を促すことで損傷した組織の治癒を促進し、痛みをかばって凝り固まってしまった患部周囲の筋肉を温めてほぐす効果があるからです。

急性期を過ぎて温めてもよい段階がどうかの判断が難しい場合には、医師や理学療法士、治療院の方に聞いてみましょう。

温めてもよい時期になってからもやむを得ない事情で動きすぎてしまい、痛みが増してしまった場合には炎症が再燃している場合もあります。期間だけにとらわれずそのようなときは一時的に冷やして炎症を落ち着けるようにしてください。

ぎっくり腰の治療法

ぎっくり腰になった場合、安静、患部を冷やすこと、痛み止めの薬を使用することなどによって炎症が落ち着くと痛みは緩和されます。

しかし、ぎっくり腰はくせになると言われるように炎症が落ち着いたからといって治療を終了してしまうとほとんどの方が再びぎっくり腰や慢性的な腰痛症になってしまいます。それは、ご自分の体の弱い部分やぎっくり腰になりやすい要素を改善されないままにしているからなのです。

そこで、ここではぎっくり腰を治療し、再発を予防するために必要なことをご紹介します。

1. 体幹の筋力強化

腰を痛めないために重要な要素の一つ目が、体幹の筋力です。体幹の筋力というのは、簡単にいうと腹筋や背筋のことです。腰を曲げたり伸ばしたりするのに主に使われているのは腹筋や背筋なので、これらの筋力が弱いと当然重い物を持ったりすることで負担がかかります。

また、腹筋と背筋のバランスが悪いと正しい姿勢を保持するのが難しくなります。正しくない姿勢は腰に負担がかかるため、腰痛の原因になってしまいます。ですから、日頃から体幹の筋力を強化しておくことで腰痛の再発を予防することができます。

2. 腰や下半身の柔軟性

ぎっくり腰になると、痛みのある部位の筋肉をはじめとする組織が硬くなってしまいます。それをそのままにしておくと、痛みが落ち着いてからまた腰を動かした際に腰の柔軟性が足らず、ぎっくり腰になってしまいます。ですから、ぎっくり腰の炎症が落ち着いたあとにはマッサージやストレッチなどを行い、腰の柔軟性を取り戻しておく必要があります。

また、お尻や太ももなど下半身の柔軟性が低下していると、前かがみなどの動作で下半身がうまく動かず、腰の動きに頼ることになるので腰に負担をかけてしまいます。ですから、日頃から下半身のストレッチを行って柔軟性を高めておくことが大切です。

3.腰に優しい体の使い方

腰の筋肉はお尻や太ももの筋肉に比べてとても小さく、腰の関節は股関節などに比べてとても動きの小さな関節です。重い物を持つときや前かがみになるときに股関節の動きを使わず腰の動きに頼ってしまうと、腰の関節や筋肉にかかる負担が大きすぎて痛めてしまいます。ですから、腰に優しい体の使い方を覚えることも大事な腰痛予防のポイントになります。

ぎっくり腰の炎症と痛みが落ち着いてきたら、ここまでに述べた3つのことを中心に強化しておく必要があります。具体的に何をすればよいのか自分では判断が難しい場合には、整形外科を受診し、理学療法士などリハビリ指導のできる人にアドバイスを受けるとよいでしょう。

おわりに

腰痛症は多くの方が抱えており、持病としてあきらめてしまっている方も多いですが、きちんと治療を行い、再発予防のためのケアを行えば治せるものです。今回ご紹介したぎっくり腰についてのお話を機会に是非ご自分の腰痛と向き合い、予防や改善を目指してください!

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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