溶連菌とは?

『溶連菌』と呼ばれるものは略称で、正式には『溶血性連鎖球菌』といいます。

通常、『化膿レンサ球菌』という細菌を指していることが多く、毒素を産生し、血液中の赤血球の壁を溶かすように壊す特徴があります。
また、顕微鏡で観察した時に、球状の菌が連鎖上につらなって見えることから、「溶血性の連鎖している球形の菌」ということで、溶血性連鎖球菌という名前がついています。

溶連菌は菌体そのものの感染も問題ですが、菌が身体に入った時の免疫反応の異常や、感染によって産生される毒素も病気の原因となります。
つまり、菌の感染だけでなく、産生される毒素も問題となることが多いのです。

●溶連菌の歴史

溶連菌は、種類も多岐にわたり、100種類以上のタンパク質によって区別されています。

2015年に溶連菌感染症の患者数は、過去10年間で最高数に達したとされています。
溶連菌のうち『A群β溶血性連鎖球菌』と言われる菌は、人に対する病原性細菌(病気を引き起こす細菌)であると、古くから認識されています。以前は、感染時の発熱が軽度なことが多かったため、抗生物質での管理も必要ないとされていました。

しかし、1980年代から『敗血性ショック症状』など、非常に重い症状も欧米で報告され始めています。

溶連菌にはいつどこで感染する?

●感染のピークは初夏と冬

溶連菌感染症のピークは初夏と冬の1年に2回です。
特に、冬は『インフルエンザ』や『感染性腸炎』の流行時期でもあります。冬期の発症にはこれらのウイルスと混合感染を起こすこともあります。

感染後の初期症状は、咽頭痛と発熱です。
溶連菌感染症は、学校の児童や生徒、職員の健康を守るために制定された『学校保健安全法』に定められる感染症です。そのため、適切な治療が開始されてから、24時間以内は登校することができません。

●飛沫・接触で感染

溶連菌は、ヒトのくしゃみや咳などによって飛び散るしぶきにより、鼻や喉の粘膜に感染します。これを『飛沫感染』と呼びます。

このほかに、手指などを介して感染する『接触感染』も起こします。
溶連菌のついた食品、食器やタオルなどからも感染することも多く、時には入浴で感染することもあります。

溶連菌感染症の症状

●熱・のどの痛み

感染すると、さまざまな症状が現れるのが、溶連菌の特徴の一つです。
症状を引き起こす要因には、溶連菌の病原因子が直接作用する場合と、溶連菌に対する免疫反応が出る場合の2パターンがあります。

扁桃腺に溶連菌(化膿レンサ球菌)が感染すると、『急性扁桃炎』を起こし、辛い発熱や咽頭痛を生じます。

●発疹などのアレルギー反応も

感染後の初期症状は、咽頭痛と発熱ですが、毒素によって重症化することもあります。

溶連菌の毒素に対するアレルギー反応として有名なのが、『猩紅熱(しょうこうねつ)』です。
皮膚の発疹を併発し、紅色の点状ないし粟粒大の発疹が、首元、脇の下、足のつけ根から始まり、全身に現れます。

重症例では、ショック状態に陥り、多臓器不全を起こすこともあります。

溶連菌感染症の予防

●うがい、手洗い、マスクが基本

溶連菌に対するワクチンはないうえに、生活の中に常にある菌であるため、完全な感染対策はどうしても困難です。

感染・発症させないためのポイントは、感染部位である咽頭や扁桃で菌を増殖させないことです。
そのためには、手洗いとうがいなどの基本的な対策が重要です。特に、家族やクラスメイトに感染の疑いがある人がいるときは、気をつけましょう。

また、くしゃみや咳で感染する飛沫感染であることから、マスクの着用も効果的です。
感染してしまった方は、くしゃみや咳をする際に飛び散らないようにエチケットを心がけましょう。

●食品や食器にも注意

溶連菌で汚染された食品や水も、感染源となります。
食器やタオルから感染が起こることも多いので、それらを殺菌するなどして清潔に保つ工夫が必要です。
場合によっては、入浴で感染することもあるので、感染者との共有は避けた方が良いでしょう。

溶連菌感染症の治療

治療はペニシリン系の抗生物質を投与するのが一般的です。服用後は解熱に続いて痛みの緩和が現れます。
普通の風邪とは異なり、放っておいても良くならないので、早めに病院を受診しましょう。

また、アレルギー反応がひどく、症状が重症化した場合には、悪さをする毒素を取り除くことが必要です。
溶連菌自体を抑制しても治療効果はなく、『ガンマグロブリン』や『透析』によって血液から毒素を浄化します。

おわりに

溶連菌のについて、感染経路や症状、予防・治療法をご説明しました。

流行しやすい季節には、早めの予防をしましょう。
生活の中に常にある溶連菌ですが、手洗いうがいをこまめに行い予防していくのが基本です。
咳やくしゃみなどをするときは、なるべく人に離れ、必ず口や鼻を塞いてしましょう。少しの気遣いをしたり、エチケットを守ったりすることにより、感染が予防できることもあります。

流行る季節には、特に対策をしっかりと実行しましょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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