はじめに

皆さんは食物アレルギーという言葉をご存知ですか。近年はアレルギーに関する社会の関心も高まり、色々な場所で食物アレルギーについての話題を聞くことが多くなってきました。そのため、少なからず食物アレルギーがどんなものかを多くの人がご存知かと思います。
 
しかしながら、自分や家族がいざ食物アレルギーを発症した場合、どう対応すればいいかを完全に理解している方はそう多くはないのではないでしょうか?今回はそういった方のために、食物アレルギーの原因と、上手な付き合い方について解説していきます。

食物アレルギーの原因を知る

ではまず最初に、そもそも食物アレルギーがなぜ起こるのかについてみていきましょう。

食物アレルギーとはその名の通りアレルギーの一種で、アレルギーとは体の免疫反応(めんえきはんのう)、つまりは体を守るためのバリア機構が全く害のないものに対して過剰に反応してしまうことを指します。

人間は普段から細菌やウイルスなどに晒されており、これらの外敵から体を守る必要があるのですが、その役割を担っているのが免疫機構(めんえききこう)というものです。免疫機構には大きく分けて2種類の仕組みがあり、1つが細胞性免疫(さいぼうせいめんえき)、もう1つが液性免疫(えきせいめんえき)と呼ばれています。

細胞性免疫では、ある種の免疫細胞が直接外敵を細胞の中に取り込み、溶かしてしまうことで外敵を排除しています。この免疫機構は反応が早く、ほぼどのような外敵にも有効ですが、単独ではそれほど強い排除機構でありません。

一方液性免疫では、免疫細胞によって作られた抗体という物質が主役になります。抗体は外敵の表面を見分けてくっつき、その機能を失わせたり、抑えたりする上に、細胞性免疫によって外敵を排除しやすくしてくれる作用があります。比較的強い免疫反応ですが、抗体をたくさん作るのに時間がかかるため、少し遅れて始動します。

食物アレルギーでは、この2つの仕組みのうち、液性免疫のほうが深く関わってきます。つまり、外敵ではない食べ物に対して、何らかの原因で抗体がくっついてしまい、そこから免疫反応がスタートしてしまうのが食物アレルギーの原因なのです。

一度免疫反応がスタートすると、体の様々な場所が外敵を排除しようと一気に戦闘モードになってしまい、じん麻疹や呼吸困難、ときにはショック症状まで起こして命にかかわる事態になってしまうことになるのです。

食物アレルギーへの対策

それでは、食物アレルギーに対しては具体的にどのような対策を取るのが良いのでしょうか。一番の対策は、まず何がなんでもアレルギーのある食物を食べないようにするということです。

先程の説明でもわかるとおり、食物アレルギーの人では特定の食べ物に対して、これは完全に敵であると体が判定を下してしまっています。これを覆すのは容易なことではなく、アレルギー反応を起こさないためにはとにかく原因となる食べ物を徹底的に避ける他ありません。
 
食物アレルギーは殆どが子供に頃に発症、発覚するのですが、そういった場合のアレルゲン(原因物質)には鶏卵、乳製品、小麦などが多いとされています。ただし小児の食物アレルギーのうちの一部は、免疫機構がまだ未発達であるがゆえにおこっているものであるため、成長とともに食べられるようになる場合もあります。
 
これが原因で、食物アレルギーは我慢して食べ続ければ治ると考えている方も居るようですが、それは全く正しくありません。あくまで成長したから食べれるようになったのであって、無理にアレルゲンを食べ続けると突然の激しい反応によって亡くなってしまうことも十分に考えられますので、じん麻疹などが出るうちは決してアレルゲンを摂取する、あるいはさせるようなことはしていけません。

成人の場合では甲殻類、魚介類、そばなどのアレルギーが多いと言われており、成人まで続く食物アレルギーの場合は、自然に治ることは殆どありません。とにかくアレルゲンとなるものは食べない、というのが食物アレルギーの鉄則なのです。

食物アレルギーの食品以外で栄養を補う

食物アレルギーでは特定の食物を食べれなくなるわけですが、そうなると必要な栄養素が足りなくなるのではないかという心配があるかもしれません。一般的にアレルギーで食べれないものが多くても、栄養不足になるということはあまりないのですが、食べられない品目が多かったり、特定の栄養素に偏ったりしている場合は少し注意しなくてはなりません。
 
しかしその場合でも、食べられる野菜や肉など、他の食物を多めに摂れば問題ない場合が多いようです。これは個人の栄養状態や食べられるものによっても変わってきますので、心配な方は市や公共機関の栄養相談を受けてみることをおすすめします。

おわりに

食物アレルギーは身近ながら、正しく対処しなければ死に至ることもある恐ろしい病気です。基本的にアレルゲンは徹底的に避け、もし食べてしまって異常が出た場合には、すぐに病院に行くことが正しい選択です。

自分がアレルギーを持っていないからといって決して他人事にはせず、正しい知識を持って、正しい対応が出来るように心がけましょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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