はじめに

甲殻類アレルギーは牛乳などのアレルギーと違って、乳幼児に発症するのではなく2~3歳くらいから徐々に症状を現す人が増え始めます。カニやエビが代表的です。食物として食べるだけではなく接触することでも症状が現れることがあります。

甲殻類アレルギーのアレルゲンとなるものはカニやエビ以外にもさまざまな食品に含まれていることが多く、接する機会が多いので、しっかりとアレルゲンとなる食べ物やアレルギーへの対策を把握しておく必要があります。

甲殻類アレルギーの原因はトロポミオシン

甲殻類アレルギーの原因は「トロポミオシン」であり、カニやエビが所有するタンパク質となります。「トロポミオシン」の特徴として加熱しても効力が失われないという点があるため、生食として食べることだけを避けて解決できるアレルギーではありません。

また、大人になるにつれて現れる症状が弱くなるというものではないので、長い期間アレルギーと付き合っていく必要があります。アレルゲンが食を通して体内に入ると症状が現れるのに数時間や数日かかるものもありますが、甲殻類アレルギーは発症までの時間が短い即時型食物アレルギーのため、アレルゲンを特定しやすいです。

甲殻類アレルギーの症状は程度がさまざま

一般的な症状

<皮膚表面に出る症状>
・発疹が出現しかゆみを伴う
・唇が腫れる
・目の周りが赤く腫れる

<粘膜に出る症状>
・口の中や口周囲にイガイガしたような違和感を感じる
・目の粘膜がかゆい、充血

<呼吸器官系に出る症状>
・鼻づまりや鼻水
・くしゃみ
・咳
・咳が止まらないゼーゼーという喘息発作
・呼吸しづらくなる

<消化器官系に出る症状>
・腹痛
・下痢
・吐き気や嘔吐

重篤なアナフィラキシー症状

アレルゲンが体内に入ったときに体を守ろうとする反応が防御反応ですが、この反応が時には過剰すぎることで血圧が下がり重篤な状態を作ってしまいます。これをアナフィラキシーショックといいます。
アナフィラキシーショックでは、めまいや意識混濁、意識喪失、呼吸抑制などを起こし、命を落としてしまう場合もあります。

食物依存性運動誘発アナフィラキシー症状

食後では通常のアレルギー症状は現れないのに、運動することでアナフィラキシー症状が現れ、ショック状態まで移行することがあります。これを「食物依存性運動誘発アナフィラキシー症状」と呼びます。

体は細胞によってできていますが、その中でも肥満細胞という細胞にはヒスタミンという酵素が存在しています。普段は胃粘膜や肝臓など多くの器官で必要な働きを行っていますが、運動することが刺激となって脂肪細胞からヒスタミンが飛び出し血管を拡張するなどのアレルギー反応を起こしてしまうのです。

運動量には関係なく、食後2時間以内に運動をする事で生じやすいものとなっています。

甲殻類アレルギー反応の対処と治療法

検査

何か食べ物を介してアレルギーのような症状が出た際には、アレルゲンを特定することが初めの治療のひとつです。

甲殻類アレルギーの有無を調べる手段は、採血と「プリックテスト」や「スクラッチテスト」という皮膚テストです。血液検査はエビやカニ、イカ、タコなどに対する特異的なIgE抗体を持っているかどうかの検査です。皮膚テストはエビとカニに限定されますが、エキスを皮膚につけることで皮膚反応が変化するかどうかでアレルギーの有無を調べます。

治療

甲殻類アレルギーをすぐに完治させる薬剤や手術などといった治療は残念ながらありません。

治療としては、食事療法としてアレルゲンを回避した食生活や、代替えできる食品などを用いて栄養面を考慮しながらアレルギーと付き合っていく方法です。自己判断ではなく医師との相談や指導の下で行っていき、アレルギーを持つ人が子供であれば給食にも配慮しなければならないので、学校側との相談や協力も必要となってきます。

二つ目はエピペン注射です。これは誤ってアレルゲンを摂取してしまった場合に使用するものです。アレルゲンを摂取してしまうことで血圧の低下や意識障害などをともなった場合にはアドレナリンが必要となります。エピペンを自己操作できるように、またどういった状態で使用するのかをしっかりと把握し緊急に備えるようにします。

緊急処置

甲殻類アレルギー反応では常に誤食対処できる準備をしておかなくてはなりません。

軽い症状の場合には、食べた物が口にある場合はかき出しで口をすすぎ、呼吸が妨げられないように安静を保持します。アナフィラキシー症状が出た場合には、エピペン注射があればすぐに使用し、救急車を呼びましょう。

甲殻類アレルギーが起こるアレルゲンは身近に多く存在する

甲殻類アレルギー反応を起こす可能性がある食物は下記となります。
・カニ
・海老
・貝
・タコ
・イカ
・イカ墨
・しらすやちりめんじゃこなどの小魚
・かまぼこなどの練り物
・海老やイカの菓子

一見甲殻類に見えないものや、加工製品もアレルゲンとなり得るため注意が必要です。

まとめ

エビやカニだけを避けることでアレルギー反応から逃れられると考えがちですが、甲殻類は私たちの身近に多い食品のひとつです。アレルギー症状は重篤になることも多いため、回避できる手段、そしてどんな体の変化にも対処できるように心がけておくことが大切です。安易に考えるよりも心の準備をしておくことが良いでしょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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