目次

はじめに

今回のテーマはメタボリックシンドロームです。

メタボとは何か、そしてメタボを改善するために必要な食習慣と運動習慣について説明していきます。

お腹周りのポッコリが気になるという方は、是非自分の普段の習慣を見直してみましょう。

メタボリックシンドローム(メタボ)とは

1)メタボリックシンドロームとは

メタボリックシンドローム(通称メタボ)とは、内臓脂肪症候群のことを言います。
体内に余分な内臓脂肪が蓄積することで、高血圧や脂質異常症、高血糖などが生じ、その結果として動脈硬化を促進させてしまい、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが確実に高まります。

2)メタボリックシンドロームの診断基準

日本におけるメタボリックシンドロームの診断基準は次の通りです。

(1)まず、腹囲が基準オーバーになっているかチェック

まず、腹囲(おへその高さで測定)が男性で85cm以上、女性で90cm以上であることが条件になります。腹囲がこの数値以上になると、体内の内臓脂肪が100cm2以上あるという目安となるためです。

これは、様々な研究結果から内臓脂肪が100cm2を超えてくると、高血圧や脂質異常などを引き起こすことが明らかになっているためです。

男女で数値が異なるのは、女性の方が、皮下脂肪が多いことを考慮しています。

(2)次に、血圧、脂質、血糖の値が基準オーバーになっているかチェック

次に、血圧、脂質(中性脂肪と善玉コレステロール)、血糖の3項目のうち、2つ以上基準をオーバーしているとメタボリックシンドロームと判定されます。1つのみの基準オーバーであれば、予備軍になります。

①高血圧の診断基準

高血圧の場合は、最高血圧(収縮期血圧)が130mmHg以上、最低血圧(拡張期血圧)が85mmHg以上という2つの数字がポイントになります。

どちらか一方でも基準オーバーになっていれば、高血圧に該当すると判定されます。

血圧は加齢、塩分の過剰摂取、肥満、喫煙、アルコールの過剰摂取、運動不足、睡眠不足、精神的ストレスなどによって上昇します。

②脂質異常症の診断基準

脂質異常症の場合は、中性脂肪と善玉コレステロール(HDL)の量に着目します。

中性脂肪が150mg/dl以上あるいは善玉コレステロールが40mg/dl未満であれば、脂質異常症と判定されます。

中性脂肪はカロリー過多、糖質や脂質の過剰摂取、アルコールの過剰摂取、運動不足などによって上昇します。

善玉コレステロールは喫煙、運動不足、野菜の摂取不足などによって低下します。

③高血糖の診断基準

高血糖の場合は、空腹時血糖値とHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)に着目します。

空腹時血糖が110mg/dl以上あるいはHbA1c5.6%以上であれば、高血糖と判定されます。空腹時血糖値は血液を採取した時点の血糖値を表すのに対して、HbA1cは過去1ヶ月から2ヶ月間における血糖値の平均値を示すものです。

血糖値は糖質や脂質の過剰摂取、運動不足、アルコールの過剰摂取、肥満、野菜や海藻類などの摂取不足などによって上昇します。

メタボになる生活習慣

ここでは、メタボリックシンドロームを招いてしまう良くない生活習慣について説明します。

以下の項目に当てはまる数が多いほど、そのリスクは高まります。

1)早食い

食べるスピードが早いと、そうでない人に比べて血糖値が急上昇しやすくなります。すると血管に負担がかかるため、動脈硬化を加速させてしまいます。

また、一般的に食べ始めてから脳内の満腹中枢が刺激されるまでに、約15分から20分はかかるとされます。

早食いの人は、満腹中枢が刺激されて満腹感を得るよりも前に食べる量が普通の人に比べて多くなるため、過食の原因となります。

2)欠食がある

朝食を抜くなどして1日2食以下である場合、その分血糖値は低くなってしまい、体は飢餓状態となります。

すると、食事を摂った際の栄養素の吸収率がより良くなり、結果として高血糖や脂質異常症を招いてしまいます。

力士は体を大きくするために、この原理を逆手にとって朝食を抜いています。それでも生活習慣病になる人が少ないのは、高い運動量があるためです。

一般的な運動量の人の場合、血糖値を一定ラインに保つために3食同じ時間に摂ることが望ましいです。
ちなみに、血糖値が低くなると(70mg/dlから90gm/dl未満)低血糖症状が現れます。

強い空腹感、冷や汗、手の震え、頭痛、イライラするなど感情が不安定になる、頭が働かないなど多様な症状が現れます。

3)栄養バランスが偏っている

偏食気味、外食が多い、丼ものなどの単品料理が多いなどの人は注意が必要です。

①糖質、タンパク質、脂質の過剰摂取

摂取した糖質は消化酵素によってグルコースまで分解されます。グルコースによって血糖値は上昇します。一定のグルコースは筋肉運動や脳など各臓器の活動に欠くことのできないものです。

しかし、グルコースが過剰になると一部はグリコーゲンという物質に変換されて肝臓に蓄えられますが、それもいっぱいになると、血液中に溢れ出したり、脂肪として臓器に蓄積して高血糖、脂質異常症、脂肪肝、動脈硬化などを招きます。

タンパク質や脂質においてもエネルギー源として使われずに余ったものは、糖質と同じような過程を辿って脂質異常症や動脈硬化などを招きます。

②ビタミン、ミネラル、食物繊維の摂取不足

糖質、タンパク質、脂質のいわゆる3大栄養素は体のエネルギー源となったり、体を作るために必要となる栄養素です。

3大栄養素が効率良く活用されるためには、野菜、果物、海藻類、きのこ類などに多く含まれるビタミンやミネラルを摂取する必要があります。

また、食物繊維には血糖値の急上昇の抑制、コレステロールの排出の促進などの働きがあり、結果として肥満や高血圧も予防・改善します。

4)過食

栄養バランスが摂れていても、食べ過ぎてしまうとメタボリックシンドロームのリスクは高まります。

早食いの人はつい食べ過ぎてしまうことがあります。

また、濃い味付けが好きな人も喉が乾くなどしてつい食べ過ぎてしまうため、注意が必要です。

5)食べた後2時間以内に寝る

夕食後すぐ寝てしまうこともメタボリックシンドロームのリスクを高めます。

食事後にある程度の活動時間があれば、筋肉や脳などで糖分を消費するため、過剰にエネルギーが体に蓄えることはありません。

しかし、寝てしまうと糖分は消費されず、脂肪として蓄えられることになります。
したがって、夕食後はできれば3時間程度空けるか、軽めに済ませるのが良いでしょう。

6)運動不足

運動不足もメタボリックシンドロームを招きます。ここで言う運動とは陸上、競技、水泳、球技といったスポーツではありません。

歩く、階段を上る、掃除をする、洗車をするといった日常生活における活動のことです。
決して激しい動作でなくても、筋肉を動かすことでマイオカインというホルモンが筋肉から分泌されます。

マイオカインには、血圧を下げる、脂肪の燃焼、血糖値を下げる、動脈硬化を抑制する、肌の若返りなど様々な作用があります。

特に上半身よりも下半身の筋肉を動かした際に分泌されるという報告があるため、ウォーキングやスクワットなどが良いでしょう。

7)お酒を飲みすぎる

適量のアルコールは動脈硬化を抑制するなど、健康に良い効果をもたらします。
しかし、過剰摂取(ビールであれば1日500ml以上です。日本酒であれば1合以上です。ワインであれば180ml以上です。)はかえって高血圧の他、脳の萎縮、食道や肝臓、膵(すい)臓、胆嚢(たんのう)などの疾患リスクを高めます。

8)たばこを吸っている

たばこに含まれるニコチンには強い血管収縮作用があるため、血圧を上昇させます。また、血管壁を傷つけたり、善玉コレステロールを低下させるため、動脈硬化を加速させます。

さらに、喫煙者はアディポネクチンというホルモンの分泌量が非喫煙者よりも少ないことが分かっています。

アディポネクチンとは、肥満細胞から分泌されるホルモンの一つで、インスリンの効き目を高めるなど体にとって良い働きをしてくれます。つまり、喫煙者は非喫煙者よりも高血糖になりやすいと言えます。

9)睡眠不足

睡眠不足になると、睡眠中に脳から分泌されるメラトニンというホルモンの分泌量が減ります。

実は、メラトニンは膵臓に作用するとインスリンの分泌量を増やし、筋肉に作用すると筋肉の糖の吸収を助けるという働きをしています。

つまり、睡眠不足になってメラトニンの分泌量が減ると、相乗効果で高血糖になりやすくなります。

また、睡眠不足になると脂肪細胞から分泌されるレプチン(食欲抑制作用)というホルモンの分泌量が減り、反対に胃からグレリン(食欲増進作用)というホルモンの分泌量が増えることが分かっています。

したがって、相乗効果で食べすぎや肥満を招きます。

メタボの改善〜食事から改善する〜

ここでは、食生活でメタボリックシンドロームを改善するコツを説明します。

1)夕食時間を今より1時間早める

睡眠時間中は日中の活動時間中に比べて糖分が消費されにくいため、①夕食は軽めにする、②夕食時間を1時間早める、③夕食後は3時間程度空けてから寝ることを心がけると良いです。

これを実践するだけで、1日に食べる内容が変わらなくても、徐々に減量できることが多いです。

2)毎日の食事に野菜、きのこ類、海藻類、魚、発酵食品を取り入れる

以下の食材にはビタミン、ミネラル、食物繊維、乳酸菌、不飽和脂肪酸などが豊富なため、メタボ解消をめざすためにはお勧めです。

①寒い時期は○○鍋で、野菜・きのこ・魚などをまとめて摂取

生野菜の状態ではなかなか1日に必要とされる350gを摂取するのが大変です。

しかし、火を通して温野菜の状態にすると意外にも多くの野菜を摂取することができます。

寄せ鍋、キムチ鍋、豆乳鍋など様々な種類の鍋の素がスーパーなどで手軽に購入できるため、活用しましょう。

②もう一品に発酵食品を取り入れる

発酵食品と言っても様々なものがありますが、特にヨーグルト、チーズ、納豆、味噌汁やキムチ、漬物などがお勧めです。ポイントは1つの食材だけに頼るのではなく、補助的に毎日の食事に取り入れることです。
 
ヨーグルトに含まれる乳酸菌は腸内環境を整えてくれます。生きた状態で腸内まで届けるためには、胃酸によって胃内のPHの低い空腹時よりも、胃酸が薄くなる(PHが高くなる)食後がお勧めです。

チーズに含まれる成分のうち約半分は脂肪ですが、その脂肪は脂肪燃焼効果などを助けるビタミンB2を多く含むものです。また、カルシウムを始めとしたミネラルの他、タンパク質やビタミンなども含まれています。

納豆には食物繊維、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれています。ただし、プリン体も多く含む食材のため、1日1パックから2パック程度に留めましょう。

味噌汁は塩分をカットするためにダシを活用して摂取するようにしましょう。また、野菜などの具材を多めにして汁を少なめにすると、野菜も効率良く摂取できます。
 
キムチや漬物などは塩分が多めのため、塩分濃度の低いものを購入するなど工夫しましょう。

3)間食はクルミやカカオ70%以上のダークチョコレートがお勧め

チョコレートやクルミなどは歯ごたえもあるため、間食として取り入れると満腹感、満足感が得られて減量期間中にはお勧めです。また、以下のような利点もあります。

①ダークチョコレート

ある調査で、高血圧気味の人にカカオの含有量が70%を超えるダークチョコレートを4週間毎日25g摂取してもらったところ、最高血圧が平均で6mmHg下がったという報告があります。
 
これは、チョコレートに含まれるカカオポリフェノールには血管壁を柔らかくする一酸化窒素を活性化させる働きがあるため、血圧が安定すると考えられています。

また、動脈硬化の予防につながる善玉コレステロールを増やす作用、血管内の炎症を抑える抗炎症作用もあるためお勧めです。

②クルミ

青魚が苦手という人にお勧めなのがクルミです。

くるみに含まれるα-リノレン酸という植物性の脂肪酸は、体内に入るとその10%から15%が血液サラサラ効果のあるオメガ3脂肪酸(EPAやDHAなど)に変わります。

クルミ約5個分で潮サバ1枚分に相当するオメガ3脂肪酸2700mgを摂取することができます。

4)食べる順番を意識する

食べる際は順序について意識するだけで減量効果が高まります。

まず、食物繊維を多く含む食品を摂取します。これは食物繊維が腸の表面を壁のように覆って、その後入ってきた糖分の吸収を穏やかにするため、血糖値の急上昇が起きにくくなります。

結果として、これだけでも動脈硬化や高血糖を防ぐことができます。

次に、ごはんなどの炭水化物よりも肉や魚などのタンパク質や脂質を摂取するようにします。炭水化物を後にすることで、小腸からインクレチンというホルモンが分泌されます。

インクレチンには糖の吸収を穏やかにしたり、膵臓からのインスリンの分泌量を高めるなどの働きがあり、血糖値の急上昇を抑えてくれます。

5)1日15mlの酢を摂取する

酢酸には血圧低下、血糖上昇の抑制、内臓脂肪の減少、脂肪合成の抑制、脂肪分解の促進といった作用があるため、メタボ解消にはお勧めです。

しかもこの効果はどんな種類の酢でも得ることができます。1日15ml程度で効果が得られます。

メタボの改善〜運動から改善する〜

ここでは、運動でメタボリックシンドロームを改善するコツを説明します。

ウォーキングやジョギング、エアロバイクなどの軽めの運動を1日30分程度毎日取り入れるのが理想です。

今回は、自宅で手軽に始められるタオルを使ったストレッチや体操、消費カロリーをアップする歩き方について紹介します。

1)タオルを使って膝裏を伸ばすストレッチ①

※タオルはフェイスタオル・手ぬぐいサイズのものを使用します。

①両足を伸ばした状態で座ります。片足を(あぐらをかくように)くの字に折りたたみます。

②伸ばしている方の足の裏に、タオルを引っ掛けます。
 このとき、足の裏の上半分のところにタオルを引っ掛けるがポイントです。

③息を吐きながら、タオルを体にゆっくりと引き寄せてきます。

④タオルを引き寄せて足先に到達したら、両手を重ねて深く折っていきます。
難しい場合は、できる所まででストップしてください。

⑤体を倒した状態で5秒間キープします。
反対側の足も行います。

これを1日1回、決して無理のない範囲で行ってください。

2)タオルを使って膝裏を伸ばすストレッチ②

※タオルはフェイスタオル・手ぬぐいサイズのものを使用します。

①片足を外側に開いた状態で座り、反対の足は(あぐらをかくように)くの字に折りたたみます。

②タオルを伸ばしている方の足に引っかけます。
 このとき、足の裏の上半分のところにタオルを引っ掛けるがポイントです。

③息を吐きながら、タオルを引いて体を横に倒していきます。
難しい場合は、できる所まででストップしてください。普段なかなか動かさない体の横を伸ばす効果があります。

④できる所で止めて、5秒間キープします。

⑤反対側にも同様に倒していき、できる所で止めて5秒間キープします。

これを1日に1回、足をかえて行います。

3)タオルを使った股関節の体操①(サイドスライド)

※タオルはフェイスタオル・手ぬぐいサイズのものを使用します。痛みのない範囲で行ってください。

①タオルの両端に両足を乗せて立ちます。

②少し前にかかんで、テーブルなど丈夫な物の上に手を乗せて体重をかけます。

③そのまま両足を閉じたり、開いたりを繰り返します。

1日に10往復程度行うことで股関節と太ももの内側の筋肉を鍛える効果があります。

4)タオルを使った股関節の体操②(ハの字体操)

※タオルはフェイスタオル・手ぬぐいサイズのものを使用します。痛みのない範囲で行ってください。

①転倒防止のためにタオルの上に立ち、(両手をテーブルなどの丈夫な物について)手で体重を支えます。
 このとき、足は肩幅より少し広めにします。

②両足を同時に内側(ハの字)・外側(逆のハの字)と回すようにひねります。

5)大股で歩く

いつもより少し大股で歩くだけで、ふくらはぎや太ももの筋肉に加えてお尻の筋肉も効率良く使うことができます。

つまり、ただ歩くだけで消費カロリーがアップします。

また、股関節の柔軟性身体が高い人の方が歩幅は大きくなるということが言われているため、ストレッチと並行して実践すると良いでしょう。

まとめ

みなさんメタボの基準値、メタボの原因、メタボ解消の食事・運動について理解していただけたでしょうか。

まずメタボを解消するためにメタボを引き起こす9つの生活習慣をしないよう意識し、さらに余力があれば本記事でご紹介した食事法や運動法も取り入れていきましょう。

またダイエットを行う際に過度なカロリー制限や継続の厳しい運動を行なってもかえって逆効果なので自分のペースで無理をせずに頑張っていきましょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

関連する記事

関連するキーワード

著者