はじめに

「自分は姿勢がいい!」と胸を張って言える人はどのくらいいるでしょうか。実はかなり多くの人が姿勢の悪さに気が付きながら、なかなか姿勢を改善できずにいます。では、なぜ悪い姿勢になってしまうのでしょうか。悪い姿勢を治す方法や、正しい姿勢の取り方などについて詳しくご紹介します。

良い姿勢とは

良い姿勢とは、正しい背骨の形をした姿勢のことを指します。背骨は生理的にS字カーブを描いていますが、悪い姿勢の人は、このS字カーブが大きすぎたりゆがんだりしています。そのため、背骨が正しい位置にあることが良い姿勢をとるために重要だと言えます。また正しい姿勢は立っているとき・座っているときによっても異なります。

立っているとき

壁に背中を付けて立った時に、踵・お尻・肩甲骨・頭が壁につく状態です。また横から見たときに外踝・大転子・肩の中央・耳の穴が一直線になります。鏡でチェックしてみたり、実際に壁に背中をつけて立ってみるとわかりやすいです。

座っているとき

椅子に深く腰掛けたときに、お尻と背中が背もたれにつくように一直線になる状態です。また横から見たときに大転子・肩の中央・耳の穴が一直線になります。実際に椅子に深く腰掛けて、鏡などでチェックしてみましょう。
良い姿勢は簡単にチェックできるので、時間があるときにでも自分の姿勢を一度チェックするとよいでしょう。

悪い姿勢とは

悪い姿勢とは、正しい背骨のS字カーブが維持されていない状態のことをさします。そのため、顔やあごだけが前に突き出していたり、腰が沿っていたり、左右に傾いているなどといった姿勢は悪い姿勢といえます。それでは悪い姿勢の具体例を挙げてみます。

猫背

猫背と一言で言っても、大きく分けて3種類あります。首が曲がる「首猫背」、背中が曲がる「背中猫背」、腰が曲がる「腰猫背」です。いずれにしても生理的なS字カーブが崩れてしまうことが原因です。S字カーブが崩れると身体の様々な部分に負担がかかり、肩こりや腰痛の原因になりやすくなります。また内臓も圧迫されることがあり、呼吸器や消化器のはたらきが鈍くなり、運動機能の低下や便秘などの原因になることもあります。

反り腰

腰が大きく前に沿ってしまうのが反り腰です。ハイヒールなどをはく女性に多く見られます。反り腰になると腰が前に出るために、ぽっこりお腹になってしまうのが特徴です。また反り腰になることで骨盤にゆがみが生じ、骨盤周りの血行やリンパの流れが悪くなることがあります。こうなると下半身の血液やリンパ液が心臓に戻りにくくなり、結果下半身に老廃物がたまりやすい下半身太りの原因となります。また、腰が反っているために仰向けで寝るのがつらくなる場合もあり、睡眠障害や疲労などにつながることもあります。

左右に偏りが生じる

背骨が前後ではなく、左右に偏りが生じる場合も悪い姿勢といえます。身体や骨格のゆがみの原因にもなり、バランスがとりにくくなることも問題です。常にどちらかに体重が偏った状態になるため、片側に疲れがたまりやすくなったり、肩こりなどの原因にもなります。

悪い姿勢になる原因

悪い姿勢になってしまう原因としては、長時間同じ体勢をとっていることがあげられます。身体の筋肉が同じ体勢で静止し続けると、余計な緊張がかかります。これにより筋肉は凝り固まってしまい、悪い姿勢が習慣になってしまうのです。

また長時間のデスクワークやパソコンの操作などにより、つい頭や首だけを前に突き出すようにして座っていないでしょうか?こういった体勢を長時間とってしまうことも、姿勢が悪くなる原因です。

また、重心をどちらかにして立つ、荷物をいつも同じ方で持つ、頬杖をつく、足を組んで座る、横座りなども、身体がゆがみ、悪い姿勢になってしまう原因となります。

悪い姿勢を治す方法とは

まずは正しい姿勢を意識することが大切です。悪い姿勢が習慣になっている人は、一度正しい姿勢をとったとしても、知らず知らずのうちにまた悪い姿勢になっていることが多いようです。そのため、まずは姿勢を意識することから始めましょう。気が付いたときに壁や椅子を利用して姿勢チェックをしてみたり、鏡を見るなどして正しい姿勢をこころがけましょう。

また、正しい姿勢をとるには肩甲骨を意識的に動かすと効果的です。悪い姿勢で悩む人の多くは、首や頭が前に出る首猫背であったり、肩が丸まってしまっています。それを矯正するには肩甲骨を回して肩や首周りの凝り固まった筋肉をほぐしてあげることが大切です。

反り腰で悩んでいる方は、歩くときに十分に足が上がっていない可能性があります。そのため、太ももに意識して歩くようにすると効果的です。また背中を丸めるストレッチなども反った腰には効果がみられます。
左右に偏りのある場合は、荷物を持つ手をいつもと反対側で持つようにしたり、リュックサックのように両側で持つタイプのカバンに変えたりすることも有効です。また、長時間同じ姿勢でいることも偏りが生じやすくなる原因となるため、1時間に1回程度体勢を変えるようにしましょう。

おわりに

日ごろ何気なく過ごしていると、つい悪い姿勢になりがちです。しかし悪い姿勢は見た目が悪くなるだけでなく、身体のあらゆる部分に負担がかかり、肩こりや腰痛などの原因になります。また、骨格や骨盤のゆがみにもつながり、血流が滞りやすくなったり、基礎代謝の低下、さらには老廃物がたまりやすく、肥満の原因になることもあります。このように悪い姿勢をとることはデメリットが多いと言えます。

日ごろから正しい姿勢を意識して、正しいS字カーブを保てるようにしましょう。そのためには長時間同じ体勢をとらないことや、自分に合ったストレッチの方法を見つけることが、正しい姿勢をとることにつながります。正しい姿勢で身体にも優しい生活を送りましょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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