うつ病とはどんな病気なのか?

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ケアクル編集部(以下、ケアクル):様々なメディアで「新卒うつ」「SNSうつ」「夏うつ」「隠れうつ」など、「うつ」というキーワードを目にすることがとても多くなりましたよね。

米倉まな(以下、米倉):そうですね。昔よりも「うつ」という単語に関しては身近になったように感じます。 以前は検査をしてもなにも出ない場合、気のせいと言われていました。しかし、最近では「自律神経失調症」「うつ」などと診断されるケースも増えてきました。

ケアクル:まなさんが考える「うつ」とはどんな病気でしょうか?

米倉:人よりちょっと色んな事に気がついてしまう人が頑張りすぎて、これ以上頑張るなってSOS出している体の状態だと思っています。

ケアクル:実際に「うつ」とは、どういう症状なのでしょうか?

米倉:「うつ」とは、憂うつである、気分が落ちこんでいるなどと表現される症状です。気分が重い、沈む、悲しい、イライラする、眠れないなど、感情症状が出るとともに、胃の不快感、動悸、めまいなどの身体症状として出ることもあります。

いずれにしても症状が2週間以上継続し、検査をして何も見つからない場合には「うつ病」を疑うことになるでしょう。

ケアクル:まなさんは鍼灸師として「うつ」に悩んでいる方を施術する機会が多いと聞きました。実際に、「うつ」の患者様が鍼灸治療を受けるケースは増えているのでしょうか?

米倉:はい、とても増えていると感じています。当院を訪れる患者さんは、「うつ病」や「めまい」などのキーワード検索をし、ホームページを見つけてきてくれる方が多いです。

鍼灸師は検査や診断ができませんので、数字で診断をしないうつ病はとても相性が良いと感じています。

ケアクル:なるほど。「うつ」と聞くと、心療内科での治療を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、診療内科の受診はハードルが高く、悩んでいてもなかなか足を運ぶことができない方が多いという印象なのですが…

米倉:そうですね、当院でも心療内科に通われてる方もいますが、内科の先生から「原因が見つからないから心療内科に行ってくれ」と言われたけど、心療内科に抵抗があり、最終的に当院に来てくれる方も多いです。

例えば、めまいがある場合には内科、耳鼻科などを何件かドクターショッピングした結果、どうしても安定剤を飲みたくないという理由で、当院の門をたたく方もみえますね。

ただ、病院に行くことはとても大事なことです。鍼灸は、器質的には何もないよ、と太鼓判を押してもらった方に来ていただく方が良いと私は考えています。

鍼灸治療を受けるうつ患者が増えている?

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ケアクル:また、一方で、「うつ」という自覚がなく、でもツライ毎日を送っている方もいるのですよね?

米倉:実際にいらっしゃいます。頭痛や肩こりなどの症状で治療院に来るのですが、実際にお話ししてみると「うつ」に近い状態のお客様がけっこうみえますね。鍼灸を受けるうちにずっとあった肩こりが治って、あれは産後うつだったんだ!と気づかれた方もいました。

ケアクル:それは、とても興味深いです。では、なぜ、「うつ」に鍼灸治療が有効なのか、簡単に教えていただけますか?

米倉:はい。鍼灸をする事によって、体は刺激を受けて脳に向かって刺激が伝わります。その途中の視床下部と言う部位でオキシトシンと呼ばれるホルモンを放出します。

このホルモンは抗ストレス作用や副交感神経を優位にするため、緊張しているからだをやわらげる事ができるのです。これは、鍼灸の効果の一例です。他にもたくさん理由があるんですよ。

元うつ病鍼灸師として出来ること

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ケアクル:とても分かりやすいです。なぜ、まなさんは「うつ」の患者様を多く施術することに至ったのですか?

米倉:実は、わたし自身が元うつの鍼灸師なのです。

私は18歳から8年ほど、うつ、パニック障害の患者でした。良くなったり悪くなったりを繰り返し、ずっと不安を抱えながら生きていました。あることがきっかけでうつ病から1年半抜け出せなくなり、ほぼ寝たきり、仕事も出来ない状態になってしまいました。それを救ってくれたのが鍼灸治療でした。その当時抱えていた不安や経験が、今は誰かの勇気になっているのかなと思うとやりがいを感じます。

ケアクル:なるほど。まな先生自身の体験があっての施術なのですね。 しかし、元うつ患者と公表することに対して不安はありませんでしたか?

米倉:実は最初はありました。どのように見られるのかな、変に思われるのかな、なんて考えていましたが、公表してからは怖いと思う人は去って行き(笑)理解を示してくれる方がどんどん集まってくれる優しい世界になりました。

今となっては、私は元うつ患者として、現在「うつ」に悩んでいる患者様の気持ちもわかりますし、鍼灸治療が効果的だという実体験を踏まえて施術をしています。学生の時に全ての科目において、「なんだ、私がこういう症状になってたのは当たり前の事なんじゃない!」という目線で勉強をしていたので、「うつ」になってから「鍼灸師」を目指すという順番でよかったと感じています。

それを踏まえて患者さんと対話が出来るので、患者さんがその時欲しい言葉、思っている感情、その答えを全て先回りして答える事が可能なのです。

ケアクル:それは、まな先生にしか出来ない施術かもしれませんね。

米倉:ありがとうございます。ただ、鍼灸治療は「うつ」だけではなく、調子が悪く病院に行ったけど、原因不明でたらいまわしにされるような症状や精神疾患にはとても有効です。前にもお話した通り、鍼灸はストレス耐性を上げる事や、リラックス効果があります。その他にも首の凝りからうつの様な症状を起こしている方もみえますね。

ですので、現在「うつ」に悩んでいる方、ご家族や友人が「うつ」に悩んでいる方、病院迷子になっている方には、ぜひ一度軽い気持ちで鍼灸院を訪ねてもらいたいと思っています。

精神的な分野で鍼灸が有効だと感じてもらいたい

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ケアクル:とても明るく、元うつ患者だったとは全く想像もできないのですが…。これから、まな先生は鍼灸師として、どんな活動をしていきたいと考えていますか?

米倉:地元四日市での心療内科の新規患者さんは2か月~3か月待ちとの事で、休職期間が終わるまでに受診が難しくなるケースがあるそうです。

もっと精神的な分野で鍼灸が有効だということを患者さんに知っていただきたい。その為の啓発活動はもちろんの事、それに対応できる鍼灸師の教育を来年から初めて行きたいと考えています。

現在、私一人での限界を様々な箇所で感じています。鍼灸の先生にも協力いただきながら、もっと沢山の患者さんが楽しく生きていける助けになりたいと思います。

ケアクル:ありがとうございました。

プロフィール

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プロフィール:

米倉まな:はり師、きゅう師。まな鍼灸堂院長
日本良導絡自律神経学会 本部理事、日本健康創造研究会 世話役
高校卒業後入社半年頃から体調を壊し、うつ病、パニック障害、自律神経失調症を併発。
投薬療法を始め8年が過ぎた頃に鍼灸と出会い、1日30錠以上になっていた薬を断薬。
なぜ自分に鍼灸が効いたのかを知りたく、鍼灸専門学校に入学。
整骨院・病院勤務後に自身のうつ病経験を活かし、まな鍼灸堂開院。メンタル鍼灸を掲げ、患者に寄り添った治療を行っている。

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