はじめに

ダイエットや体幹を鍛えるトレーニングとして『ドローイン』という言葉を耳にすることがあります。
ドローインには似たようなエクササイズが多数あり、きちんとポイントをおさえられていないと効果がなくなってしまいます。
そこで、今回は『ドローイン』について正しいやり方やその効果について説明します。

ドローインとは

『ドローイン』は『draw in』と書き、直訳すると『引っ込める』という意味になります。
簡単に言うと、ドローインエクササイズはお腹を引っ込めるエクササイズになります。
お腹を引っ込めるというとどこの力を使っているのかも分からず、それが果たしてダイエットや健康に効果があるのか疑いたくなってしまいます。
しかし、ドローインではとても大切な『腹横筋』という筋肉を使っているのです。

腹横筋とは

『腹横筋』は腹筋群の一つで、腹直筋(最も浅い部分でシックスパックとして表面に見える筋肉)や腹斜筋(筋肉量の多い方では脇腹あたりに斜めの走行で見えます)よりも深い位置にある筋肉です。
肋骨と骨盤の間にあり、帯やコルセットのように腹部から腰背部に巻き付くような走行をしています。

腹横筋の働き

肋骨と骨盤の間には、背部の脊柱(背骨)以外骨がありません。
ですから、体の前面や側面をしっかりと筋肉で支えていなければ腰がグラグラとしてしまいます。
腹横筋が収縮すると、帯やコルセットがギュッとしまったようになり、お腹が引っ込みます。
それとともに腰がグラグラしないようにしっかりと支えてくれます。
このような理由で、腹横筋がしっかりと働くとウエストが細くなり、ダイエット効果につながるとともに体幹がしっかりと安定するのです。

ドローインの正しいやり方

ドローインのやり方は基本的に同じですが、行うときの体勢やエクササイズの習得段階によって特徴や注意点があります。

仰向けに寝てドローイン

ドローインの最も基本的なやり方です。
仰向けに寝ることで体の余分な力を抜くことができ、腹横筋の収縮に意識を集中することができます。
また、猫背や反り腰など姿勢の悪い方でも仰向けに寝ることで姿勢の影響を排除することができ、腹横筋の力が入りやすい良姿勢をとることができます。

1. 仰向けに寝て両膝を立て体の力を抜く
2. 両手は体の横の床面に置くか、下腹部に軽くあてるように置く
3. ゆっくりと息を吸いながらお腹をふくらませる(3~5秒)
4. 吸ったときよりもゆっくり長く息を吐きながらお腹をへこませる(5~10秒)
5. 3、4のお腹の動きを協調させた呼吸を繰り返す
6. お腹の上に手を乗せているときは、お腹の動きを手で感じながら行う

直立してドローイン

仰向けに比べて良い姿勢を維持しながらドローインを行うことが難しくなりますが、より実践的な形になります。

1. 胸を張り、腰が反り過ぎず丸まり過ぎないまっすぐな姿勢をとる
2. 手は体の横に楽に添えるか、下腹部に軽くあてるように置く
3. 仰向けのドローインの3~6を繰り返す
4. 呼吸やお腹の動きに伴って背骨が動かないように注意する

ドローインを保持する

仰向けや直立のドローインができるようになってきたら、呼吸に伴うドローインではなく、常時ドローインした状態をキープしながら呼吸ができるようにしていきます。
仰向けでも直立でもよいので、上で行った方法で呼気とともにドローインができたらそのままお腹を引っ込めたままで呼吸を続けます。
お腹を引っ込めたまま呼吸を行うので、腹式呼吸(お腹が動く呼吸)はできないことになり、胸式呼吸(胸郭が動く呼吸)を行うことになります。
電車に乗って立っている最中などの時間を有効活用するとよいでしょう。

動きを伴うドローイン、ながらドローイン

呼吸とは無関係にドローインの状態を保持できるようになってきたら、静止状態ではなく、動く中でドローインの状態をキープできるようにしていきます。
最初は料理で台所に立っているときや行列に並んでいるとき、さらには掃除機をかけている間など少しずつ動きの大きいものでもドローインの状態を保てるようになるとよいでしょう。
そうすることで、体幹が安定した状態で動くことができるようになってきます。
無意識にドローインしたまま動けるようになってきたら、完全にドローインを習得したといってよいでしょう。

ドローインのダメなやり方

ドローインはお腹を引っ込めるという単純な動作にはなりますが、ポイントを間違えてしまうと効果がなくなってしまいます。
よくある間違えの一つが力みすぎです。
一生懸命お腹を引っ込めようとしすぎると、全身に力が入り固くなってしまいます。
肩をすくめてしまっていたり、首の筋が浮きだっていたり、思わず呼吸を止めてしまっているようでは力が入りすぎのサインです。
お腹が引っ込んでいることを感じながら体の余分な力を抜き、ゆっくりと落ち着いた呼吸ができる状態が正しいドローインになりますので、注意しましょう。
また、ドローインに伴う吸気と呼気が反対になってしまう方も多くおられるようです。
息を吸うときにはお腹を膨らめて、吐くときに引っ込めるということを再度確認しながら行いましょう。

ドローインの効果

ウエストがサイズダウンする

ドローインでお腹を引っ込めることを続けていくと、無意識に腹横筋が収縮した状態を維持できるようになってきます。
そうすると、常に帯やコルセットをしめたようになり、しまったウエストラインがでてきます。

体幹が安定する

腹横筋は肋骨部と骨盤をつなぐ働きをする筋肉です。
これをしっかりと働かせることで、体の胴体部分である体幹がぐらぐらすることなく安定するので、俊敏な動きが可能になったり、ぶつかられても崩れない力強い体を作ることができます。
すなわち、スポーツ競技でのパフォーマンスは向上し、けがをしにくい体を作ることができるのです。

姿勢が改善する

腹横筋の抜けただらっとした姿勢をしていると、自然に骨盤が後傾し、腰がまるまった猫背の姿勢になってしまいます。
一方、腹横筋をしっかりと入れると、骨盤が起き、腰が伸びた良い姿勢になりやすくなります。

腰痛が改善する

分かりやすく例えると腹横筋を鍛えるということは、自前のコルセットを装着することになります。
体幹が安定することや姿勢が改善することで腰の周りの筋肉や関節への負担が減ります。
その結果、ぎっくり腰や椎間板ヘルニア、慢性腰痛症など腰痛全般の症状を軽減することにもつながります。

ダイエット効果につながる

ドローインが無意識にできるようになるところまで習得されると、腹横筋が常に収縮している状態になります。
体幹を安定させる腹横筋がしっかりと入っていると、同じ動きが俊敏にできたり力が入りやすかったりします。
その結果、消費カロリーが増加し、代謝も向上します。
少しずつではありますが、長期間でみると大きなダイエット効果につながることもあります。

おわりに

今回はドローインの正しい方法や効果についてご紹介しました。
他のエクササイズや筋トレに比べて動きも少ないため、正しくできているか分かりにくいかもしれません。
一度身につけば、いつでもどこでも自分でできる手軽かつ効果的なエクササイズです。もし上手くできているか自信のない場合には、指導者のいるトレーニングジムや理学療法士のいる病院にて指導を受けることをおすすめします。

参考文献・参照
https://kintorecamp.com/draw-in/#i-3 ドローインの効果とやり方
https://dietbi.com/drawindiet-1075.html ドローインのダイエット効果は正しいやり方と呼吸法で!

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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