はじめに

美容鍼とは

インターネットで検索すると「美容鍼灸」と「美容鍼」の2つの言葉が同様に出てきます。

鍼」は施術するには鍼灸師か医師の国家資格が必要です。


鍼灸師は「鍼」と「お灸」を施術する資格ですので、「美容鍼灸」と「美容鍼」どちらでも正しい用語ですが、施術内容が前者は「鍼」と「お灸」を扱い、後者は「鍼」のみです。


「美容鍼」とは顔にリストアップを目的とした「鍼」を刺す事をイメージしがちですが、顔だけでなく美容のために身体に鍼の施術を受ける事を「美容鍼」と言います。

今回は主に顔に施術をする「美容鍼」についてメカニズムと期待できる効果や注意点を説明します。

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美容鍼のメカニズム

東洋医学には西洋医学にない、「ツボ」という認識があります。ツボを刺激すると、その周辺の組織が刺激され、代謝が活発になると言われています。美容鍼では、顔のツボに鍼を打ち、そのツボを刺激し代謝を活性化させることにより、たるみやしわをなくすといわれています。フォトフェイシャルや高周波・超音波治療の作用とよく似ています。

人間の皮膚は大まかに表皮、真皮、皮下組織の3層に分かれているのですが、鍼は表皮から真皮へ刺し入れます。真皮には毛細血管やコラーゲン繊維やヒアルロン酸、免疫機能や炎症に関係する肥満細胞などが存在します。これらは、皮膚の健康を維持するために必要で大切なものです。

シワやたるみは、この真皮に存在するコラーゲンやエラスチン(弾力線維)などが少なくなり発生します。そのために、鍼を真皮まで差し入れて、新陳代謝を活発にして、コラーゲンやエラスチン(弾力線維)などの間質組織の産生を促進させてシワやたるみを改善させるのです。

美容鍼で皮膚のターンオーバーを改善

皮膚のターンオーバーとは

肌の新陳代謝によって肌の組織が入れ替わる周期をターンオーバーと言います。
皮膚は「表皮」「真皮」「皮下組織」から成り、さらに表皮は一番内側から「基底層(きていそう)」「有棘層(ゆうきょくそう)」「顆粒層(かりゅうそう)」「角質層」と4層構造になっています。基底層から生まれた細胞は上に上にと押し上げられ形を変えながら有棘層、顆粒層、角質層へと上がっていきます。そして最後には細胞が死んだ状態になり、自然にはがれ落ちます。

このようにして皆さんから見える皮膚の表皮は絶えず入れ替わっています。この表皮の入れ替わりがターンオーバーです。この表皮の入れ替わりが上手くされていると皮膚はいつもきれいで美しくいられます。

ターンオーバーが乱れると?

ターンオーバーの速度は部位によって異なりますが、約28~56日程度と言われています。手足より顔のほうがターンオーバーが早いです。また年齢によりターンオーバーの周期が変わります。一般的には30~40代になると45日程度と遅くなります。表皮の入れ替えが悪くなると、古い表皮が皮膚に残るので肌がくすむ、シミが増えた、濃くなったなどの症状が現れます。これらは、ターンオーバーの機能が低下しているサインです。

ターンオーバーは早くても遅くても肌トラブルの原因となります。ターンオーバーが遅い場合は角質が溜まりくすんだり、薄皮を重ねたようなごわつきが出てきます。また傷跡も治りにくくなります。逆に顔を洗いすぎたり、角質ケアばかりしているとターンオーバーが早まってしまいます。ターンオーバーが早く乱れた肌は、未熟な細胞のまま表面に上がっている状態ですので、水分を保持することが難しく乾燥します。

美容鍼をすると、肌のターンオーバーが早くなるという認識もありますが、実際は肌のターンオーバーを正常にするため、ターンオーバーが早い場合でも遅い場合でも、どちらの状態でも利用可能です。

美容鍼を受ける頻度

美容鍼を受ける頻度は各自でまったく違います。例えば、睡眠時間が短く、食生活が乱れている人と、睡眠時間も適度に取り、食生活にも気を付けている人どちらの方が、肌の状態が良くなりやすいと思いますか?もちろん後者の方です。こういった体の状態によって美容鍼を受けるべき頻度も変わってくるのです。

ただ、基本的には最初の1ヶ月程度は週に1回程度、施術を受ける事をお勧めします。また、数回施術受ける事で鍼灸師が肌の状態をみて鍼の刺し方、場所などを変えたりしてくれるので、回数を重ねるごとに良い変化を出しやすくなります。そのため、施術をしてくれる鍼灸師の先生とよく相談して頻度を決める事をお勧めします。

美容鍼の注意点

ここでは注意点として、効果が悪い場合や問題が起きた方のケースについて説明していきます。

「美容鍼で内出血ができた。」

美容鍼をする事で内出血が後から出てくるケースがまれにあります。内出血が起こるメカニズムは、施術で鍼により微妙に血管内から出血してしまったためです。その血は静脈で吸収されます。静脈は皮下に存在するので、吸収力が弱い人は内出血として現れたりします。内出血は必ず消えますので、心配はいりません。

施術に使用する鍼にはいくつか種類があり、通常は長さ3cm程、太さ0.15mm前後の鍼がよく使われますが、細いほど痛みや内出血のリスクは少なくなります。ほかにも「タッチ鍼」「ローラー鍼」「シール鍼」などの刺された痛みが殆ど感じない鍼の種類もあります。もし、内出血が現れたら鍼灸師の先生に相談してください。

「なかなか効果が出ない。」

美容で最も重要なのが食事や日常生活のバランスの良さです。そこで、そのバランスにプラスマイナスのポイントを自分でつけてみることもいいでしょう。例えば、先ほども例に上げましたが、体の基礎的状態により効果の出方が変わってきます。生活習慣が悪くて体の点数が-3、そこに「美容鍼」で+1を加えてもまだ体の状態は-2です。

美容鍼の施術後に効果を実感したいなら、食事面では砂糖やパンなど糖質を過剰に取りすぎず、良質なたんぱく質や不飽和脂肪酸(善玉コレステロールに変化するオイル)であるオリーブオイルをしっかりと摂取したり、バターなどの飽和脂肪酸(悪玉コレステロールに代わりやすい)であるバターなどを避ける生活を心がけるようにしましょう。そうすることで体の基礎的状態が良くなれば美容鍼のプラスの効果を実感しやすくなります。

終わりに

美容鍼の効果について知っていただけましたか?

美容鍼は肌のターンオーバー周期を正常に戻して、美容効果をもたらしてくれます。

注意点も把握した上で、生活習慣の改善と併せて美容鍼を受けてみてはいかがですか?

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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