はじめに

近年では、喫煙が身体に与える影響から、禁煙することが推奨される機会が増えました。昔はどこでも吸えたタバコですが、今やどこへ行っても禁煙や分煙が当たり前です。また、タバコのポイ捨てに対しても厳しくなり、路上喫煙禁止条例という法律が設けられるほどとなりました。

また、成人男女の喫煙率は、昭和40年以降のピーク時の 83.7%(昭和41年)と比較すると、現在の平均喫煙率は28.2%と大幅に減少していることがわかります。これほどに禁煙が推奨されるのはわけがあるのです。

禁煙の効果・メリット

禁煙による効果やメリットとしては主に次の5つがあげられます。

精神的に精神的に落ち着きやすくなる

タバコには依存性があるため、やめたくてもやめられないという人が多くいます。ですが禁煙することで、タバコに依存することがなくなり精神的にも落ち着くようになります。

タバコを吸っていると、他のことをしていても、気が付いたらタバコのことを考えていたりすることがありませんか?これがタバコの依存性です。そのため、タバコが吸えないとイライラしたり、街へ出かけても常に喫煙所の場所を把握しなければ落ち着かなくなります。

ですが、禁煙することでこういった依存から逃れることができるのです。

ごはんがおいしく食べられる

タバコは実は舌にもダメージを与えることが分かっています。そのため、タバコを吸い始めると、味覚が落ちることがあります。そのため、タバコを吸い始めてからごはんがおいしくなくなったと感じる人は多いのではないでしょうか。禁煙することで舌へのダメージも軽減されるため、ごはんをおいしく食べられるようになるのです。

息切れすることが減る

タバコを吸っている人には、動悸や息切れをしやすいという人が多く見られます。これもタバコの有害物質によるものなのです。そのため、禁煙することで動悸や息切れなどの症状を改善し、階段の上り下りが楽になったり、身体が軽くなったように感じるようになります。

節約になる

禁煙すると金銭的な面でも大きなメリットがあります。今やタバコは1箱450円前後するものが多く見られます。また安いものでも1箱300円程度するため、これを毎日1箱ずつ吸い続けると、ひと月10000円前後~15000円ほどかかる計算になります。この出費がなくなるだけでもかなり大きなメリットです。

周りの人に副流煙を吸わせなくて済むようになる

タバコの煙から出る副流煙には本人の吸った煙である主流煙よりも有害物質が多く含まれています。そのため、タバコを吸うと自分だけでなく、周りの人にまで害を及ぼすことになるのです。禁煙することによって、こういった周りへの悪影響もなくすことができるので、これは周りの人にとってもうれしいメリットとなります。

タバコの害

タバコには有害物質が多く含まれると紹介してきましたが、中でも最も身体に悪い影響を及ぼしているのは「ニコチン」、「タール」、「一酸化炭素」の3つです。

ニコチンによる害

ニコチンは交感神経を刺激するために、血圧が上がり、脈拍が増えます。さらにニコチンは副腎を刺激して血圧をあげるホルモンを分泌させます。これらにより高血圧症や、心臓に負担をかけることにつながります。動悸や息切れなどの症状が出るのはこのためです。

また長期的にタバコを吸い続けることで、動脈硬化を進行させ、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞につながることもあります。

タールによる害

タールとは、タバコを吸ったときにフィルターや歯を茶色くする、いわゆるヤニのことです。タールは主にニコチンを肺に届ける役割を担っていますが、タールには実に数百種類もの発がん性物質が含まれています。そのため、タバコを吸い続けていることで発がんのリスクが高まります。

一酸化炭素による害

一酸化炭素は酸素を運ぶためのヘモグロビンと結合しやすいことで知られていますが、それは酸素がヘモグロビンと結合するときの約200~300倍とされています。このため、血中の一酸化炭素の量が増えると、ヘモグロビンの多くは一酸化炭素と結合してしまい、酸素不足になります。これはつまり全身に酸素がいきわたりにくくなるため、慢性的な酸素不足や心臓に負担をかけることになります。

煙草がやめられない理由

タバコがやめられない理由は、ずばりニコチン依存症になるからです。

タバコにはニコチンという物質が含まれていますが、このニコチンは脳にあるニコチン受容体と結合して、快感を感じさせる「ドパミン」という物質が大量に分泌させます。そのため、「タバコを吸うと気持ちいい」と快感を得られるようになり、また吸いたくなってしまうのです。

ですがこのニコチンが切れてくると、反対にイライラする、集中できなくなる、落ち着きがなくなるなどの離脱症状が現れることがあります。こうなると、またこれらの症状を解消するためにタバコを吸う、という悪循環に陥ってしまうのです。タバコがやめられないのはこうした理由があるからなのです。

禁煙グッズ

近年では多くの禁煙グッズが販売されているので、禁煙するためにはこれらを利用することも手段の1つです。

加熱式タバコ

近年話題となっているのが、火を使わない「加熱式タバコ」です。これはタバコ葉を燃やさないことが大きな特徴で、煙や灰を出しません。タバコ葉を燃やさずにニコチンを発生させることで、タールなどの有害物質を9割ほど削減できます。

禁煙補助薬(ニコチネルTTS)

禁煙補助薬とは、適度のニコチンを補うことで急なニコチン切れによる離脱症状などを抑えるはたらきをします。また、このニコチンの量を徐々に減らしていくことで、徐々に身体をニコチンのない状態にならしていく目的としても使用します。一般的にはガムのタイプと貼るタイプのものがあり、自分に合ったものを使用します。

禁煙飴

禁煙飴には松葉エキスという成分が配合されているものが多く、口さみしいときに手軽に口に入れられるのが特徴です。タバコをまずいと感じさせる効果が期待できるとされています。まずは少しずつ本数を減らしていきたいという方にはお勧めです。

まとめ

よく耳にするように、タバコは百害あって一利なしです。ですが、やめられないのは個人の意思の問題だけではなく、タバコに依存性があることが大きく関係しています。そのため、タバコによる害を理解しつつ、禁煙グッズなどを生活に取り入れて禁煙にチャレンジしてみてください。そうすることで自分の身体をはじめ、周りの人の健康にもつながります。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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