はじめに

歓迎会や送別会などの飲み会で飲みすぎたり、食べ過ぎたりした日や生活や仕事でのストレスによって胃には多くの負担がかかり、胃痛、胸焼け、食欲がない、膨満感など様々な症状が起こります。
そんな時に服用するのが胃薬ですが、現在では様々な種類の胃薬が販売されています、どの薬がどんな症状に効くのか解説してゆきます。

胃薬の分類

胃薬は効き方や症状によって以下のように大別されます。

1.消化管運動改善薬
2.攻撃因子抑制薬
3.防御因子増強薬

消化管運動改善薬

胃もたれや腹部膨満感、食欲不振など胃や大腸の働きが低下している際に用いられる薬です。
また機能性ディスペプシアと呼ばれる胃そのものに潰瘍などが無く、ストレスなどにより胃の症状が起こっている場合にはこの消化管運動改善薬が最初に用いられます。
胃への働き方によって以下のように分類されています。

アセチルコリン作動薬

アセチルコリンと呼ばれる体内物質は胃の消化に必要な胃酸の分泌を促進させたり、胃や腸の食べ物を押し出す運動を促進させる働きがあります。アセチルコリン作動薬はアセチルコリンと同じ働きをする薬で機能性ディスペプシアによる腹部膨満感や胸焼けなどに効きます。

ドパミン拮抗薬

体内のアセチルコリンの放出を促進させる効果があります。また吐き気止めとしての効果があります。

オピアト作動薬

胃や腸の動きが低下している場合にはその働きを促進させて、逆に働きが活発化している場合にはその働きを低下させるといった胃や腸の運動を調整する作用があります。
胃の働きが低下している機能性ディスペプシアの症状にはもちろんのこと、ストレスなどで腹痛や下痢が起こる過敏性腸症候群にも効果があります。
市販薬としてドラッグストアなどで購入できます。

セロトニン作動薬

アセチルコリンと同様の作用を示す薬剤です。
また大腸のX線検査を行う際にX線画像を鮮明に映し出す為に使用されることもあります。

消化酵素

ヒトの消化酵素と同じあるいは似せて製剤化したもので消化を助ける目的で使用されます。食後の膨満感に用いられることが多いです、牛や豚のタンパク質を原材料に使っている場合もあるのでこれらに対してアレルギーを持っている方は注意が必要です。

その他の消化管運動促進薬

漢方薬や消化酵素などを配合した健胃薬があります。

胃の攻撃因子と防御因子とは?

胃痛の原因となる胃潰瘍などは攻撃因子と防御因子のバランスが崩れることにより起こります。
攻撃因子にはアルコールやコーヒー、胃を荒らす副作用のある痛み止めなどの外的因子と胃酸やペプシンやピロリ菌などの内的要因に分けられます。
防御因子には胃を胃酸などから守る粘膜や粘液などがあります。
暴飲暴食などにより胃酸が多くなることがあり、これを胃酸過多と呼びます。
胃から酸っぱいものが上がってくる逆流性食道炎も胃酸過多によって起こされます。
防御因子は加齢やストレスなどにより段々と弱ってゆきます。
胃潰瘍においては胃酸を抑えるか防御因子を増強する働きのある薬を用います。

攻撃因子抑制薬

プロトンポンプ阻害薬

胃酸を抑える薬で、胃酸分泌抑制薬としては最も強いものとなります。消化性潰瘍、逆流性食道炎の第一選択薬になります。

H2受容体拮抗薬

こちらも胃酸の分泌を抑える薬です。市販薬としてもドラッグストアなどで購入することができます。

選択的ムスカリン受容体拮抗薬

胃酸の分泌を抑える薬です。こちらも市販薬として購入できます。口の渇きが起こることがあります。

抗コリン薬

お腹の過剰な運動、すなわち腹痛を抑える効果があります。この内ブチルスコポラミンは市販されています。
腹痛には効きますがO-157によって起こる大腸炎などには使用してはいけません、細菌やウィルスが下痢と一緒に排出されなくなる為です。

制酸剤

主に重曹やカルシウム、マグネシウムやアルミニウムが含まれている薬です。飲んですぐ効くものが多いのが特徴です。

防御因子増強薬

プロスタグランジン製剤

胃を保護している膜である胃粘膜を増加させる作用があります。
攻撃因子抑制薬であるプロトンポンプ阻害薬やH2受容体阻害薬と比べて胃潰瘍や十二指腸潰瘍の発症後の再発予防効果に優れています。

粘膜保護薬

潰瘍ができた部位に付着し、胃酸から胃を保護します。潰瘍の再発予防にも優れています。よく知られているキャベジンもこの分類に含まれています。

まとめ

胃薬について紹介しました、基本的には症状によって使用する胃薬を使い分けることが大事です。
特に胃が痛む程であれば市販ではH2受容体拮抗薬などの攻撃因子抑制薬を選ぶと良いでしょう。お酒を飲む機会が多かったり、ストレスで胃にきやすい方は防御因子増強薬を服用しておくことをお勧めします。
胃痛がせず胸焼けや膨満感などによる食欲不振などであれば、消化管運動改善薬で対処出来ると思います。
激しい痛みや血便や吐血までゆく場合は医療機関にかかりプロトンポンプ阻害薬など強めの投与が必要な場合もあります。
胃の健康の為、暴飲暴食はしないに限りますがもし胃の症状が出てしまっても対処出来るようにしっかり薬を選びましょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田 早苗

・総合診療医 院長 豊田 早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

関連する記事

関連するキーワード

著者