はじめに

ワキガはストレスやコンプレックスとなる一つです。
嫌な臭いを発しないために、デオドラントを重ねても効果が少ないですよね。
また普段からの自分の臭いがワキガかもしれないと気にかけている人もいると思いますが、ここでは、ワキガってどういうものなのか、予防や対処内容をチャックリストも加えてご説明いたします。

ワキガは人種によって大差がある

ワキガとは体質的なものだと判断されていますが、実は疾患名として「腋臭症」とも言われています。
日本人をはじめ、東洋人は体臭が少ない人種であるため、ニオイに対してはよけいに敏感かもしれません。

人種的に割合を見ていきますと、中国人では5%前後、日本人は10%~15%、欧米人80%、中でも黒人は100%がワキガであることが明らかにされています。
欧米ではワキガでない人を探す方が大変そうですが、そのためか香水の文化が発達し、またワキガを特別に取り立てて主張するのではなく、個人の体質であるという考えが強いようです。

では、ワキガの特徴として何が違うかと見てみますと、汗を出すアポクリン腺の量の相違です。欧米人はアポクリン腺を多く持つ遺伝子、東洋人はアポクリン腺が少ない遺伝子を持つ人が多いということがいわれています。

ワキガの原因はアポクリン腺!

私たちの汗が出る管(汗腺)には、エクリン腺とアポクリン腺という2種類があります。
そのうちのアポクリン腺という汗腺から出た汗をエサに菌の増殖地帯となり、また汗の成分が分解されることで作られた低級脂肪酸が、ニオイを放ちワキガ独特のにおいとなります。

ワキガは思春期を過ぎたころから目立つようになりますが、これは男性ホルモンであるアンドロゲンが影響しているといわれます。男性ホルモンだからといって、女性には分泌されないということではなく、女性にも分泌されるものです。アンドロゲンの分泌が男性に多いためワキガも男性に多く見られますが、女性では月経前期や妊娠を機に分泌が高まることがわかっています。

アポクリン腺の特徴

アポクリン腺から出る汗の成分は、タンパク質や脂肪酸、糖質などであり、通常出る汗は水分が多いのに対して、水以外の成分が多くドロッとした汗です。ワキガのもう一つの特徴である衣服の黄ばみですが、これは汗の成分の一つ「リポフスチン」という色素が原因となっています。

アポクリン腺は体のどこにでもあるわけではなく、脇、へそ、乳輪、陰部、耳などの特定部位に分布し、辛い物を食べた、気温が高いための発汗とは異なり、興奮や緊張などによる精神性発汗で分泌が高まります。

この汗腺が部分的に分布しているのには、古代からの人間の進化が原因と言われています。
人間が猿人だったころには体中が毛だらけでアポクリン腺も多く、繁殖するためのフェロモンとしてニオイの汗が分泌されていました。しかし進化と共に体毛が減り、直立することで性欲を高めるために効率がいい場所に限局されていき、やがては視覚で欲求を高める今の姿になったようです。

ワキガの自主的対策と手術法

【対処法】
▪ 黄ばんだ衣類はニオイのもとになりますので、塩素系漂白剤や重曹などで
 汚れを落としましょう。
▪ 汗をかいたらこまめに拭き取る、または衣類を交換するなど清潔を保持しましょう。


【治療法】
▪「直視下手術法」
 皮膚を数センチカットして、皮膚の裏側にあるアポクリン腺を目で確かめながら
 除去する手術が多く行われています。

▪「非直視下手術法」
 脂肪吸引と同じ用法で、1センチの穴を開け管を挿入しすべての汗腺をかきだす方法です。
 また最近では、管を入れてかきだすのに加え、管から超音波を出し
 死滅させながら吸い取るという術式も行われるようになりました。

この3点でワキガを予防する

食生活

肉類やバターなどの動物性食品は、アポクリン腺からの汗の分泌を促しますので、欧米食よりは和食がおすすめです。
反対にニオイをおさえる働きのある納豆などの大豆製品や生姜や梅干し、酢を使った料理を食べることが効果的です。

入浴

清潔が第一です。シャワー浴でさっと汗を流すのではなく、お風呂に浸かって汗を流し、一緒に老廃物も排泄することが必要です。
身体を洗う時も、ニオイが強いからといって皮膚をゴシゴシこするのは逆効果になりますので、消臭効果のある石鹸などを用いて丁寧に洗いましょう。

ストレス

アポクリン腺は精神的な要因から分泌量が多くなるため、普段よりストレスをためない生活を心がけましょう。
睡眠不足や熟睡できない質の悪い睡眠は自律神経をアンバランスにします。
気持ちと身体のゆとりを持つことが大切です。

ワキガと体臭の見極めが予防のひとつ

ワキガと体臭の違い

ワキガと体臭の違いは汗を出す汗腺が違うことです。
ワキガはアポクリン腺から出るもので、ワキガではない体臭といわれるものは、エクリン腺から出た汗が汚れとなったものを、常在菌がエサとして利用し繁殖していきます。
時間が経つにつれてアミノ酸の分解がすすむことでニオイを放つ、いわゆるワキガ以外の体臭となります。

ワキガの原因アポクリン腺の成分がタンパク質など中心であることに対して、一般の体臭につながる成分は99%が水で、他はカリウムやカルシウム、乳酸、塩化ナトリウムとなっています。

もうひとつ、アポクリン腺は脇の下、耳、陰部などに分布していますが、エクリン腺は体温調節を目的としているため、全身に広がっています。

セルフチェック

セルフチェックをして、自身のニオイがワキガに当てはまるのか、通常の体臭なのか知ることで、対処の方法を見極めましょう。
チェックが多くつくことで、ワキガの体質といえます。

☑ 耳垢がやわらかく、湿っていることが多い
☑ 汗をかいた脇の部分が黄ばむ
☑ 親や祖父母などにワキガの人がいる
☑ 脇に汗をかきやすい
☑ 靴や靴下のニオイがきつい
☑ 脇と陰部の汗の臭いが似ている
☑ 毛深いほうである

まとめ

ワキガにこんな真髄があったこと、初めていった方もいると思いますが、日本人はニオイに慣れていない民族で、欧米ではワキガをフェロモンとして対応しているくらいのものです。
ワキガであることで心労を重ねることなく、普段からのケアとともに自身でも気にしないで過ごすことが大切だと思われます。

監修

・救急医、内科医 増田 陽子

・救急医、内科医 増田 陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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