お灸とは

お灸は昔からある治療法で、2千年以上前に中国の北部で始まったとされています。日本に伝わったのは6世紀頃で民間療法として庶民に親しまれるようになりました。その後、江戸時代になると全国にお灸が普及してむくみや足の疲れをとる目的でも使われるようになりました。

治療は凝っている場所や痛い場所、周辺のツボなどに原料のもぐさや薬草を置いて燃やすことで、症状を軽減します。燃やしたときの熱は皮膚に伝わり、その刺激によって体の調子を整える効果が得るれます。そのほか免疫を高めたり代謝を良くする効果なども期待できます。

お灸に使われている「もぐさ」とは、乾燥させたヨモギの葉を特殊な方法で精製したものです。
ヨモギは草餅などでも知られていますが、薬としての効果には健胃作用や止血、解熱、利尿作用などがあります。食物繊維やミネラルなども豊富なので美容や健康に良いと考えられ、煎じて飲むこともあります。

ツボって一体何?

ツボは体の各所に存在する筋肉や腱、動静脈、神経などが集まっている体の大切なポイントを意味しています。疲れたり、痛かったりするときに適したツボを押すと症状が緩和するとされています。

代表的なツボは体全体に約360箇所程度とされており、実際にお灸や鍼などの治療にも用いられています。また体全体には、1000か所以上のツボがあるともいわれています。

お灸の美容効果と美容に効くツボ

乾燥肌防止

肌の乾燥は水分と血液が不足したり、その流れのバランスが乱れたりすることで起こります。汗などで体から水分が失われたり、胃腸障害など栄養が肌まで十分に運ばれないと、潤いの少ない肌、つまり乾燥肌になってしまいます。そこで、食事の消化・吸収を助ける胃腸に効くツボをご紹介します。

・太白(たいはく):足の親指の側面にあるツボです。親指の付け根の大きな関節のすぐ後ろ(かかと側)にあります。
・太渓(たいけい):足の内側のくるぶしとアキレス腱の真ん中にあります

便秘解消

食生活の乱れや不規則な生活などが続くと、腸の働きが悪くなってしまいます。腸内の水分バランスが崩れたり、血流が悪くなると、腸が活発に働かず便秘となります。便秘になると、体内に老廃物が停滞して血液の流れに乗って運ばれ、皮膚から外へ出そうとして肌荒れが起きます。
お灸で腸にに効くツボを温めてあげることで、腸の血流がよくなり、動きを活発にして便秘を解消してくれます。便秘が解消されると、肌荒れも改善されます。

・神門(しんもん):手首の内側に折り曲げたときにできる大きなシワと、手首の小指側の骨の手前にある凹みを結んだところにあります。
・三陰交(さんいんこう):足の内側のくるぶしから指4本分上にあります。

むくみ・たるみ防止

腎臓などの内臓機能が悪いと、水分や血液の流れが滞って血液に老廃物が溜まるため、むくみが起こりやすくなります。むくみの状態が続くと、皮膚が膨張したままになり、たるみにつながってしまいます。肌は年齢と共にたるんでしまいますが、内臓機能に効くツボを刺激して温めることで、血流を改善し、むくみ・たるみの解消が期待できます。

・湧泉(ゆうせん):足裏のど真ん中よりやや爪先側にあります。足をグーに曲げたときに凹む部分です。
・曲泉(きょくせん):膝の内側にあり、膝を曲げてできたシワの頂点の部分にあたります。

その他のお灸の効果

冷え防止

お灸を体の各所に置いて燃やすので、その熱が血液が滞りがちな手指や足先など体の隅々まで血液が流れ血行が良くなります。血液が改善されることで代謝が上がり、冷え性などの症状も改善します。

免疫力アップ

ツボにお灸をすることで身体の免疫力向上を促すことができます。そうすると、体の血液の流れがよくな流だけでなく、体内の免疫物質の分泌を促したり、働きを活発にすることができるといわれています。

リラックス効果

お灸の原料となっているヨモギにはシネオールという成分が含まれています。燃やすと爽快感のある香りを立たせ、リラックスすることができるといわれています。また、お灸の適度な温かさも気持ちを和らげるのに効果があります。

凝りや痛みの解消

お灸で凝っている部分や痛みのある部分のツボを温めると、血流が良くなり、それらを解消することができるといわれています。温めることに加え、薬草の成分に炎症を抑える効果があり、肩こりや腰痛、生理痛などの解消が期待できます。

自宅で行う美容のためのお灸の手順

治療院に行かずに自宅でも簡単にお灸を試すことができます。お灸が初めての方は刺激の少ないお灸から始めると良いでしょう。初心者の方には煙が少ないタイプや、熱くなりすぎないタイプがある『せんねん灸』が使いやすいです。

1)お灸をおきたいツボを調べてペンなどで印をつけておきます。
2)お灸にのシールをはがします。
3)ライターなどでお灸に火をつけて、煙が出たらツボに置きます。
4)約5分くらいしたら火は消えますが、効果はそのまま続いているので、置いたままにします。
5)お灸が終了したら水の入った容器にお灸を入れて火を消します。

お灸を自宅で行う時の注意点

慣れないうちは少しの刺激でも熱いと感じることがあります。その様な場合は無理せず、外しましょう。
お灸はじわじわと燃えているので、低温火傷にも気を付けてください。皮膚が弱い方は、熱さを少し我慢するだけでも低温火傷になりかねないので、特に注意が必要です。

また、入浴後や食事の前後の30分前は、お灸の実施を避けるようにします。お灸は熱を使用するので、のぼせてしまったり、気分が悪くなってしまうことがあります。

おわりに

お灸は千年以上の歴史ある古い治療法ですが、美容や健康に効果があると人気を集めるようになりました。市販のお灸があるので、自宅で行うこともできますが、その場合は手順と注意事項をきちんと守って行うようにしましょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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