治療院の活動について

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ケアクル編集部(以下、ケアクル):まずは治療院の活動について聞かせてください。

河原保裕先生(以下、河原):治療院は平成8年2月に大宮で鍼灸院を開業しました。 開業して22年になります。当時は12坪の物件にベット2台を置いてスタートしました。 そこから、10年ほど前より現在の場所に移転して来たので、現在は25坪の物件でベット4台で治療をしています。

ケアクル:とても広い治療院ですね!

河原:以前の治療院は今ほど広くなかったので、スタッフに必要な環境を用意することができませんでした。調べ物をする場所や作業をする場所、ご飯を食べる場所などがなかったのですが、今は場所が確保できるようになりました。 今後は、患者さんが増えることにベットを増やそうと思います。 スタッフが常勤2名、アルバイト2名、研修生が2名で計6人ほど在籍しています。 治療院内の治療だけでなく往診も対応しています。 自由診療も保険もやっていますが、往診は保険の方が多いです。 少しでも患者さんの負担が軽くなればと考えています。 私のスタイルは中医学が中心なので、中医鍼灸をやっています。 治療院やスタッフも同じようなスタイルで治療しています。中医学の考え方をもとに鍼やお灸やマッサージをやっています。

ケアクル:学校の教員としての活動を聞かせてください。

河原:東京の大森駅にある東京衛生学園専門学校にて教員をやっています。 中医学が専門ですので、鍼灸科で中医鍼灸応用実技の授業を担当しています。 教員の仕事は開業する前から初めているので、およそ25年になります。 今でも情熱を持って後進の育成に励んでいます。

ケアクル:そもそもなぜ鍼灸師になられたのでしょうか?

河原:はじめは全く違う分野の勉強をしていました。 その後、新しいことをやろうと思って始めたのがトレーナーの勉強でした。 元々スポーツをやっていたので、スポーツに関わる仕事を目指しました。当時はトレーナーの資格がなかったので、先輩のアドバイスで鍼灸マッサージの資格を取ることになりました。 最初の頃はトレーナーを中心とした、トレーナーの勉強をしていたのですが、中医学研究室の兵頭明先生と出会って、そこから中医学の方にシフトしていって今があります。

中国との出会い

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ケアクル:先生は実際に中国にも行っていたのですか?

河原:はい、中国に勉強しに行ったこともありました。その時は、牧田中医クリニックで働いていたのですが、そこに中国の中医師が来ていたのがきっかけです。 その繋がりもあって中国に行くことになりました。

ケアクル:中国ではどんな勉強をされていたのでしょうか?

河原:天津中医薬大学第一付属病院という場所に、研修生として半年間行っていたのですが、大学でひたすら勉強するというよりも、とにかく病院で実践していましたね。 日本にいた時に、老中医が来て半年間、現地の病院にて半年間、研修を受けました。 向こうの大学では座学というよりも、病院でそれこそ朝から晩まで出ずっぱりの臨床をしていたました。 そして、夜は個人的にお願いして講義を受ける日々を送っていました。 言語も北京語ですが、天津訛りがあるのでとても大変だったのを覚えています。

ケアクル:中国では何が一番大変でしたか?

河原:言葉の壁はあったのですが、専門用語の方が聞きやすかったので、むしろ日常会話の方が難しかったですね。 普段から、日本にいる時にも中国語で講義を受けていたので、専門用語は聞き分けていたと思います。 あとは、自分なりに解釈して鍼を実践していました笑 それと、我々日本人の鍼灸師が病院ではとても人気でした。 理由は手先が器用で切皮痛がなかったようで、顔を見るなりよく患者さんに呼ばれていました。中国人鍼灸師がいるのに、日本人鍼灸師を呼ぶ方がとても多かったです。 向こうの教育では授業の中で理論が多いので、実技は日本の専門学校の方が多く結果的に技術が高かったのだと思います。

埼玉県鍼灸師会の活動について

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ケアクル:埼玉県鍼灸師会の話を聞かせてください。

河原:埼玉県鍼灸師会の会長をやっています。そろそろ3期が終わるので6年になります。 既存会員数260人ほどです。 大きい活動としては、地元埼玉県の開業・勤務鍼灸師のサポートを行っています。 特に医師会を中心とした医療関連団体に関わり、医師や看護師その他の医療関係者に鍼灸への理解を深めていただけるよう活動をしています。場合によっては医師に患者を紹介したり、療養費を取り扱う上で医師からの同意をスムースにいただけるよう働きかけています。 鍼灸や鍼灸師を理解してもらう努力をしています。また鍼灸師の資質向上に関わる活動を行っています。

ケアクル:多岐に渡る活動をされているのですね。

河原:細かいところでは、鍼灸の普及活動の一環で、健康まつりなどで普及啓発活動を行ったり、 スポーツイベントに出展するなど活動を行なっています。 マラソン大会などでは選手や応援者・関係者などのケアを行ったりしています。 また、鍼灸師の資質向上を目的に年4回の学術講習会を開催しています。 会としては、埼玉県医師会との意見交換や、同意書に関わるところなどは常に連絡をとっています。医師会を始め、地域の高齢者をみんなでみていこうという流れもあります。 今後は在宅医療がメインになってくると思います。そこでも鍼灸師がチーム医療に参加できると思うので、鍼灸師の活躍できる場所を作っていきたいと思います。 ADLの向上や維持にも鍼灸は必ず力になれるものだと思っています。

ケアクル:苦労していることはありますでしょうか?

河原:鍼灸師会の活動に携わってくれるのは全体の2割くらいなのが現状です。 当然、役員たちの負担が大きくなってきます。会費がなければ活動できないですが、埼玉として260人というのは全国的に見て人数としては少ない方だと考えています。 会員の属性はそれぞれですが、開業するときに若手が入ってきますが、まずはいろんな情報を集めるために入って来ますよね。会の中で若者には思い切ったことをやってほしいと常に思っています。 なんでもいいからイベントをやるなど、大胆に動くように伝えるようにしています。 そして仲間づくりが非常に大切です。 我々鍼灸師がいろんな人を誘って参加することもとても重要です。 そこから学術や臨床につながるような動きを作り出そうとしています。 近年では多くの方が少しでも興味を示すような内容にするなど努力しています。 そこで定期的に開催している学術講習会でも、話題の先生などを呼んでやるようになりました。 前回の学術講習会は美容鍼灸をテーマに開講したところ150人の鍼灸師が来てくれました。また、臨床鍼灸スポーツフォーラムを開催した時には全国から300名以上の人たちが集まってくれました。 今後は新しい取り組みをどんどん実施していきたいと考えています。

第二次日本経穴委員会について

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ケアクル:第二次日本経穴委員会についても教えてください。

河原:2003年にWHO/WPRO(世界保健機関:西太平洋地域事務局)から経穴部位標準化に向けた非公式会議の連絡があり、その後日中韓で標準化のための準備を進めていく上で、第二次日本経穴委員会が組織されることになりました。これはいわゆるツボ(経穴)の場所や取り方が国や流派や考え方によって異なる場合があるので統一するため、どのようにツボの位置を定めるかを協議していく場です。 元々は第一次経穴委員会がありましたが、私達は第二次経穴委員会です。

ケアクル:現在はどのように変化していますか?

河原:現在は、日本経絡経穴研究会という名前に変わっています。学会の方にこの組織は所属しています。日中韓でたたき台を作るのに3年間くらいをかけて、教科書などを持ち寄りながら体表座標としてのツボ(経穴)ひとつずつ確認することになりました。 古典なども確認し、リスペクトしながら決めていきました。

ケアクル:それはとても根気のいる作業ですね。

河原:最終的には20カ国が集まってツボ(経穴)の位置を決定していきました。 ツボ(経穴)は海外では漢字ではなく記号です。これを覚えるのはグローバルでは必要なのですが、ツボ(経穴)の漢字にはとても深い意味があるので、合わせて歴史を知ることが臨床にとっては大事になって来ます。もちろん基礎も大切ですが応用にも活きてくることになります。 当然、国際的な論文などを書いていくには、漢字も記号も必要になってくるかと思います。

今の業界に思うこと

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ケアクル:今の業界に思うことなどを聞かせてください。

河原:これは非常に難しいです 鍼灸はいいものなのに鍼灸業界はどこか疲弊しているようにも見えます。これは何が問題なのか?考えることは多いですが明確な解答は出ません。 鍼灸学会などでは、少しずつ鍼灸のエビデンスなど効果、機序に対して解明がなされてきています。業界としては、もっと多くの方に鍼灸をしっていただき、受療していただくための施策を考えなくてはいけません。また、業界とは鍼灸師にとって自分たちが働く職域を守ったり、広げていく場なのでもっと多くの鍼灸師が参加すべきだと考えています。鍼灸師に限ったことではありませんが、最近は組織離れの傾向が問題になっています。そうでなくても鍼灸師は業団や学会に所属しない先生が多いです。業界の加入率は25%ほどです。 業団、学会に魅力がないという理由が多いです。また会に入っても何も得がないという意見もあります。でもそういう人たちは会に入れば何かを与えてくれるものと勘違いしている人が多いようです。会に入れば自分の力で得られるものや情報はたくさんあるのです。保険の取り扱いを簡素化したい、身分法を制定してほしいなど、鍼灸師としての要望はたくさんありますが、この程度の加入率の業界に対して誰も耳を傾けてくれません。

伝えたいこと

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ケアクル:活動を通して今伝えたいことを教えてください。

河原:業界の活動に対しては、多くの活動はボランティアや学術講習会、会議など休みの日を中心に行っているものです。 休みの日にボランティアを?と思う人が多いかと思いますが、そこでの人のつながり、仲間づくりが自分の活動の上で非常に有益なものになって来ます。 会のため、鍼灸師のために働くことは自分のためでもあるので多くの鍼灸師に理解していただき、様々な活動に参加していただきたいです。 我々が行っている鍼灸治療はとてもいいものなのに表に出さないと井の中の蛙になってしまいます。 今まではそれでもよかったのかもしれませんが、これからは鍼灸師も医師を中心としたチーム医療の中に入っていく時代になって来ていると思います。 であれば、なおさら我々の身分を確立したり、療養費の取り扱いを簡便化させなければいけません。 そのために会の活動を知っていただき、みんなが協力していただければと考えています。 また個人としては、鍼灸師は”臨床”、”教育”、”研究”が欠かせない大切なものだと考えています。なにも大層なことをやらなければいけないわけではせん。 臨床は当然重要な部分ですが、研究も大学でないとできないという特別なことではありません。教育も後輩を育成することは学校でなくても治療院でできることがたくさんあります。 一番大事なので、一つ一つ自分でできる範囲でやっていくことが大事だと思います。 後輩の育成をしっかりしていくことで、この業界がは発展し力強くなっていくものだと感じています。 これまでの当院のスタッフも独立開業をして、皆成功をしています。 これからも、いろんな鍼灸師を育てていきたいと思います。

プロフィール

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鍼灸師:河原保裕

アコール鍼灸治療院
(公社)埼玉県鍼灸師会会長
埼玉鍼灸学会幹事
日本中医学会評議員


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