はじめに

「インナーコア」、「体幹力」、最近本や雑誌でもよく目にするコアトレーニング。
コアとは英語で、「中枢」とか「核」といった意味ですが、コアトレーニングと聞いてみなさん何を想像しますか? 
なんとなくお腹の運動というくらいはわかっていても、詳しいことまでよく分からない、という方が大半なのではないでしょうか? 

コアトレーニングの歴史

今でこそ市民権を得た感のあるコアトレーニングですが、重要性が叫ばれるようになったのはそもそもここ最近の話です。
90年代まではコアといえば単純に、”体の真ん中” くらいの認識で、特別扱いされているわけではありませんでした。
それがインナーユニットの登場で、2000年を機にコアは一躍脚光を浴びるようになります。
それ以後、コアに対する認識は大きく変わり、それを追うようにしてスポーツ選手のトレーニングも変容していきました。

現代のコアトレーニングに触れる上で欠かせないのが、このインナーユニット、そしてアウターユニットという二つの体幹構造です。

少しトレーニングをかじったことがある人ならインナーマッスルという言葉を一度は聞いたことがあると思います。
インナーユニットとインナーマッスル、ともに身体の奥の方にあるという点では同じですが、インナーユニットが体幹の構造、あるいはシステムを表すのに対し、インナーマッスルは筋肉のことです。
理由は後述しますが、この記事ではコアの機能をきちんと理解するためにもインナーユニットという言葉を使います。

コアの構造1: インナーユニット

インナーユニットの筋肉は、体の深部に位置し、身体の節々に付着しながらピンポイントで脊柱に安定性を与えています。その他、呼吸や尿や便の排泄も行っています。力持ちではありませんが、脳みそからの情報を読み取る事に長けています。その分、痛みやストレスなどの邪魔な情報が入ると機能不全を起こしてしまうデリケートな面もあります。

奥の方にあるので目で確認することはできません。また無意識的、反射的に制御されているため普段の生活で使っている意識はありません

機能

インナーユニットの筋肉

コアのインナーユニットに含まれる筋肉は、多裂筋、腹横筋、骨盤底筋、横隔膜、内腹斜筋があります。
体の中心部にあるため、これらの筋肉の働きが、指などの身体の先の方まで影響を与えると言われています。

コアの構造2 : アウターユニット

機能

力持ちで早い動きが得意です。体幹部にかかった負荷を支えたり吸収する他、力を手足に伝えることもできます。
インナーユニットと違い体の表面にあるので、肉眼で確認することができ、収縮を自覚しやすい筋肉です。

アウターユニットの筋肉

腹直筋(シックスパック)、外腹斜筋、広背筋、脊柱起立筋、腕、お尻等。

そう、実は、お尻や腕も含まれているのです。

伝達媒体としての筋膜

状況に応じてベストな動きができるよう、ユニット間で絶えずコミュニケーションが行われ、オン(収縮)とオフ(脱力)のタイミングを相談しあっています。それを可能にしているのが”筋膜”と言われる、筋肉に覆いかぶさった膜です。付着した膜を通じて、腹筋から肩甲骨、胸、腕へと動きが伝達されていきます。逆に、手足での動きがそのまま体幹へ流れていくというパターンもあります。

例えば、お腹の腹斜筋という筋肉は筋膜を通じて、肋骨、そして肩甲骨まで連動しています。試しに立った状態で、横に上半身をねじってみてください。ウエストと肩甲骨までひねりが伝わるはずです。

コアトレーニングって何?

つまるところコアトレーニングとは、インナーユニットとアウターユニットの相互の働きあいを最適化し、無駄のない効率的な動きを生み出すためのプロセスです。

コアトレーニングの効果

体のコーディネーションが改善➡︎パフォーマンスアップと怪我の防止効果があります。
運動中のスムーズな力伝達➡︎均整のとれた筋肉がつく。
骨盤と背骨のコントロールの向上➡︎運動のフォーム&日常生活の動きが改善します。
適切に行えばウエスト引き締め効果、姿勢改善、肩こりを解消することも可能です。

コアトレーニングを行う際の注意点とは

1 特定の筋肉を鍛えるのはNG

コアトレーニングは、特定の筋肉を特化して肥大化させるボディビルとは目的が異なります。
コアがシステムとして機能している以上、他の筋肉との共同作業が前提です。
サッカーのフォーメーションのように、ボールを持っている選手の動きに合わせ、周りも常にバランスをとっているのです。
例えば息を吸うと、横隔膜が下に下がり、その力で内臓も下降します。
骨盤底筋はそれ以上内臓を下に下がらせないよう反発し、上に跳ね返ったところを今度は腹横筋がカバーしています。
ドローインという、インナーユニットの腹横筋を固めるエクササイズがありますが、ドローインをした状態でジャンプをしたらジャンプ力が下がったという研究結果もあるくらいです。

また、シックスパックと呼ばれる腹直筋ばかり鍛えると、横の動きにブレーキがかかり、身体がひねりにくくなります。
また、体を前に引っ張る力が強くなりすぎて姿勢が悪くなります。

バランスが重要なのです。

2 強く固めれば良い、というわけではない

コアトレーニングをやるときに必要以上にお腹を固めてしまう人がいますが、これは逆効果です。
歩く、飛ぶ、投げる等、人間の動きは、本来振り子のように常に適切なタイミングでオンとオフを繰り返して機能しています。
この働きは本来反射的、無意識的に行われるべきであり、不自然なタイミングで体幹に必要以上に力が入れば、動きが逆に固くなります。

3 コアトレーニングでお腹の脂肪は減らない

残念ながらコアトレーニングでお腹の脂肪はなくなりません。脂肪が少ない方が腹筋が動かしやすくなるということはあるでしょうが...というか、そもそもトレーニングで部分痩せはできません。私は自分のトレーニングでもクランチ等一切やりません(笑)食事管理がもっとも費用対効果の良い脂肪燃焼方法です。

コアトレーニングはどのくらいやれば良い?

通常のトレーニングと同様、週に二、三回やれば効果が実感できるでしょう。複雑な部位なのでバランスよく鍛えないと怪我につながるので注意が必要です。Youtube等でもレクチャーをしている動画があるので、最初は経験者のやり方を模倣するところから始めてみてください。

コアトレーニングのおすすめメニューの例

デッドバグ 漸進方法

デッドバグ 漸進方法

体幹の筋肉のトレーニングです。
正しいアライメントで行いましょう。骨盤と肋骨の距離を近づけ、肩は床に寝かせましょう。
膝を伸ばすと負荷がかかり、場合によっては首に力が入ってしまいます。足が体から離れれば離れるほどきつくなるのでフォームが崩れないように負荷を自分で調整しましょう。
各左右10回x3-5

バードドッグ 漸進方法

体幹の筋肉のトレーニングです。
正しいアライメントで行いましょう。

首:下がっていると肩に余計な力が入るので顎を引いておきます。

肩:胸を地面に近づけるようにして少しだけ張ります。この時腰がそらないように注意してください。

腰と骨盤: 腰骨と肋骨を近づけて腰が反らないようにして固定しましょう。

最初は膝を壁に押し付けて体幹を安定させるところから練習し、慣れたら股関節に動きを与えていきます。

各左右10回x3-5

最後に 〜コアはコアにしてコアにあらず〜

ダンサー、そしてトレーナーとしての知識と経験を踏まえて言えることですが、より複雑かつ精密な動きを追求していくと、意識の有無に関わらずベストのタイミングコアに勝手にスイッチが入るようになります。
言葉で説明するのは難しいですが、動きが洗練されればされるほど、さりげない変化を感じ取れるようになり、体幹と他の部位のつながりを体感できるようになっていきます。
動きの全てが、コアに通じているのです。

関連する記事

関連するキーワード

著者