はじめに

肩こりに悩まれている方はとても多いですが、効果的な解決方法を知っている方は実は多くありません。「肩こりは揉んだらよくなる」と考える方がとても多いですが、揉んでよくなるのは少しの間だけではないでしょうか。

本当に肩こりを治したい場合は、肩こりの原因に対処する必要があります。
そして、肩こり部分に原因がない場合は、肩こり部分を揉んでも改善が見込めません。
この記事では、肩こりの原因から、揉んでも良くならない理由、対処方法まで詳しく解説していきます。

そもそも肩こりとは

「肩こり」は病名ではなく症状の一つです。

そのため、主観的な要素が強く、人によって「肩が重い」「肩が突っ張る」「こわばり感がある」などと表現されます。
欧米では肩こりという言葉をあまり聞かないため、病院に行った際に症状を訴えても、あまり理解してもらえないかもしれません。

厚生労働省による国民生活基礎調査(2015年度)では、男性では2位、女性では1位の有訴者率(自覚症状のある人の比率)とされる症状でもあります。

肩こりは症状の一つであるため、何らかの病気が原因となって起こしていることもあり、肩こりだからといって放っておくと、重大な疾患が進行してしまうこともあります。

次項からは重大疾患も含めた肩こりの原因を解説していきます。

肩こりが起きる原因

肩こりの原因は1つではありません。そのため、一緒くたに同じ治療をすればよい訳ではないところが厄介でもあります。また、いくつかの原因が重なっていることも少なくありません。
ここでは、肩こりの原因をいくつか挙げていきます。

他の疾患の問題

・心疾患(狭心症、心筋梗塞など)
・肺、気管支の疾患(喘息、肺炎など)
・筋骨格系疾患(頸椎椎間板ヘルニア、頚腕症候群、変形性関節症など)
以上のような他の疾患が原因となって肩こりを起こしていることも考えられます。
肩こり以外の症状もみられる方は、他の疾患の影響もあるため、かかりつけ医に相談するなどして医師の診察を受けましょう。

姿勢の問題

外国の人はあまり肩こりを感じないといわれることがあります。文化的な認識の違いもありますが、姿勢教育の問題も考えられます。
日本人は、胸を張った姿勢をよしとする傾向があり、結果として肩周辺を緊張させてしまい、肩こりとなる可能性があります。

また、人とて動物であり、動くことが生活の基礎です(寝ていても寝返りをします)。
仕事環境の変化によってデスクワークが増え、同じ姿勢を長時間続ける生活スタイルになってしまったことも肩こりの原因と考えられます。

内臓の問題

病院の検査で重大な疾患として認められるような内臓疾患ではなくても、内臓の影響により肩こりを感じることがあります。

例えば、胃は背中、心臓は左肩、肝臓は右肩などの関連痛を引き起こす場合があります。
これらが、結果として肩こりとして認識されてしまうことがあるのです。
また、腸内環境の悪化が様々な症状を引き起こすと言われています。
便秘や下痢などが日常的にみられる方にも肩こりが多いです。

身体のアンバランスの問題

真直ぐ立っているつもりでも、人に見てもらうと首が傾いていたり、片方に重心が偏っていることがあります。これが、結果として肩周辺の負担となり、肩こりと感じてしまいます。
身体のアンバランスの原因となるものは、日常の身体の使い方や神経的なアンバランスなど非常に多様で、これらの問題も見極める必要があります。

精神面(ストレス)の問題

精神は自律神経と深い関わりがあります。過剰なストレスがかかることで自律神経が乱れ、結果として肩こりを感じることがあります。悩み事が解消されたり、考え方が変わることで肩こりが軽減されていくことも少なくありません。

顎、歯周辺の問題

噛み合わせの悪さは、姿勢に影響します。そのことが結果として肩こりを感じることがあります。
また、顎の動きは頸部(首周辺)と関わり、頸部には舌を動かす筋肉が多く存在します。このことから、顎周辺の問題が肩こりの原因になることがあります。

肩こりは揉んではいけない?

肩こりの原因を読んでいただくとわかるとおり、すべてが肩こり部分に原因があるとも限りません。
そのため、こっている部分を揉んでも、肩こりが十分に解消されない場合があります。

肩を揉んでもらうことに慣れ過ぎて、強く揉んでもらわないと満足できない人がいます。
肩周辺の大切な筋組織は、不必要に強く揉むと余計に痛んでしまいます。
こうなると悪循環を引き起こす可能性があり、肩こりを解消するのに余計に時間がかかることも考えられます。
適切な力加減で肩を揉んだとしても、そこに原因がない場合は不必要に肩のみ筋肉が緩んでしまうため、アンバランスを引き起こし最悪の場合、悪化することもあります。
筋肉にはある程度の緊張度も必要であり、そのバランスを崩すことで身体のバランスが崩れてしまうことがあるのです。

このようなことから、肩こり部分をただ揉むだけでは症状が解消されなかったり、より悪化させてしまう可能性もあるため、肩がこっても揉み過ぎることは控えた方が良いと考えられるのです。

揉まずに治す?肩こりの対処法とは

肩こりを解消するには、原因を解決することが近道です。ここでは、その方法をいくつかご紹介します。

専門家に適切な指導をうける

身体の専門家には、医師、理学療法士、柔道整復師、鍼灸師などの国家資格者や、整体師やカイロプラクターなどの民間療法者などがおり、多種多様です。
他にもパーソナルトレーナーやヨガインストラクターなど様々な観点をもった専門家から肩こり解消のサポートを受けられます。

自己流では肩こりの原因が突き止められないことが多いため、一度、信頼できる身体の専門家に指導してもらうことをおすすめします。
選ぶときには、しっかりと情報収集して信頼できると思える専門家に指導してもらってください。

楽な姿勢を心掛ける

日本人には胸を張る姿勢をよしとする傾向がありますが、無理をしてしまうのも逆効果です。
世間的には猫背では?と思われる姿勢であっても、その方の骨格や状態によっては自然なこともあります。
楽だと感じるのであれば、その姿勢で仕事や作業をすることも試して見ると良いでしょう。
この姿勢についても専門家の意見を聞くようにしましょう。
長時間の同じ姿勢は、どのような姿勢であっても疲れやすいものです。
30分に1回は姿勢を変えるなど、少し立ったり身体の負担を減らすなど、工夫をしてみましょう。

運動の習慣をつける

激しく動く必要はなく、身体を動かす習慣をつけることが大切です。
気持ちよく汗をかける程度でも良いので実践してみましょう。
また、運動が苦手と感じる方は、家の掃除を頑張ってみたり、できることから始めてみるのも良いです。
身体を動かすことによって血流が良くなり、痛みやコリを解消しやすくなります。
肩こりがひどい人でも、ジョギングを習慣化したことで、肩こりを感じなくなったという例もあります。

肩こりを改善する食事とは

身体に炎症反応があると様々な症状を引き起こしますが、その一つに肩こりが考えられます。
色々な要因が考えられますが、ここでは腸内環境に絞って食事面で改善させる方法を解説します。

腸内環境が悪化すると炎症を引き起こす場合があるため、日常から腸を健全に保つことが大切です。
そのためには、プロバイオティクス(消化管の健康維持に有効な細菌)が有効です。
ヨーグルトに多く含まれていますが、玉ねぎ、ニラ、豆類などにも含まれています。
さらに、便の排泄を助ける食物繊維もしっかりと食事に取り入れるとよいでしょう。
ワカメ、里芋、大麦、キノコ類、野菜などから摂取できます。

それでも炎症を起こしてしまったときは、オメガ3脂肪酸、リコピン、クルクミンなど、炎症を抑える栄養素を摂取することをおすすめします。
オメガ3脂肪酸はサケ、サバ、ニシン、キャノーラオイルなどに含まれます。
リコピンはトマトやカボチャなど、クルクミンはターメリックから摂取できます。

また、好物であっても実は身体に合わない食材もあります。
下痢気味、おなかの調子が悪いなど、食事を記録しながら合わない食材を見つけていくことも大切です。
もともと食べ過ぎの傾向がある場合は、食事を抑えることから始めましょう。

おわりに

今回の記事では、肩こりが揉んでも良くならない場合があること、肩こりの原因、対処方法などを解説しました。
色々な原因があることに驚かれた方も多いのではないでしょうか。
また、これらの原因を解決するために肩だけを揉んでも、効果が得られない可能性があることをご理解いただけたと思います。

肩こりには重大な疾患が隠されていることもあるため、その他の不調もあるようでしたら、まずは病院で診てもらいましょう。
病院で重大な疾患が見つからなければ、今回ご紹介した対処法や食事を改善してみてください。
皆様が早く肩こりから解放されることを心よりお祈りします。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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