はじめに

健康には良いイメージのある納豆ですが、具体的にどんな良いことがあるのかと聞かれると分からない人も多いのではないでしょうか。

今回は、納豆に含まれる栄養成分、健康や美容面へのメリットを解説します。

納豆にはこんなにたくさんの栄養成分が!

納豆に含まれる主な栄養素やその効果について、項目別に説明します。

1)豊富なタンパク質
タンパク質は筋肉など体の組織を作る成分です。納豆のタンパク質は体内で合成することのできないアミノ酸(必須アミノ酸)を9種類すべて含んでいます。また植物性タンパク質も豊富に含むなど、とても良質なタンパク質なのです。

2)様々なビタミン(ビタミンB群、ビタミンE、ビタミンK、葉酸など)
納豆はビタミンA、C、D以外ほぼすべてのビタミンを含んでいます。ビタミンは体内の様々な代謝に使われる酵素を活性化させる働きがあるため、体の調子を整えます。疲労回復効果があります。

3)様々なミネラル(カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、銅、セレン、モリブデンなど)
ミネラルは体内の代謝を助けたり、骨や血液、ホルモンなどの材料となります。不足すると代謝の低下(太りやすい、痩せにくい)、疲れやすい・疲れが抜けにくい、肌の調子が悪くなるなど様々な不調につながります。

4)食物繊維
納豆などの豆類には食物繊維が豊富です。特に納豆は1パックに約3.5gの食物繊維が含まれます。1日の摂取目安量は20gと言われていますので、いかに多いかが分かります。便通を整えるためには不溶性食物繊維(腸壁を刺激する)と水溶性食物繊維(便を柔らかくする)の両方をバランス良く取る必要があるのですが、納豆はバランス良く含まれています。

食物繊維は腸壁を刺激して便通を整えます。また善玉菌を増やすことで腸内環境を整えます。そのため、便秘予防・改善、便秘に伴う肌荒れなどを改善します。
さらに、食物繊維には糖質の吸収を穏やかにして血糖値の急上昇を抑える作用、糖質を体外に排出する作用(特に水溶性食物繊維にあります)があります。

この他にも、コレステロールを直接体外に排出する作用、胆汁酸(肝臓でコレステロールを原料として作られる成分)を体外に排出する作用があり、二重に血液中のコレステロールを低下させる作用があるのです。

5)イソフラボン
イソフラボンとは女性ホルモンの一つであるエストロゲンに似た働きをします。適量(1日の上限摂取量は75㎎)を摂取することでホルモンバランスを保ってくれます。具体的にはエストロゲンの分泌が不足しているときにはイソフラボンがエストロゲン様の働きをし、逆にエストロゲンの分泌が過剰なときには、抗エストロゲン様作用(エストロゲンの働きを弱める)を発揮します。

6)レシチン
納豆に含まれるレシチンには皮膚の健康を保つ作用(ニキビやシミの予防、肌荒れの改善)、インスリンの分泌を活性化する作用、悪玉コレステロールを溶かす作用、ビタミンの吸収促進作用などの効果があります。

7)ポリアミン
ポリアミンとは細胞の新陳代謝や老化予防、慢性炎症の抑制に効果があります。体内で合成することができる成分ですが、20歳をピークに合成能力が低下します。そのため納豆などの食品からポリアミンを補うことで、これらの効果が期待できます。
またポリアミンは納豆の粒が大きいほど多く含まれているため、ポリアミンの効果を高めたい人は、ひき割りよりも大粒や小粒のものを選ぶと良いでしょう。

8)納豆菌
納豆は大豆を納豆菌で発酵させることによって作られます。納豆菌とは菌の一種で細胞分裂によって増殖します。納豆菌は腸内に入ると乳酸菌を増やし、腐敗した菌を排除します。また抗菌作用があるため、腸内環境を改善してくれます。

9)ナットウキナーゼ
納豆のみに含まれる栄養素です。詳しくは後述します。

納豆のネバネバのもと、ナットウキナーゼとは?

1)ナットウキナーゼとは

ナットウキナーゼとは納豆のネバネバした部分に含まれる酵素です。前述した納豆菌は細菌であり、ナットウキナーゼとは酵素の一種です。フィブリンと呼ばれる血栓の素となる成分を分解する酵素です。

2)ナットウキナーゼの働き

(1)血栓を溶解する
ナットウキナーゼは様々な角度から血栓を予防します。具体的には、フィブリン(血栓の主成分)を溶解する作用、ウロキナーゼ(血栓溶解酵素)を活性化させる作用、プラスミノーゲンアクチベータ(血栓溶解酵素を作る組織)を増やす作用。血栓溶解阻害物質を分解する作用などがあります。

また、実は納豆にはビタミンK2と呼ばれる血液凝固を促進する作用のある物質が含まれています。しかし、ナットウキナーゼにはビタミンK2が含まれないため、納豆そのものよりも強力な血栓溶解作用があるのです。

(2)血圧降下作用
ナットウキナーゼには最高血圧(収縮期血圧)、最低血圧(拡張期血圧)どちらも下げる作用があります。

(3)血流改善作用
 血流促進・改善作用があるため、肩こりの緩和などの効果も期待できます。

(4)血小板凝集抑制作用
ナットウキナーゼには血小板凝集抑制効果(血が固まるのを防ぐ)があり、特に摂取後6時間でその働きがピークに達することが分かっています。

3)ナットウキナーゼの効果

前述したようにナットウキナーゼには血液をサラサラに改善し、血圧を下げる作用があるため、様々な血管の病気を予防することができます。例えば心筋梗塞や脳梗塞、動脈硬化症、高血圧症などは、納豆を継続的に摂取することで予防・改善が期待できます。

4)ナットウキナーゼの効果を高めるための摂取方法

(1)夕食に食べる
ナットウキナーゼの効果は体内で8時間ほど持続すると言われています。血栓は深夜から朝にかけて出来やすいため、納豆を食べるなら夕食がお勧めです。

(2)加熱しないで食べる
ナットウキナーゼは熱に弱く、70℃以上で効果がなくなります。そのため、加熱調理しない、熱いご飯の上に乗せずに食べるなど工夫をしましょう。

納豆の効能(病気予防と美容)と食べ過ぎの注意点について

1)動脈硬化を予防する
ナットウキナーゼには血栓溶解作用があり、心筋梗塞や脳梗塞、動脈硬化症などの血管の病気を予防します。また、後述する高血圧、脂質異常、高血糖の状態が持続すると動脈硬化を進行させてしまいます。つまり、こういった状態を予防・改善することは間接的に動脈硬化を防ぐことにもつながるのです。

2)高血圧症、脂質異常症、高血糖の改善
ナットウキナーゼの血圧降下作用によって高血圧症を改善・予防します。また、イソフラボンやレシチンが悪玉コレステロールに、食物繊維がコレステロールに働きかけることで脂質異常症の予防・改善につながります。さらに、食物繊維には糖質の吸収抑制・排出促進があり、レシチンにはインスリン分泌を高める働きがあるため、高血糖状態や糖尿病の予防・改善をすることができます。

3)骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防
骨粗鬆症は骨に含まれるカルシウムが血液中に流出してしまうことによって、骨がスカスカになり、骨折などが起こりやすくなる状態です。骨粗鬆症を起こす原因は運動不足、日光に当たらないなど様々ですが、閉経によってエストロゲン分泌量が急激に低下してしまうことが、骨代謝に影響を及ぼすことも一つの原因とされています。したがって、イソフラボンを摂取することで骨粗鬆症を予防することができます。また、納豆に含まれるカルシウムも骨粗鬆症の予防に効果的です。

4)便秘を予防・改善する
食物繊維や納豆菌の働きによって腸内環境が改善し、便秘を予防・改善することができます。

5)女性の不調に効く
イソフラボンにはエストロゲンのバランスを整える作用があるため、乳がん予防、生理不順の解消、月経前症候群の緩和、妊娠しやすい体づくり、更年期障害の予防・改善など様々な女性の病気や不調に効果を発揮します。

6)肌のアンチエイジング効果
ポリアミンには老化防止、新陳代謝を促進する働きがあるため、くすみ、シミ・シワの予防に効果が期待できます。また、イソフラボンはポリフェノールの一種のため強力な抗酸化作用があり、老化防止、アンチエイジング効果があります。

注意点について(食べ過ぎには注意しましょう!)

(1)エネルギー量
納豆は1パック(50g)で約100 kcalほどあります。ご飯が茶碗に軽く一杯(100g)で168kcal、食パン6枚切り1枚で158 kcalということを考えると、比較的カロリーは高い食材と言えます。しかし、常識的な量、例えば1日に2パックくらいを摂取するのであれば、それが原因で肥満になることはないでしょう。むしろ納豆を適量摂取するメリットの方が多いのです。

(2)プリン体
また、痛風の原因となるプリン体という成分も比較的多く、1パックに約57㎎含まれます。ビール350mlに含まれるプリン体量は10㎎から21㎎、豚肉100gには70㎎から90㎎であることを考えると、こちらもやや多めと言えます。しかし、1日のプリン体摂取目安量は400㎎と言われており、1日2パック程度であればプリン体過多になることはありません。

(3)イソフラボン
イソフラボンの上限摂取量は75gとされており、これは納豆2パック(80㎎)で超えてしまう量なのです。また、イソフラボンは豆腐(木綿豆腐300gで84㎎、絹豆腐300gで76㎎)や豆乳(調整豆乳200mlで41㎎)などにも多く含まれており、特に健康に気を使っている人ほど上限量を超えてしまいがちです。イソフラボンはエストロゲンの過不足に応じてバランス調整をしてくれるものの、摂り過ぎはホルモンバランスを崩す一因となるため注意しましょう。

納豆を組み合わせた簡単レシピの紹介

ここでは簡単にできる納豆を使ったレシピを御紹介します。

1)ほうれん草と納豆のめんつゆ和え

(1)準備するもの
○ 納豆1パック(種類はお好みのものでOK)
○ ほうれん草1袋(150g程度)
○ めんつゆ(適量)

(2)作り方
① ほうれん草を茹でて、水気を切ります。3cmから5cmの長さに切ります。
② ①のほうれん草に納豆、めんつゆを入れて混ぜ合わせます。

まとめ

いかがだったでしょうか?

身近な納豆の秘密を知っていただけたと思います。
栄養や成分を知って、有効に摂取するようにしましょう。
レシピもぜひ試してみてください。
意外な変化が感じれるかもしれません。

監修

・救急医、内科医 増田 陽子

・救急医、内科医 増田 陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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