スマホ首とは

『スマホ首』とは、悪い姿勢で長時間続けてスマートフォンを使うことで、首周辺に痛みやこりが出ることを言います。

成人の頭部の重さは、おおよそ4~6kgもあり、それを支えている首や肩には、大きな負担がかります。
頭部を安定して支えるためには、耳の下に肩がくるように姿勢を保つ必要があります。

しかし、スマートフォンを使用しているときには、頭部が前方に出て首が落ちた姿勢になります。この姿勢は、首や肩に大きな負担をかけてしまいます。
スマホ首は1日でなるものではなく、毎日負担のかかる姿勢でスマートフォンを使用し続けることにより起こる反復性の症状です。

スマホの使い過ぎで起こる症状

頭部が前方に位置した姿勢は、首や肩の筋肉だけでなく、身体の他の部分にも大きな負担をかけます。
ここでは、スマートフォンの使い過ぎで起こる、さまざまな症状をご紹介します。

①首や肩のこり

スマートフォンを使っている際中は、首や肩の筋肉が緊張しています。長時間使うと、それだけ血流が滞るため、重だるいような痛みを感じます。
また、毎日習慣としてスマートフォンを長く使っていると、慢性的な首の痛みやこりにつながります。

②手のしびれ・麻痺

首の骨を『頚椎』と言い、その中を通る神経が圧迫されることを『頸椎症』と言います。
スマートフォンの使い過ぎで首が前に出た状態が続くと、頚椎に負担がかかります。やがて、頚椎の中の神経が圧迫され、首を動かしたときの痛みや、慢性的な手のしびれ、麻痺などを引き起こします。

③頭痛

首や肩の筋肉は、頭部の筋肉と関連しています。
そのため、スマートフォンを使うことで首や肩の筋肉が緊張すると、頭部の筋肉も筋肉します。これにより、側頭部が締め付けられるような痛みを感じることがあります。

④自律神経の乱れ

『自律神経』とは、循環器、消化器、呼吸器などの活動を24時間休まずに管理し続けている神経です。『交感神経』と『副交感神経』という2つの神経が切り替わり、活動時と安静時のバランスをとっています。

頚椎は自律神経の働きに大きく関わっており、スマートフォンの使い過ぎによる不良姿勢で、頚椎が歪んだり、ダメージを受けたりすると、自律神経が乱れてしまいます。
そうなると、2つの神経の切り替えがうまくいかず、めまいや不快感などの症状が現れます。

⑤眼精疲労

スマートフォンを長時間使用すると、眼に大きな負担をかけます。
特に、暗い部屋での長時間のスマートフォンの使用すると、見えにくさから画面を目に近づけるため、近眼にもつながります。
また、眼の疲労により、頭痛やめまいが起こることもあります。

身体に負担をかけないスマホの使い方

真っ直ぐな首をキープ

身体に負担をかけずにスマートフォンを使用するには、首の角度が重要です。
首の角度によって頚椎にかかる負担が変わり、首の角度が30度の場合は約18kg、60度の場合にはなんと約27kgの負担が頚椎にかかります。

スマートフォンを身体の下の方で持ちながら使うと、自然と頭部を下へ向けなければならなくなります。
そのため、スマートフォンを使用するときは、なるべく肩以上の高さまで持ち上げ、首が曲がらないようにしましょう。

持ち方を意識

スマートフォンの持つ位置を上げるには、スマートフォンを手のひらでしっかりと支える必要があります。

親指以外の指をスマートフォンの裏側にを置いて持つと、持ち上げた時にバランスが取れないため、スマートフォンの位置が自然と下に下がってしまいます。こうなると、下にある画面を診ようとして首に負担がかかります。
母指球と小指を使い、左右からしっかりと挟むと良いでしょう。

また、両手でスマートフォンを持ったり、スマートフォン用の台に置いたりすると、身体の負担が軽減されます。

長時間使用しない

用事がないのに、ふと気が付くと、スマートフォンを触っているということがあると思います。
家にいるときはスマートフォンを身の周りに置かないようにするなど工夫し、このような時間をなるべく減らしましょう。
最近では、1日の使用時間を設定できるスマートフォンも販売されています。時間を超えるとアラームで知らせてくれるので、使い過ぎ予防になるでしょう。

また、どうしても長時間使わなければいけない場合は、途中で休憩を入れてください。画面から視線をそらして遠くを見たり、姿勢を正してストレッチを行ったりすると良いでしょう。

首・肩のストレッチ

スマホ首の対策には、ストレッチがおすすめです。ストレッチを行うことにより、緊張した筋肉が伸ばされ、滞った血流も促されます。
筋肉が温まっている、お風呂上がりに行うと、さらに効率的です。

以下の3つのポイントを意識して行いましょう。
・痛気持ちいい強度で行う
・10秒間以上伸ばす
・力んで呼吸を止めない

首のストレッチ①

1. 立位または座位になり、背中を伸ばして肩の力を抜きます。
2. 下を見るように、ゆっくりと頭を前に曲げていきます。
3. イタ気持ち良いと感じるところで、10秒間キープします。
4. 頭を最初の位置に戻します。
5. 耳たぶを肩に近づけるように、ゆっくり横に倒していきます。
6. イタ気持ち良いと感じるところで、10秒間キープします。
7. 頭を最初の位置に戻し、反対側も同じように行います。

筋肉の伸びを感じにくい場合は、上の写真のように手で補助しながら行いましょう。

首のストレッチ②

1. 立位または座位になり、背中を伸ばして肩の力を抜きます。
2. ゆっくりと下を向き、顎を右肩に近づけるように右を向きます。
3. その位置から、今度は、顎を左肩に近づけるように左を向きます。
4. 振り子のように左右に頭を動かし、3往復します。

肩のストレッチ①

1. 立位または座位になり、背中を伸ばして両手を胸の前で組みます。
2. 息を吐きながら、手のひらが見えるように両手を前に伸ばし、両側の肩甲骨を外側に開きます。
3. 肩甲骨が伸びていると感じるところで、10秒間キープします。
4. 手をほどいてもう一度背中を伸ばし、今度は両手を腰の後ろで組み、手のひらを内側に向けます。
5. 息を吐きながら、胸を張って両手を後ろに上げ、肩甲骨を内側へ寄せます。
6. 肩の前面が伸びていると感じるところで、10秒キープします。

肩のストレッチ②

1. 椅子に座って背中を伸ばし、両側の指先をそれぞれの肩に当てます。
2. 肘を後ろ回しに動かし、肩甲骨を動かします。
3. 後ろに5周回したら、今度は前に5周回します。

肩のストレッチ③

1. 立位または座位になり、背中を伸ばします。
2. 息を吸いながら、両手を真っ直ぐ上に伸ばして万歳します。
3. 手のひらを前に向けたまま、肘を曲げて腕を体の横に下ろしていきます。
4. 肘が肩の高さになるまで下ろしたら、胸を反らし、5秒キープします。
5. 最初の姿勢に戻ります。
6. 手順1~5を5回繰り返します。

おわりに

スマホ首の症状や、スマホ首にならないためのスマートフォンの使い方、スマホ首改善のためのストレッチをご説明しました。

スマートフォンは、生活になくてはならないものになっていますが、使い過ぎによる身体への代償は大きいです。
使っている時の姿勢や使用時間を少し改善するだけで、首への負担が驚くほど減ります。
また、日頃から首や肩のストレッチを行うことでも、痛みやこりを予防・改善できます。

スマートフォンをうまく活用するためにも、スマホ首の予防・対策をしましょう。

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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