はじめに

皆さんは「鼻血」についてどのくらい知っていますか?
鼻から血が出るということは知っていても、原因などを知らない方もいるのではないでしょうか。
あまり知られていない「鼻血」について詳しくご紹介します。

鼻血で出血元とは

鼻血で出血する場所には、大きく分けて2つあります。
1つ目は鼻の入り口付近にある「キーゼルバッハ部位」と呼ばれる毛細血管の通り道です。
2つ目は鼻の奥の「動脈」です。
この2つの出血原因となる部位についてご説明します。

キーゼルバッハ部位の毛細血管

キーゼルバッハ部位は、鼻の入り口から1~2センチ位のところにあり、毛細血管がたくさん通っている粘膜の薄い部位です。鼻血の出血元は約80~90パーセントがこの部位からの出血です。

キーゼルバッハ部位は、鼻の穴の入り口に近いため、外部からの刺激を受けやすく、刺激を受けると毛細血管が傷つくため出血します。

鼻の奥の動脈

鼻血の出血元の約10~20パーセントは、鼻の奥の動脈が切れることによる出血です。
動脈は毛細血管に比べると血管がが太いため、血液が多く流れています。そのため、この部分が切れて出血してしまうと自分で止めることが難しいです。

また、鼻の奥の動脈から出血した場合、鼻の奥は口や喉とつながっているため口から血が出る場合もあります。

鼻血が出る原因

鼻血が突然出始めて驚いたことはありませんか?
鼻血は大人よりも子供の方が鼻血の出る確率が高いです。
また、鼻血が出る原因は大人と子供では異なります。それぞれの鼻血の原因について見てみましょう。

<大人で鼻血が出る原因>

1.ストレス・疲れ・寝不足

大人の場合、ストレスや疲れが原因で鼻血が出ることが多いです。仕事などで日々のストレスが溜まっている状態が続くと、鼻の中の毛細血管が切れやすくなるため、鼻血が出ることがあります。
また、ストレスなどが原因で起こる自律神経失調症という病気を患うことによっても鼻血が出やすい状態になります。

寝不足の場合には朝に鼻血を出すことが多いです。寝不足は疲れが解消しにくい体になってしまいますので規則正しい生活を心がけることが大切です。

2.乾燥

鼻血が出る原因に「乾燥」があります。特に冬場など空気が乾燥している季節は、鼻の粘膜も乾燥します。鼻の粘膜が乾燥すると、くしゃみや鼻水が出やすくなり、鼻粘膜が刺激を受ける機会が増えるため、鼻粘膜が傷つき鼻血が出やすい状態になります。

3.過度の飲酒や喫煙

過度の飲酒や、ヘビースモーカーの人は血圧や体温に急激な変化が加わりやすいため、鼻の毛細血管が切れやすくなり鼻血が出ます。

<子供で鼻血が出る原因>

1.季節の変わり目

子供は季節御変わり目や台風が接近する機会が多い時期などに鼻血が出やすくなります。
子供は大人に比べ体が未発達なため、気温や湿度などの急激な変化により熱を出したり、血圧が上がりやすくなります。その結果、体がについていけず鼻血が出ます。

2.風邪

風邪で熱が出たり、鼻水が出ても鼻血を出します。
特に体温調節機能が未熟な赤ちゃんや幼児などが出やすいです。

3.鼻の穴を傷つける

子供は鼻をほじってしまうことがあります。
その鼻をほじったときに、鼻の中の粘膜を傷つけてしまうと当然のことながら鼻血が出ます。
この場合、傷が完治する前にまた鼻をほじってしまう可能性が高く、鼻血を繰り返す原因になります。

4.刺激物の摂りすぎ

チョコレートが好きな子供に多い鼻血の原因は、チョコレートに含まれるカフェインによって体が刺激を受け鼻血が出ます。カフェインには、血圧を上昇させる作用があるため刺激の元となります。
チョコレートの他にもコーヒーや紅茶などにもカフェインは多く含まれるものや、塩分の摂りすぎも血圧が急激に高くなるため鼻血が出る原因になります。

5.アレルギー性鼻炎

アレルギーは、大きく分けてハウスダストなどが原因の「通年性アレルギー」と花粉などが原因の「季節性アレルギー」の2種類があります。
アレルギー性鼻炎になると鼻の内側で炎症が起こり、大人よりも鼻の粘膜が弱い子供は、粘膜が傷つきやすく血管が破れやすいため鼻血が出ます。

鼻血が出たときの正しい対処法

鼻血は何気なく過ごす日常で突然出てくることが多いですが、皆さんは鼻血を止めるために上を向く方はいませんか?
実はその方法は血が喉の方へ流れていき、喉や胃の中で流れた血が固まり窒息などの危険性があるのです。正しい鼻血の止め方と病気やケガが原因で起こる鼻血の対処法をご説明します。

一時的な鼻血を止めるためには「考える人のポーズ」

<鼻血を止める方法>
1.鼻の穴にガーゼやコットンなどを詰める
2.小鼻をつまむ
3.少しうつむき「考える人のポーズ」をする
4.そのまま15分間待つ

鼻血の原因が一時的なものであれば、この方法を使うことで鼻血は止まります。

鼻血が出る部位はほとんどの場合が上記でご説明した「キーゼルバッハ部位」です。そのためキーゼルバッハ部位である小鼻の辺りを指で押さえて圧迫することで毛細血管を圧迫でき止血につながります。また、うつむきの体勢のため血が喉へ流れる心配がありません。

病気やケガが原因の鼻血は病院に行きましょう

鼻血の出たとき、ほとんどの場合は上記の方法で止めることができますが、病気やケガが原因で起こる鼻血はこの方法では止めることができません。

原因によっては出血量が大量であったり、1時間以上出血が長引く場合があるため、病気やケガが原因で起こる鼻血の場合は、病院で診てもらうことをオススメします。その際、鼻血以外の体の異変などがないかを事前にチェックをして病院で伝えることで、鼻血が少しでも早く止血することにつながるでしょう。

鼻血で病院を受診するべきか見分けるチェックリスト

「考える人のポーズ」を試しても鼻血が止まらない場合、病院へ受診することを考えた方がよいかもしれません。鼻血で病院に受診すべきかどうかを決めるポイントをご紹介します。

1.止血して15分以上たっても鼻血が止まらない

止血して15分以上たっても鼻血が止まらない場合は病院に行くようにしましょう。
鼻血はほとんどの場合「キーゼルバッハ部位」で出血していることが多いですが、長時間続く場合は他の部位で出血している可能性があります。

2.大量の出血

止血しても大量に出血してくる場合は病院に行くようにしましょう。
通常、毛細血管が切れて鼻血が出ている場合は止血をすれば出血が止まります。ですが、鼻の奥の動脈などから出血している場合は止血しても止まらない可能性があります。

3.出血量が多く顔色が悪い

大量に出血しているだけでなく、顔色も悪くなっている場合はすぐに病院に行くようにしましょう。
大量に出血をしていることが原因で、貧血など他の症状を引き起こしている可能性があります。

4.数時間おきに大量に出血する

一度止血できても、数時間おきに大量の出血を繰り返す場合は病院に行くようにしましょう。
出血している部位が、鼻ではなく体の中の他の部位の可能性があります。
これらの症状が1つでもあった場合は自分で止血することが難しいため病院に受診した方がよいでしょう。

まとめ

鼻血は大人から子供まで誰にでも起こりえます。
鼻血の対処法について正しい知識を持つことで、自分や周りの人で鼻血が出た場合に早目の対処をすることができます。ぜひ、いざというときのために覚えておいていただけたらと思います。

監修

・総合診療医 院長 豊田 早苗

・総合診療医 院長 豊田 早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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