はじめに

足のむくみに悩まされている女性はたくさんいます。

マッサージをしてみたり、弾性ストッキングを履いたり、サプリメントを飲んだりと自分なりに色々な方法でむくみの予防、解消に努めておられる方も多いのではないでしょうか?女性にとってむくみは身近なもので、あまり病気を疑うことはないないかもしれません。

しかし、なんらかの疾患のためのむくみである場合もあります。そこで今回はむくみが現れる病気について、またむくみの予防法についてまとめました。

むくみとは

むくみは正式な医療用語では『浮腫』と言います。浮腫は、体の細胞の中の水分が増えて腫れている状態で、
浮腫を起こしている部位を指などで押さえると、パンパンに腫れたようになることや(体が疲れている時になりやすいむくみ)、離しても数秒以上へこんだままになる(心臓疾患や他の臓器の疾患によることが多いむくみ)のが特徴です。

この細胞の中の水分を『細胞間質液』と言います。細胞間質液は、血液の一部の水分が血管からでてきて細胞の中に入ったもので、細胞に酸素や栄養を運ぶ役割、また細胞内の老廃物を細胞間質液の中に取り込んで細胞外へ排出する役割を担っています。

細胞間質液の出入りのバランスがとれているとむくむことはないのですが、このバランスが崩れて細胞内へ入る水分が増えたり、細胞外へうまく排出されなくなってしまったときやアルブミンと呼ばれるたんぱく質の1種が様々な原因により、細胞内に流れ出し外に出ていかない時にむくみとなって現れます。このバランスが崩れる原因は、次の項で述べるような病気であることもありますが、下半身の冷えや筋肉が衰えていること、長時間立ちっぱなしでいることなどから起こることもあります。

次の項では、足のむくみを起こす病気について詳しく説明していきます。

足のむくみから考えられる病気とは?

足のむくみは、冷えや運動不足、長時間の立ち仕事といった一時的な環境要因や生活習慣が原因となっている病的でないものもたくさんありますが、むくみを症状にもつ疾患が原因となっている場合もあります。
ここでは、むくみを伴う疾患について説明していきます。

下肢静脈瘤

心臓から送り出された血液は、足の先に届いた後、ふくらはぎや太ももの筋肉がポンプの役割となって心臓へと送り返されます。しかし、運動不足などで下半身の筋力低下が起こっているとそのポンプがうまく機能しなくなります。また、血管には本来血液が逆流しないように弁がついていますが、弁が機能しなくなっているとさらに足に血液が滞ってしまいます。それによって『下肢静脈瘤』が起こります。

主な症状は、慢性的な足のむくみのほかに、だるさ、熱っぽさ、鈍痛、かゆみなどがあり、見た目にも膝裏から膝下中心に静脈がぼこぼこと浮き上がります。

肝臓・肝臓の疾患

血液内の水分量を調節するために血液内に含まれる成分に『アルブミン』というタンパク質の1種である物質があります。この『アルブミン』を生成しているのが肝臓、そして『アルブミン』をろ過しているのが腎臓です。肝臓や腎臓の機能が低下している場合、血液内のアルブミンの量に異常を来たすため、水分量の調節もうまくいかず、むくみが生じてきます。

肝臓や腎臓由来のむくみの場合、足だけでなく体の他の部位にもむくみを生じることが多いという特徴があります。

心不全

心臓自体の働きが弱くなる『心不全』によっても足のむくみを生じる場合があります。血液を全身に送り出している心臓のポンプ機能が低下すると、血液に勢いがなくなるため、血液が足から心臓に戻る力も弱くなります。これが、足のむくみの原因となります。とくに心臓疾患の場合は、指でむくみを押すと跡がつく痕跡浮腫(こんせきふしゅ)が特徴です。むくみに繋がる他の疾患と比べても命の危険に直結する重大な疾患なので、疑われる場合は早期に病院を受診することが必要です。

むくまないための予防法

むくまないための予防として漢方やサプリメントが使用されることが多々あります。
もちろん効果的かと思いますが、まずはむくみの原因となっている生活習慣を見直し、それらの要素をできるだけ取り除くことが健康のために大切なのではないでしょうか?

適度な運動

前述したように、下半身に下りてきた血液はふくらはぎや太ももの筋肉を中心に下半身の筋肉がポンプの役割をすることによって心臓の方へ送り戻されます。運動不足で筋肉が落ちてしまっているとその機能が低下するため、うまく血液が心臓に戻されず、足の方にたまってしまいます。ですから普段から適度な運動をして、血流促進、下半身の筋肉を維持することがむくみの予防になります。

肝臓や腎臓に負担をかけない食生活

健康な肝臓や腎臓でいるためには、肝臓や腎臓に負担をかけないような食活が大切です。アルコールや塩分のとりすぎはむくみにつながるので気をつけましょう。

十分な休息

腎臓は絶えず血液を浄化し、尿を生成しているため休まる時間がありません。横になってリラックスした姿勢になると、腎臓の血流が増して腎臓を休められるうえ、腎臓の機能も高めることができます。疲労をため込まないように、適度な休息をとることもむくみの予防となります。

また、むくむからと言って脱水症状になってしまっても腎臓に大変な負担がかかります。そのため、定期的な水分の補給は必要です。そのほか、普段の生活で簡単に気を付けることができることとしては、体を冷やさないこと、長時間の立ちっぱなしを避けることなどがあげられます。

おわりに

『むくみ』の状態と原因、予防について理解は深まったでしょうか?
ただのむくみと思っていても、重大な疾患が隠れていることもあります。
自宅でのケアを一定期間行っても改善されない場合は、是非早めの病院受診をおすすめします。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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