はじめに

健康や美容に関心の高まる中、骨盤矯正やダイエットなど様々な理論や方法が紹介され、自分にとって何が適しているのかわからないといった状態になっている方は多いのではないでしょうか。
ここでは、そういったメソッドの1つである『ピルビスワーク』の効果ややり方について詳しく説明していきます。

ピルビスワークとは

骨盤は体の中心にあり、重要な役割をたくさん持っています。大切な臓器を守ることのほか、体の中心に位置し、上方へは背骨や頭蓋骨、下方へは脚の骨とつながり体を支えること、血管やリンパの通り道となることがあります。ですから、骨盤が歪んで開いた状態になってしまうと、臓器の位置が下がり下腹部がぽっこりとでてしまいます。内臓の動きが滞り、女性の場合では生理痛の悪化や生理不順を引き起こすこともあります。また、体の中心である骨盤が歪むことでその末端の歪みにつながり、肩こりや首・腰の痛み、股関節や膝関節の不調につながっていきます。血管やリンパの流れが悪くなることで、コリやむくみを引き起こし、セルライトがつきやすくなります。

ピルビスワークとは、上記したような悪循環を断ち切るために日本ピルビスワーク協会が考案している独自の骨盤体操のことで、『呼吸法』と『体操』から構成されています。

ピルビスワークはどんな効果があるの?

骨盤が歪み、動きが悪くなることで起こる弊害は上に述べた通りです。
ピルビスワークを行い、骨盤の歪みを整え動きが改善されると、内臓や四肢末端の動きもそれに伴ってスムーズになります。内臓の動きがよくなると、特に女性では生理痛の改善や、妊娠しやすい体づくりにも効果があります。
また、全身の血流やリンパの流れが良くなるので新陳代謝が上がり、痩せやすい体になるほか、酸素が全身に行き渡り、老廃物も排出するので主観的に元気になります。
さらに、一連のストレッチ体操では筋肉をゆっくりと伸ばすことで筋肉の動きがしなやかになるだけでなく、皮膚の色つやも改善されます。

ピルビスワークのやり方は?

日本ピルビスワーク協会では、独自の呼吸法と体操を合わせてピルビスワークの内容としています。

『骨盤呼吸法』
この呼吸法を身につけることで体内により多くの酸素が行き渡り、循環改善や老廃物の排出を行います。
1. 基本姿勢
両膝を立てて仰向けに寝ます。両手を頭の後ろに置き、背骨をまっすぐにして、口や目を閉じたらリラックスします。

2. 鼻から息を吸う
口を閉じて鼻から息を吸います。このとき、おなかを膨らませ、背骨がアーチになるようにお尻を床の方に突き出すようにします。肩や首には力が入らないようにしましょう。

3. 口から息を吐く
吸う時より長くゆっくりと口から息を吐きます。このとき、お尻の穴をキューっと締め、お腹がぺたんこになるようにへこめます。背中は床に押し付けるようにします。

次に、『骨盤呼吸法』とともに行う体操として、毎日5~15分で行えるストレッチがあります。骨盤を中心にストレッチすることで、体の歪みを整え、体調不良改善、気の流れを高める効果があります。
1. 片脚引き寄せ-1
『骨盤呼吸法』の基本姿勢と同じように両膝を立てて仰向けに寝ます。そのまま、片方の膝を曲げて自分のお腹の上で抱えるようにします。しっかりと引き寄せて、踵が座骨の上にくるようにし、つま先、踵、膝、乳頭、肩までが一直線になるのが理想です。この姿勢がとれたら30秒キープします。

2. 骨盤ひねり
仰向けの基本姿勢から、左手を体の横に開き、顔も左に向けます。左脚を体の右側にくるようにひねり、右手で左膝の外側を軽く押さえます。左膝は90度になるようにします。左の臀部から腰のあたりが伸びる感じがあればよいでしょう。この状態で30秒キープします。左腰が終わったら、右腰も行ってください。

3. 片脚引き寄せー2
1.で行った片脚引き寄せー1の下にしている方の膝を伸ばした状態で同じストレッチを行います。注意点は1.と同じで30秒キープしましょう。

4. 腕回し
2.の骨盤ひねりのポーズから両手とも横に開いて床の上に置きます。そこから、左手を伸ばした状態でゆっくり回します。6回回したら、骨盤ひねりの方向を反対にし、腕回しも同じように反対で行います。

5. 脚回し
両手を横に開き、仰向けに寝ます。膝を伸ばした状態で左脚が右脚より上になるようにし、腰をひねりながらクロスします。そこから左脚は床から少し浮いたままの状態で、時計の針のように右脚の方に向かっていきます。右脚を越したら腰のひねりも戻し、左膝を曲げながら上に引き上げます。そのポーズが終わったら両手を体の横に開いた状態に戻します。左脚は、膝を立て、左股関節の左側に置くように横にいっぱいに開きます。このとき、つま先の向きは外側になるようにします。息をゆっくり吐きながら肛門を締めるようにすることで骨盤を締めます。最後は開いた左膝を右膝にくっつけるように内側に脚を倒します。膝の内側と内くるぶしが床につくようにしては起こすを6回繰り返したら、この流れを反対の脚でも同じように行います。

ピルビスワークを行なった方が良い人は?

ピルビスワークには様々な効果がありますので、特別な条件の方を除いてはどなたにやっていただいてもメリットがありますが、その中でも特にピルビスワークをおすすめする方についてご紹介します。

1. 肩こりや腰痛、膝痛などの整形外科疾患のある方
肩こりや腰痛などは姿勢の問題が大きく関与しています。骨盤が歪んでいれば、背骨も左右や上下に歪みが生じますし、その歪みを補うために無理な姿勢をとったりしてしまいます。そうすることで、肩や腰周囲の筋肉が硬くなってしまい、痛みを伴ってきます。また、骨盤の位置や傾きがよくないと、股関節や膝関節にも負担がかかってきてしまいます。ですから、ピルビスワークで骨盤の歪みを整えることがこれらの痛みの軽減につながるのです。

2. 冷えやむくみ、新陳代謝の低下にお悩みの方
ピルビスワークによって骨盤の動きをよくすることで、内臓、さらには四肢末端の動きがよくなり、血流やリンパの流れも改善します。ですから、そういったことが原因となる手足の冷えやむくみ、新陳代謝の低下により痩せにくい体質になってしまった方は改善することができます。結果として、ダイエット効果にもなるのです。

3. 妊娠を望む方
不妊というと生殖器の異常やなんらかの疾患を考えがちですが、そのような原因がない場合にも妊娠しにくい体になっていることがあります。ピルビスワークを行い、内臓の血流や動きをよくしたり、子宮の位置を整えることも、妊娠しやすい体づくりの1つになるので、妊娠を希望する方にもおすすめです。ただし、妊娠初期の不安定な時期はピルビスワークをおすすめすることができませんので、妊娠の有無が定かでない場合は、確認できるまで控えるようにしてください。また、安定期に入った場合は、妊婦対象のピルビスワークがありますので、スムーズな出産に向けて体を整える意味でも指導者のもと行うことをおすすめします。

4. 出産後の方
産褥期を終えたら少しずつ日常生活の動きを取り戻していきますが、約10か月かけて開いた骨盤はそう簡単には戻りません。しかも、出産後すぐはまだ骨盤周囲の靭帯も緩いため、その時期に骨盤が歪むような動作を繰り返していると歪んだ状態で固定されてしまいます。ですから、出産後1か月が経過して、産科医から経過が順調で徐々に日常生活の動きを行ってもよいという指示をもらったら少しずつピルビスワークを開始していきましょう。ただし、無理は禁物で、一連の動作によって痛みがでないかなど確認しながら専門家の指導のもとで行ってください。

前述したとおり、特別な疾患がある方、医師から安静を指示されている方、妊娠中の方、産褥期の方、ピルビスワークにおける一連の動作で痛みがでる方は、専門家の指示を受ける必要がありますので、ご自分の判断でピルビスワークを開始することは避けてください。

まとめ

ピルビスワークは、骨盤を整えることで全身を健康に、美しくしていくことを目的としたメソッドです。多くの方にメリットがあると考えられますが、適応のある目的に対して正しいやり方で継続して行った場合に効果が得られるものです。まずは、ご自分の現在の状況や目標を専門家に相談し、適切な方法でピルビスワークをスタートしていただくことをおすすめします。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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