はじめに

近年ではダイエットや健康志向が流行っていますが、実は肥満者の割合も意外と多いのです。平成27年の厚生労働省の発表によると、肥満者(BMI≧25kg/m/m)の割合は、男性で29.5%、女性で19.2%を占めることが分かっています。つまり、2~3人に1人は肥満者であるといえます。またメタボの割合としては40代以上で急激に高くなる傾向にあり、40歳~70歳で男性は2人に1人、女性でも5人に1人がメタボだという報告もあります。

このメタボですが、いったいどのようにしてメタボになってしまうのでしょうか?メタボの原因や、メタボ解消に効果的な運動と注意点などをご紹介します。

メタボリックシンドロームとは

「メタボ」と聞くと、太っているひとのことを想像しがちですが、ただ太っているだけではメタボにはなりません。メタボは正式には「メタボリックシンドローム」あるいは「メタボリック症候群」といい、お腹が出ている「内臓脂肪型肥満」のことを指します。

メタボの診断基準としては、腹囲が男性で85㎝以上、女性で90㎝以上であることに加えて、以下の3点のうち2点を満たすものをメタボとされます。

1. 血圧130/85mmHg以上
2. 中性脂肪150mg/dl以上またはHDLコレステロール40mg/dl未満
3. 空腹時の血糖値110mg/dl以上

これらの肥満・高血圧・脂質異常症・糖尿病の合併は、以前は「死の4重奏」とよばれるほど健康に悪影響を及ぼしており、特に脳卒中や心筋梗塞などの原因となる動脈硬化を悪化させる原因ともなります。そのため、メタボと診断されたら、早めに対処することが望ましいです。

メタボの原因

メタボになる原因として、生活習慣が大きく関係しているといわれています。

食生活

食生活においては、栄養バランスの偏りや間食など、食生活が乱れることが原因の一つとなります。

・味付けの濃い食べ物が好き
・甘い食べ物やこってりした食べ物をよく食べる
・一日の摂取カロリーが高い
・暴飲暴食をしてしまう
・野菜や果物など食物繊維をあまり食べない
・就寝の2時間以内に食事をとっている
・朝ご飯を食べない

日ごろ、上記のような食生活を送っていませんか?味付けの濃いものを食べ過ぎることで塩分摂取量が過多となり、高血圧や動脈硬化の原因ともなります。また甘いものの食べ過ぎは血糖が上がることで糖尿病のリスクがあがり、さらにこってりした脂質の多いものの食べ過ぎは脂質異常症につながる危険性があります。

また、肥満は必要以上にエネルギーを摂取することにより、余分になったエネルギーが脂肪として蓄えられるものです。そのため、一日の摂取カロリーがオーバーしたり、暴飲暴食をしたりすることは肥満につながります。特に眠っている間は活動中に比べてエネルギーの使用が抑えられ、脂肪として蓄えられやすくなります。そのため、就寝の2時間以内に食事をとることは、エネルギーが使用される前に眠ってしまうことになるので、体内に脂肪として蓄積されやすく、太りやすくなってしまうので要注意です。

運動不足

運動不足もメタボにつながります。通常の食事量であれば、日常生活の動きや基礎代謝でうまくエネルギーを消費できるのですが、過剰に食べてしまうとその分のエネルギーが消費されず、体内に脂肪として蓄積されてしまいます。

また、運動不足によって筋肉量が減り、基礎代謝も下がってしまいます。そのため、日ごろから運動をしない生活を続けていると、基礎代謝も下がり脂肪がつきやすくなってしまうという悪循環に陥ってしまいます。

ストレス

メタボの原因にはストレスも大きく関係しています。現代はストレス社会といわれるほどストレスが身近にある社会です。そのため、ストレスを抱えた人はかなり多いのではないでしょうか?ストレスがたまると、つい過食をしてしまったり、甘いものやしょっぱいものが食べたくなることがある人もいるでしょう。それがバランスの悪い食生活につながることもあります。

また、ストレスがたまると質のよい睡眠が得られなかったり、十分に眠れないこともあるかもしれません。実は睡眠の質と量はメタボと緊密な関係にあるのです。ある研究では、睡眠時間が4時間以下のグループは、睡眠時間が7~9時間のグループに比べて73%も肥満になりやすいという結果も出ています。このように、睡眠もメタボに大きな影響を与えているのです。

メタボ解消に効果的な運動

メタボ解消のために効果的な運動はずばり有酸素運動です。有酸素運動とは、運動する際に酸素を必要とする運動で、主にウォーキングやランニング、サイクリング、そしてスイミングなどがあげられます。

有酸素運動は最初の20分間は、酸素を体内に取り込むことでまず糖質を燃やし、エネルギーに変換します。そして20分を超えると今度は脂肪を燃やし始めます。そのため、メタボ解消のための運動としては、有酸素運動を少なくとも20分以上行うことをお勧めします。またできるだけ継続して毎日行う方が効果的なので、あまり無理しすぎないことが大切です。運動強度としてはつらくなりすぎるのではなく、軽く汗ばむ程度がちょうどよいとされています。

有酸素運動を日常生活に取り入れることも効果的です。例えばいつも電車通勤であれば、1駅分だけ歩いてみる、エレベーターやエスカレーターではなく階段を使う、だらだらと歩くのではなくしっかり足をあげて歩いてみるなど、できるところから始めてみましょう!

メタボを運動で解消するときの注意点

まず運動する前後には、必ず準備体操と整理体操をするようにしましょう。運動不足だった身体を急に動かすと、身体に負担がかかってしまう場合があります。そのため、屈伸やストレッチなどを軽く行ってから運動を始めましょう。

また、運動を始める際には最初は軽めの運動から始めることをお勧めします。急に激しい運動を始めると、内臓や循環器にも負担がかかり、血圧の上昇や、脳梗塞、心筋梗塞などの原因となることもあります。そのため、軽い運動から始めて、徐々に運動強度を増していきましょう。

そして、水分補給はこまめにするようにしましょう。メタボの人はドロドロ血になっている場合が多く見られます。水分が不足するとさらにドロドロと流れにくくなってしまい、これも高血圧などにつながる危険があります。そのため、運動する際は準備運動から始めて、こまめに水分を補給しながら、無理のない程度に運動するようにしましょう。

おわりに

メタボは身体のあらゆる部分に悪影響をもたらします。それを改善するには有酸素運動がお勧めです。しかし、急にがんばりすぎるのではなく、自分のペースで気持ち良いと感じられる程度から始めてみましょう。運動の習慣をつけることが難しければ、日常生活で身体を動かす工夫をして、生活の中に運動を取り入れてみてください。それがメタボ解消への第一歩となります!

監修

・総合診療医 院長 豊田早苗

・総合診療医 院長 豊田早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

関連する記事

関連するキーワード

著者