子供の歯の生え変わり時期

乳歯だけで構成された歯並びを乳歯列、永久歯だけの歯並びを永久歯列といいます。
その中間、つまり乳歯と永久歯が混在している歯並びを混合歯列と呼び、その時期を混合歯列期といいます。

生え変わりの期間

一般的に、最初に生えてくる永久歯は、第一大臼歯、いわゆる6歳臼歯です。「6歳」臼歯と呼ばれるように6歳前後に生えてきます。
ただし、これには個人差があり、6歳臼歯が生えてくる前に、次の永久歯である下顎の中切歯(下顎の真ん中の歯)が生えてくることもあります。これは珍しいことではないので、順番が前後しても心配することはありません。
そして最後まで残る乳歯は第二乳臼歯、つまり6歳臼歯の手前側の乳歯で、その時期は11歳半頃です。
これらをまとめると、生え変わりの期間は6歳頃から始まり、11歳半頃に終わると考えられます。

子供の歯の抜ける順番

乳歯は、前から順に『乳中切歯』『乳側切歯』『乳犬歯』『第一乳臼歯』『第二乳臼歯』といいます。歯医者さんに歯を診てもらった際にアルファベットを言っている光景を見たことがある人は多いと思いますが、歯科医師や歯科衛生士などは、乳中切歯、第一乳臼歯とは呼ばず、代わりにアルファベットの記号を当てはめてよ呼ぶのが通例です。
乳中切歯はA、乳側切歯はB、乳犬歯はC、第一乳臼歯はD、第二乳臼歯はEといった具合です。例えば、左側上顎第一乳臼歯は「左上D」、右側下顎乳犬歯は「右下C」といいます。

乳歯の抜ける順番

乳歯は下顎のAから抜け始めます。

『下顎A→下顎B→上顎A→上顎B→下顎C→下顎D→上顎D→上顎C→下顎E→上顎E』

このような順序で乳歯は抜けていきます。
ただし、個人差がありますので、多少順番が前後することもあります。

最初に抜ける下顎のAは、6歳頃に抜けます。そして最後に抜ける上顎のEにいたっては11歳半頃なので、生え変わるのに5年あまりの歳月が必要とされることがわかります。

生え変わりの悩みとトラブル

『みにくいアヒルの子』時期

前歯の乳歯が永久歯に生え変わる時期、歯と歯の間に隙間が広がって歯並びが悪くなったように見えます。また、乳歯が抜けて永久歯が生えてくるまでの期間、前歯が無くなるので見ためがとても悪くなります。
この時期を「みにくいアヒルの子」時期といいます。童話では、アヒルの子供として育てられた子供が、やがて成長して美しい白鳥になります。この話になぞらえて、一時的に歯並びが悪くなったように見えても、永久歯が生え揃うときれいな歯並びになるという意味で、こう呼ばれるようになりました。

乳歯が抜ける前に永久歯が生えてくるケース

乳歯が抜ける前に、永久歯が顔を出してくることがあります。下顎の前歯部に多いのですが、どの歯でも起こりえます。
下顎の前歯部など自然な生え変わりの順序の関係で、乳歯より先に永久歯が生えてきた場合は、そのまま経過観察になります。しかし、虫歯などの原因で抜けきらないうちに生えてきたような場合は、乳歯を抜かなければなりません。

前歯の永久歯が内側から生えてくるケース

これも下顎の前歯に多いのですが、下顎の前歯の乳歯の内側から永久歯が生えてくることがあります。しかし、心配ありません。下顎の前歯は、内側から生えてきて、舌が前に押して歯がきれいに並んでいくのです。
内側から生えてくると驚くことでしょうが、自然な現象である場合が大半なので、さほど気にする必要はありません。

生えてきた永久歯が黄色いケース

生えてきたばかりの永久歯が、隣に生えている乳歯と比べて黄色く見えることがあります。
生えてきたばかりなのに、もう虫歯になったのかと心配される方がいらっしゃいますが、これも心配ありません。
実は、乳歯の色は本当に白いのですが、永久歯は少し黄色みがかった白色をしているのです。
ですから、隣に生えている乳歯の方が永久歯よりも白いので、虫歯のように見えてしまうわけです。
ほとんどの場合は問題ありませんが、心配なときは歯科医院で相談されるといいでしょう。

なかなか乳歯が抜けないケース

後に生える永久歯がまったくない、ということが時々あります。レントゲンで乳歯の根の吸収状況や、永久歯の有無を確認する必要があります。そしてこの場合、乳歯を大事に管理します。
そして、万一抜かざるをえない場合は、ブリッジやインプラントなどを考えることになります。

生え変わりのトラブルの原因

歯みがきがしにくくなる

抜ける直前の乳歯は、歯根が吸収されてなくなってくるので、グラグラと動いています。
歯磨きをする時、歯ブラシが当たると動いて痛い、もしくは気持ち悪いので歯磨きをどうしても嫌がります。
また、抜けた直後は歯ブラシが当たるとすぐに出血するので、やはり歯磨きを嫌がる原因につながります。

乳歯の虫歯の放置

乳歯はいずれ永久歯に生え変わるからと、虫歯を放置するのはよくありません。
むし歯になったままの乳歯は、生え変わりの時期に自然に抜けなくなることがあるからです。
そのために、永久歯の歯並びにゆがみが生じる恐れがあります。
また、乳歯の虫歯が進行して、歯根の先に膿が溜まると、その先にある永久歯に悪影響を及ぼします。
生えてきた永久歯の形や色がおかしくなる原因につながります。

虫歯になりやすい

生えてきた直後の歯は、実はとても虫歯になりやすい傾向があります。これは乳歯でも永久歯でも同じです。
生えて間もない歯を電子顕微鏡で覗いてみると、その表面には微細な穴が無数に開いています。この穴に汚れがつきやすい上に、歯自体も虫歯菌が産生する酸に溶かされやすく、虫歯になりやすいのです。
生えてからおおむね2年間は、この状態が続くので注意が必要です。

生え変わりのトラブルの対策と予防

乳歯から永久歯への生え変わりに際してのトラブルを予防するためにはどうすればいいのでしょうか?

虫歯を放置しない

虫歯を見つけたら放置せずに、小さいうちに歯科医院で治してもらいましょう。

虫歯にならないようにきちんと歯磨きをする

子供も歯磨きをしないと虫歯になります。毎食後、子供自身が歯を磨く習慣をつけ、自分で磨いた後は必ず親が仕上げみがきを受ける習慣を身につけさせましょう。
そして、虫歯予防にフッ素を使うようにしてください。ジェルタイプ、もしくは洗口剤を寝る前に使うことをおすすめします。

癖を治す

口で呼吸をする、指しゃぶりをする、舌を前に伸ばす、こういった癖は、歯に悪影響を及ぼします。特に、前歯の歯並びを悪くさせる要因のひとつです。
もし、子供をみていて、このような癖を認めたら、止めさせるようにしてください。

定期的に歯科医院で診てもらう

定期的に歯科医院を受診して、歯磨きがきちんとできているか、虫歯は生じていないか、チェックしてもらいましょう。
そのとき、歯の汚れを取り除いてもらうだけでなく、歯磨きの方法を指導してもらったり、フッ素を塗ってもらったりするといいでしょう。

まとめ

子供の乳歯は永久歯に生え変わっていきますが、この生え変わりの時期は、いろいろ問題が生じやすい時期でもあります。
トラブルを防ぎ、永久歯にしっかりとバトンタッチするためにも、乳歯の虫歯は治療を受け、歯磨きもしっかり行ない、定期的に歯科医院で診察してもらうようにしましょう。

監修

・日本口腔外科学会専門医、日本口腔科学会認定医 見立英史

・日本口腔外科学会専門医、日本口腔科学会認定医 見立英史

専門分野
歯科、口腔外科

経歴
九州大学歯学部卒業。2003年歯科医師免許取得。2009年博士号(歯学)取得。九州大学病院顎口腔外科医員。2011年医療法人仁慈会西原歯科勤務。2013年九州大学病院顎口腔外科助教。2016年福岡歯科大学口腔外科助教。2018年長崎大学病院 顎口腔再生外科

資格
歯科医師免許
日本口腔外科学会専門医
日本口腔科学会認定医

所属学会
日本口腔科学会
日本口腔外科学会
日本口腔腫瘍学会

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