はじめに

皆さんはしゃっくりについてどのくらい知っていますか?
しゃっくりについて今まで深く考えたことがない方もいるかもしれません。

しゃっくりにはさまざまな原因や種類があるのです。
あまり知られていないしゃっくりについて詳しくご紹介していきます。

しゃっくりが起こるメカニズムと種類

しゃっくりが起こるメカニズムは数種類あります。
体がどのような状態のときにしゃっくりが起こるのかを見ていきましょう。

しゃっくりが起こるメカニズム

しゃっくりを起こすように体に信号を送っているのは脳の中の「延髄(えんずい)」という部位です。
「延髄」は、脳の中にある脳幹の1番下の部分で、脊髄とつながっています。その「延髄」にある網様核という部分には、呼吸の調節やくしゃみなどを起こす中枢があり、しゃっくりを起こす中枢もその部位にあります。

脳髄からでた信号は、「迷走神経」と「横隔神経」と言う神経に送られます。
「迷走神経」は声門に届いて、声門を閉じさせます。
「横隔神経」は横隔膜に届いて横隔膜を収縮させ、息を急激に吸い込む運動をさせます。

この2つの動きが絶妙なタイミングで起こったとき、しゃっくりが出ます。

しゃっくりの種類

しゃっくりは、しゃっくりが起こるしくみや原因で4つの種類に分けることができます。
あまり知られていないしゃっくりの種類についてご紹介します。

1.中枢性しゃっくり

脳や脊髄などの中枢神経が刺激を受けることによって起こるしゃっくりです。
脳腫瘍や脳卒中などの症状として現れます。

2.末梢性しゃっくり

中枢神経から伸びている末梢神経が刺激を受けることによって起こるしゃっくりです。
肺炎やぜんそくなどが引き金になっています。

3.横隔膜刺激性しゃっくり

横隔膜に関係する部分の病気が、横隔膜を直接刺激して起こるしゃっくりです。
胃炎や胃がん、十二指腸潰瘍などの消化器系の病気が引き金となっています。また、腎臓の病気でも引き金になることがあります。

4.消化器刺激性しゃっくり

急いで食事をしたり、暴飲暴食など消化器官にストレスを与えることによって起こるしゃっくりです。
日常生活でしゃっくりが出るのは、ほとんどの方が消化器刺激性しゃっくりです。

「耳押し法」によるしゃっくりの止め方

人前で突然しゃっくりが起こると恥ずかしいと感じる方もいるのではないでしょうか?
しかし、必死に止めようとしているとさらに聞き苦しいしゃっくりが出てしまうこともあります。
いざというときに困らないために、しゃっくりを止める方法をご紹介します。

耳押し法のやり方

しゃっくりを止めることができる耳押し法のやり方はとても簡単です。

1.左右の耳にそれぞれ人差し指を入れます
2.耳の奥を指で約30秒~1分間押し続けます
3.30秒ほどでしゃっくりが止まります

耳押し法の効果

なぜこの方法でしゃっくりを止めることができるのでしょうか?
それは、しゃっくりの主な原因である「延髄」の興奮を、耳を押すことにより落ち着かせることができるからです。

しかし、病気が原因でしゃっくりが起きているときはこの方法でも止まらないことがあります。病気が原因の場合は、病気の治療をすることでしゃっくりを止めることができます。

しゃっくりを止めるツボとは

とても有効的な「耳押し法」ですが、仕事中など人に見られると少し恥ずかしい場面があるかもしれません。
また、水を飲んだり、息を止める民間療法も、ときと場合によってできないこともあります。
そのようなときにオススメなのは、ツボ押しです。耳押しよりも目立たずできるので試してみましょう。

天突(てんとつ)

天突は、左右の鎖骨の中心にあるくぼみの部分にあります。
その天突の部分を体の奥に向かって、ゆっくり3秒数えながら押し、3秒数えながら離します。
この動きを1度に2セット行います。
ただし、天突は喉の部分にあるツボなのでやさしく押しましょう。

気舎(きしゃ)

気舎は、左右それぞれ指2本分の鎖骨の上にあります。
天突と同様ゆっくり3秒数えながら押し、3秒数えながら離します。
気舎は、鎖骨や肋骨、腕の動脈や静脈、全身のリンパが集まるため重要なツボといわれています。

巨闕(こけつ)

巨闕は、へその真上にあり、みぞおちの指2本分下の位置にあります。
巨闕を押すときは、4本の指をそろえて、ゆっくり押し込むように刺激します。
巨闕はしゃっくり以外にも激しい腹痛、食欲不振、疲労回復などにも効果があります。

内関(ないかん)

内関は、手のひらを上にして、手首のシワから指3本分のところにあります。
内関を押す際、親指でゆっくり押すと痛みを少し感じるので、やさしく押しましょう。
内関は、内臓の働きに効くといわれるツボで、しゃっくり以外にも胃痛や吐き気などにも効果があります。
これらのツボを押す際、少し痛いと感じる程度に押すようにしましょう。
あまりに強く押しても効果はありません。また、場所によってはデリケートな部位もあるので適度な強さを調節しながら行ってください。

病気が原因で出るしゃっくり

日常生活で突発的に起こるしゃっくりは、ほとんどの場合は自然と止まります。
しかし、一度始まったしゃっくりがなかなか止まらない場合は、病気が原因で起こっている可能性があります。
どのような病気がしゃっくりを引き起こすのかをご説明します。

肺炎や肺がんなど

肺炎や肺がんなどの肺の病気を発症すると横隔神経を刺激して、しゃっくりが止まらなくなることがあります。

しゃっくりだけではなく咳も止まらなくなり、呼吸困難などの症状が同時に起こる場合は、一度病院で診てもらいましょう。

肝臓がんや胃がん、食道がんなど

横隔膜に近い消化器官の潰瘍や炎症は、横隔膜を直接刺激します。そのことによりしゃっくりが止まらなくなることがあります。

しゃっくりだけでなく、胃がんの場合であれば胃の不快感や食欲不振などの症状が現れ、食道がんであれば熱い食べ物、飲み物を飲み込むときにもしみるような痛みを伴う場合があります。

アルコール中毒

アルコールを摂取すると体が冷えるため、横隔膜がけいれんししゃっくりを起こします。
一時的な飲酒であれば自然に止まるので問題はありません。

しかし、アルコール中毒の場合、過度の飲酒を繰り返すため、しゃっくりが度々起きてしまいます。その繰り返し起こっているしゃっくりのせいで、日常生活でも横隔膜がけいれんしやすく止まりづらい状態になります。

脳腫瘍や脳梗塞など

脳腫瘍や脳梗塞など脳に病気を発症すると、脳にある中枢神経が刺激されます。そうすると体中のあらゆるところに症状が現れます。その症状の1つとして、横隔膜への伝達障害が起こりしゃっくりが止まらなくなります。しゃっくり以外にも頭痛や吐き気などの症状が一緒に出る場合もあります。
上記以外の病気でもしゃっくりが出ることがあります。
しゃっくりが一時的なものではなく続く場合や他の症状と同時にしゃっくりが起こる場合は、一度病院を受診するとよいでしょう。

まとめ

突然起こるしゃっくりは困りますが、止め方を知っていればその場で対処することができます。
また、しゃっくりで体に潜む病気が発見される場合もあります。
しゃっくりが起こったときには、ぜひ本記事でオススメした方法を試してみてはいかがでしょうか。

監修

・総合診療医 院長 豊田 早苗

・総合診療医 院長 豊田 早苗

専門分野 
総合診療医

経歴
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年 医師国家試験取得。
2006年とよだクリニック開業。
2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。

資格
医師免許

所属学会:総合診療医学会、認知症予防学会

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