はじめに

酒粕は昔から、甘酒で飲むこと以外にも調味料としても使われていました。
酒粕はその名前の通り、酒を造るときに出た残りカスのことをいいますが、侮れないほどたくさんの栄養素を含んでいます。酒粕の魅力についてご紹介しますのでぜひ摂り入れてみてください。

酒粕とは

酒粕とは清酒を作る際、清酒の元となる「もろみ」に圧力を加えて絞ったときに出た残りかすのことです。
酒粕には「炭水化物」「ビタミン」「ミネラル」などの栄養素が豊富に含まれています。

皆さんは普段、酒粕をどのような方法で摂り入れていますか?
甘酒として飲む方が多いのではないでしょうか。
しかし、甘酒には「酒粕」を使って作るものと「米麹」を使っているものの2種類があります。次項では「酒粕」と「米麹」この2つの材料の違いについて見てみましょう。
酒粕甘酒と米麹甘酒の違いは大きく分けて3つの違いがあります。

1.使われている材料の違い
2.甘酒に含まれるアルコール成分の違い
3.甘酒に含まれる栄養素の違い

それぞれどのように違うのか詳しくご説明します。

1.使われている材料の違い

酒粕甘酒の元となる材料は、酒粕で清酒の元となる「もろみ」に圧力を加えて絞った後の残りかすです。
それに対して、米麹甘酒の元となる材料は、ゆるく炊いて潰した「米」に麹菌を加えて発酵させて作られています。

2.甘酒に含まれるアルコール成分の違い

酒粕甘酒は、清酒を作る際にできる酒粕なのでアルコールの成分が含まれています。
しかし米麹甘酒は潰したお米に麹菌を加えて作っているのでアルコール成分が含まれません。

3.甘酒に含まれる栄養素の違い

100gあたりのそれぞれのカロリーは、酒粕227kcal、米麹286kcalと酒粕甘酒の方が若干低いです。
また、脂質も 酒粕1.5g 米麹1.7gと酒粕の方が下回っています。

その他にも「タンパク質」「葉酸」「食物繊維」「ビタミンB群」が含まれていますが、いずれも米麹に比べると酒粕の方が栄養が高いです。

しかし、酒粕はカロリーは米麹と比べて低めですが、甘みが少ないため砂糖を加えたり甘く飲みやすい工夫をすると、かえってカロリーが高くなってしまう場合があります。
また、酒粕は不溶性の食物繊維のため、飲み過ぎは消化不良になる可能性があるため飲みすぎには注意が必要です。

酒粕は太る!?

酒粕は栄養素が豊富に含まれているのであれば食事で摂取したいと考える方もいると思います。
しかし、そこで気になるのはカロリーの問題です。たとえ栄養素が豊富でもカロリーが高いと太る心配をしなくてはなりません。
前項でもご説明しましたが酒粕に含まれるカロリーは、100gあたり「227kcal」です。
白米100gあたりのカロリーは「168kcal」なので、純粋な摂取量は酒粕の方がカロリーが高いといえます。

しかし、白米とは違い、酒粕は酒粕だけで食べる方は少ないと思います。
甘酒などに使われるのは、1杯25g~30g程度なのでカロリーに置き換えると57kcal~68kcalです。

このカロリー量であれば、1日に1杯甘酒を飲んだとしても太る原因にはならないため安心して摂ることができます。

酒粕が持つ体に良い効果とは

太る心配も少なく、栄養豊富な酒粕ですが、体にどのようなメリットがあるのでしょうか?
先ほどご紹介した「タンパク質」「葉酸」「食物繊維」「ビタミンB群」の栄養素だけではなく意外な効能もあるのでご紹介します。

<酒粕で病気予防>

酒粕を摂取することでいくつかの病気を予防する効果があります。

1.糖尿病予防

現代病とも言われる成人病ですが、その中でも多いのが糖尿病です。
糖尿病は、膵臓の機能が低下し、体内でインスリンが必要量作られなくなることで発症します。

反対にインスリンは過剰分泌されると脂肪の合成が進んでしまいます。通常、その脂肪の過剰合成を抑えるためのホルモンが機能しているため、肥満を未然に防ぐ役割を果たしています。しかし、生活習慣の悪化などからインスリンやホルモンのバランスが悪くなってしまうと、急激に痩せたり太る原因となります。

酒粕には、インスリンと似た働きをする効果があるため、糖尿病を予防するだけでなく体内のバランスを改善することもできます。

2.骨粗しょう症予防

女性の方は、年齢と共に女性ホルモンが減ることで発症する更年期や、閉経後など骨密度が低下しやすくなるため骨粗しょう症を発症しやすくなります。

酒粕は、骨の組織を壊してしまう物質を阻害する効果があるため、骨粗しょう症を予防することができます。

3.ガン予防

現代社会において、食生活の変化などが影響して、若い方や婦人科系のガンになる方が増えています。また、食生活だけでなく生活習慣によってもガンを引き起こしやすい環境もあります。
若年層が発症したガンは、細胞分裂が活発なため病気の進行が速いことが特徴です。

酒粕には、リンパの働きを良くしてくれる「α―ハイドロオキシン酸」という成分が含まれておりガン予防につながります。

4.その他

この他にもさまざまな病気を予防する効果があります。

・悪玉コレステロールの減少
・アレルギー体質の改善
・心疾患予防
・認知症予防
・動脈硬化予防

<酒粕の美容効果>

いくつもの病気に予防効果が見込めることがわかりましたが、続いては特に女性が気になる美容効果についてご説明します。

1.肌荒れ改善

ニキビや吹き出物など肌荒れの原因は、さまざまなものがあります。
その1つに便秘が原因で肌荒れを起こしている場合があります。

便秘は、腸の中で便が長く留まります。すると腸の中で発酵し有毒ガスを発生します。このガスの毒素が肌に出てしまい肌荒れを起こします。

酒粕には、食物繊維が豊富に含まれているため便秘を改善してくれるだけでなく、ビタミンBも含まれているので肌の代謝を良くして肌トラブルの改善に効果があります。

2.ダイエット

酒粕はダイエットにも効果があります。

余分な脂肪が蓄積すると基礎代謝が落ち肥満の原因になりますが、酒粕に含まれる「レジスタントプロテイン」という成分が、余分な脂肪やコレステロールを排出する役割りを担っています。

また、酒粕に含まれるビタミンB群が糖分や脂質の分解を助ける働きがあるため、「代謝の促進」「内臓脂肪の燃焼」を促し、体の中から健康的に痩せることができます。

3.美白効果

年齢を重ねるとシミやそばかすが気になってくる方もいると思います。
シミやそばかすの原因は、紫外線などによって過剰に生成されたメラニンが蓄積されることにあります。

酒粕には、肌のターンオーバーを促す効果があるため、メラニンの蓄積を抑える働きをすることができます。酒粕を食べることで体の内側からシミやそばかすを防ぐことができます。

4.乾燥肌改善

冬場やエアコンなどで肌が乾燥すると、肌をバリアする機能が衰えるため肌トラブルを起こしやすくなります。
酒粕には、保湿効果があるため肌の乾燥を防ぐことができます。

5.血行促進効果

不規則な生活や加齢などにより血流が悪くなると、肌に十分な栄養を届けることが難しくなります。血流が悪いままでは、肌トラブルを起こしやすくなります。

酒粕には停滞している血液を促す効果があるので、血流を促進させ肌トラブルを改善することができます。

酒粕のアルコール度数とアルコールの飛ばし方

酒粕は、病気予防や美容など体にとって良い効果を発揮してくれるため、積極的に食事に取り入れたいと思われた方もいると思います。
しかし、酒粕は清酒を作る際にできた残りかすのため、アルコールが含まれています。
手軽に食事に摂り入れるためにも酒粕アルコール度数やアルコールの飛ばし方を見てみましょう。

酒粕に含まれるアルコール度数は?

酒粕のアルコール度数は約6~8%です。
このアルコール度数は、日本でよく飲まれているビールと同じくらいのアルコール度数です。

アルコールが含まれているということは甘酒や粕汁などに使う際、アルコールを飛ばさないと未成年やドライバーの方に注意が必要です。

また、市販されている甘酒は作る際、アルコールを飛ばして作られているためアルコール度数はほとんど1%以下しか含まれていません。

酒粕に含まれるアルコールの飛ばし方は?

アルコールは熱することで気化し、空気中に飛んでいく性質があります。
そのためには、78℃以上で加熱する必要があります。

粕汁などの料理で酒粕を使う際は、調理中の過熱でアルコールが飛びます。
しかし、甘酒などそのまま酒粕を摂り入れる場合は酒粕を水に溶かして沸騰させる必要があります。沸騰すれば100℃を超えているため、数分でアルコールを飛ばすことができます。

また、市販されている甘酒は上記にも書いたように非常に低いアルコール度数ですが、気になる方は甘酒を鍋などに入れ直し、十分に沸騰させアルコールを飛ばすことで、ノンアルコールの甘酒を作ることができます。

酒粕を摂取する上での注意点

栄養豊富で病気予防や美容に良い酒粕ですが、摂取するにあたって注意することはあるのでしょうか?
ここでは、酒粕を摂取する上での注意点についてご紹介していきます。

妊娠中や授乳中は摂取するのを控える

酒粕には、通常アルコールが含まれているため、妊娠中に摂取すると血液中からアルコール成分が胎児に送られます。
胎児にアルコール成分が慢性的に送られると「胎児性アルコール症候群」という症状を引き起こし、知的障害などの先天性疾患を持った赤ちゃんが生まれてくる可能性があるため摂取することは控えましょう。

また、飲酒と同様に授乳中も赤ちゃんに悪影響が出たり、アルコール成分によって女性ホルモンの働きを抑制してしまうため母乳の出が悪くなる原因にもつながりますので摂取することは控えましょう。
アルコール成分の入った酒粕を誤って摂取してしまった場合には、母乳をできるだけ搾乳して丸1日赤ちゃんへの母乳を休みましょう。

子供は摂りすぎないように注意する

アルコールを飛ばしていない酒粕は摂取を控えましょう。
しかし、甘酒が好きな子もいると思います。その場合は、アルコールを十分に飛ばすことと、摂りすぎに注意しましょう。
未成年のアルコール摂取過多は、成長過程に悪影響を及ぼす可能性があります。

賞味期限を守って摂取するようにしましょう

酒粕はアルコール成分が含まれているため、菌が繁殖しにくい環境のため「消費期限」ではなく、「賞味期限」が設定されています。
ただし、酒粕の中で菌が生きているため時間とともに熟成が進み、時間が経ちすぎるとすっぱい臭いがしたり糸が引くようになります。

酒粕の賞味期限は、保存状態によって変わりますが3カ月~半年程度が目安です。正しい保存方法で賞味期限を守って摂取しましょう。

甘酒や粕汁だけじゃない!?酒粕で作るお手軽レシピ

酒粕を使ったレシピは、甘酒や粕汁しかないと思っていませんか?
最近は、甘酒や粕汁以外のレシピもたくさんあります。
ここでは、酒粕を使ったお手軽レシピをいくつがご紹介します。

1.キュウリの粕漬け

材料(2人前)
・酒粕         20g
・キュウリ       2/3本(キャベツなど冷蔵庫に余った野菜でも大丈夫)
・砂糖         大さじ1と1/3
・塩          小さじ2
・みりん        大さじ4
<作り方>
1.キュウリを縦半分に切った後、1cm幅に切る
2.ビニール袋に酒粕を小さくちぎっていれる
3.酒粕を入れたビニール袋に、キュウリ・砂糖・塩・みりんをいれる
4.すべての材料を入れたビニール袋をしっかりもみ込む
 (この時、酒粕が完全に溶けなくても大丈夫です)
5.ビニール袋ごと材料を冷蔵庫に入れ、約3時間冷やす

2.酒粕おにぎり

材料(2~3個分)
・ご飯           茶碗2杯
・青ネギ          大さじ1~2(お好みで量を調節する)
・オリーブオイル      小さじ1
・塩            小さじ1/2
・酒粕           20g
<作り方>
1.オリーブオイル・塩・酒粕を混ぜ合わせ、ひと塊りにする
2.ひと塊りにしたものを薄く伸ばしてクッキングシートの上に乗せる
3.トースターで約3分焦げ目がつくまで焼く
4.焼きあがったものを粗みじんにする
5.青ネギを小口切りにする
6.ご飯に3と4を入れて混ぜ、おにぎりにする

酒粕パウンドケーキ

材料(6人分)
・薄力粉            100g
・ベーキングパウダー      5g
・卵              1個
・酒粕             50g
・豆乳             15g
・砂糖             60g
・油              50g
<作り方>
1.ボウルに酒粕・豆乳・砂糖・油を入れ混ぜる。混ざったら卵を加え、さらによく混ぜる
2.薄力粉とベーキングパウダーを加えて泡立て器で混ぜる
3.パウンドケーキの型にクッキングシートを敷いて、2で作ったものを流し入れ表面を平らにする
4.型に流し入れたものの真ん中にゴムベラで軽く切れ込みを入れる
5.180度で予熱したオーブンに入れて、180度で約25分~30分焼く

まとめ

いかがでしたか?
酒粕にはさまざまな栄養成分が入っており、病気予防や美容にも効果を発揮する万能な食べ物です。
しかし、アルコールが含まれているため摂りすぎには注意しましょう。
自分に合った摂り方を見つけて、ぜひ美容や健康にお役立てください。

監修

・救急医、内科医 増田 陽子

・救急医、内科医 増田 陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

関連する記事

関連するキーワード

著者