妊娠後期に起こる変化

妊娠後期とは、妊娠37週~39週くらいまでを言います。臨月とも呼ばれ、出産に向けて母子ともに様々な変化が訪れます。

妊娠後期に赤ちゃんの急激な体の成長に伴い、お母さんの子宮が大きくなると、胃や腸、膀胱が圧迫されてきます。
そうなると、個人差はありますが、人によって以下のような様々な不調が現れてくることがあります。
・胃が圧迫されるのであまり食べられない、胃もたれや胸やけがする
・腸の圧迫によって便秘、または下痢になる
・膀胱が圧迫されて頻尿になる、尿漏れをする

さらに、骨盤が開いてくることで腰痛や恥骨部痛などといった体の痛みが現れることもあります。むくみや多汗など症状や、貧血、妊娠糖尿病などに特に注意が必要となるのも、妊娠後期の特徴です。

妊娠後期の体重増加、体型変化の原因

妊娠後期になると、体重が一気に増加し始めます。当然、赤ちゃんや羊水・胎盤などの重さも増えますが、それ以上にお母さん自身が増えすぎていないか注意が必要です。
ここでは、妊娠後期に起こる体重増加や体型変化の原因をご説明します。

糖分や脂肪分の過剰摂取

お母さんの体重増加の原因の一つとしてあげられるのが、糖分や脂肪分の過剰摂取です。
妊娠後期になると、無性に甘いものを食べたくなる方が多いようです。出産や育児に備えての本能的なものもありますが、産道に脂肪がつきすぎてしまうことは、お産のリスクになってしまいます。脂肪によって産道が狭くなると、赤ちゃんがスムーズに通り抜けることができません。

血管圧迫によるむくみ

妊娠中はむくみも多くなります。特に、後期では下半身に顕著にむくみが現れます。
その理由は、大きくなった子宮が足の付け根の血管を圧迫することにあります。それによって、下半身から心臓まで血液が戻りにくくなります。
これが後期のむくみの原因です。
下半身がむくむと、老廃物を含んだ血液が腎臓まで十分に届かず、妊娠高血圧症などの原因となることもあります。

妊娠後期の栄養・体重管理

妊娠後期に摂りすぎないようにしたい栄養素

妊娠後期の体重管理のために避けたい栄養素はずばり3つあります。
それは糖分と脂肪分、そして塩分です。

甘いものの中には脂肪分があまり含まれていないものもありますが、糖質も摂りすぎれば脂肪に代わります。
さらに、塩分の過剰摂取は余計に体に水分をため込もうとしますから、むくみの原因となります。
調味料や風味、うま味などの多い食材をうまく利用しながら、甘いものや塩辛いものの摂りすぎに注意しましょう。

妊娠中は定期的な運動を

体重管理のポイントとして、食事のほかにも運動があります。
特に、妊娠後期の運動には以下のようなメリットあるので、積極的に取り入れましょう

・出産に向けた柔軟な筋肉を作る
・摂りすぎたエネルギーを消費する
・心肺機能を強化する
・股関節など、身体を柔らかくする
・腰痛などの予防や改善になる
・血流が促進されるのでむくみが軽減される

このように、運動は妊娠後期に起こりがちなトラブルを防ぐだけでなく、安産に向けた体を作る効果も持っています。

とはいえ、大きなおなかでの無理な運動は危険です。妊娠後期に適している運動は、ウォーキングやストレッチ、マタニティヨガ、温水プールなど、強度の低い強度の低いゆっくりとした運動です。
特に、不安定な動作や腹圧のかかる動作は行わないように注意し、おなかの張りを感じたらすぐに中止しましょう。

妊娠後期に必要な栄養素

たんぱく質

たんぱく質は筋肉や肌など、身体を作る大事な栄養素で、母子ともに必要とされます。安産のためには十分な筋肉がついていることが望まれます。
大豆や卵、青魚、肉類などを積極的に食事に取り入れ、良質なたんぱく質を摂取しましょう。

鉄分

血液中の鉄分は、酸素の運搬という非常に重要な役目を持っています。そのため、鉄分の不足になると、酸素や栄養が十分に身体に行き届かなくなってしまいます。

女性は妊娠していない時から鉄分が不足傾向にあり、さらに、妊娠中は鉄欠乏性の貧血が起こりやすくなります妊娠中の貧血は、産後の回復にも大きく関係してきますから、かなり意識的に鉄分をとる必要があります。
レバー、シジミやハマグリなどの貝類、海苔などから鉄分が摂取できます。

食物繊維

食物繊維には『不溶性食物繊維』と『水溶性食物繊維』の2種類があります。
どちらも便秘に効果があり、不溶性食物繊維は便のカサを増やし、水溶性食物繊維は便を柔らかくして腸の動きをスムーズにしてくれます。

妊娠後期の便秘の原因は、腸の動きが妨げられることにあります。そのため、この時期に摂取する必要があるのは、腸の動きを助ける水溶性食物繊維です。水溶性食物繊維はエシャロットやニンニク、きのこ類や海藻類に多く含まれるので、積極的に摂ると良いでしょう。
不溶性食物繊維を摂ってしまうと、逆に便秘が悪化する可能性があるので注意しましょう。

※エシャロットやニンニクは、妊婦さんには匂いがきつかったり、ガスが発生しやすい体質の方もいらっしゃったりします。そのため、体調に合わない場合には無理に摂取しないようにしてください。

カルシウム+ビタミンD

カルシウムは骨を作ったり、血液を凝固させたりするのに欠かせない成分です。
不足したカルシウムは、骨から溶け出して体内に補充されるため、カルシウムの不足によって骨や歯がもろくなってしまう恐れがあります。
また、カルシウムが不足していると、止血しにくい状態になるため、お産時の大量出血につながりかねません。

身体にとって重要なカルシウムですが、体内に吸収されにくく、カルシウム単体で摂取しても、ほとんどが体外に排出されてしまいます。
カルシウムを効率的に吸収させるためには、ビタミンDを同時に摂取する必要があります。カルシウムは乳製品や小魚などに多く含まれ、ビタミンDは干し椎茸や魚の干物などから多く摂取することができます。

妊娠後期におすすめのレシピ

妊娠後期に積極的に摂取したいものは、以下の栄養素です。
・たんぱく質
・鉄分
・水溶性食物繊維
・カルシウム
・ビタミンD

一方、控えたいものは以下の3つです。
・糖分
・脂肪分
・塩分

これらを考慮した妊娠後期にお勧めのレシピを紹介します。

鮭入りクラムチャウダー

アサリと牛乳で作る温かいクラムチャウダーに鮭の切り身を追加すると、カルシウム、鉄分、ビタミンD、たんぱく質などの栄養素が効率的に摂取できます。

さらに、アサリのうまみで減塩も可能です。牛乳を低脂肪乳に変えることで脂肪分の摂取量を減らすこともできます。

【材料】(2人分)
鮭 1切れ
アサリ 10個
タマネギ 1/2個
ニンジン 1/3本
キャベツや白菜などのお好みの野菜 適量
バター 少量
小麦後 小さじ1
コンソメまたは鶏がらスープの素 1つまたは小さじ1
牛乳 200cc
水 200cc

【作り方】
① 野菜類とアサリ、鮭をバターで炒めて具材に火を通す
② 少量ずつ小麦粉を加えてなじませる
③ 水とコンソメまたは鶏がらスープの素を足して煮込む
④ 最後に牛乳を入れてとろみがつくまで加熱する

アサリは殻付きのものの方がだしが出るのでおすすめです。

しらすとオクラ・長いものサラダ

シラスにはカルシウムがとビタミンDが豊富に含まれており、貧血対策にはもってこいの食材といえます。オクラと長芋に共通する「ネバネバ」は、水溶性食物繊維が多く含まれる証拠で、貧血と便秘解消効果が期待できるのがこのレシピです。

【材料】(2人分)
シラス 50g
オクラ 8~10本
長芋 200g
刻みのり 適量
かつお節 適量

【作り方】
① 長いもと茹でたオクラを食べやすい大きさに切る
② ①にシラスを加えて和える
③ 最後にトッピングとして刻みのりとかつお節を散らす

シラスには塩分が含まれているので、刻みのりや鰹節などのトッピングで風味を出し、ドレッシングや調味料は最小限に抑えましょう。

甘いものが食べたくなったら

生クリームやチョコレートなど、糖分や脂肪分が多く含まれるスイーツが不意に食べたくなる事があると思います。そんな時に代用できるのがヨーグルトとココアです。

ヨーグルトを水切りすると、もったりとした濃厚な食感に変わります。程よく酸味も抜けるので、まるでクリームを口に入れている感じが味わえます。
低脂肪のヨーグルトを使えば、カルシウムとたんぱく質も同時摂取できます。

また、ココアも甘いものを食べたい時の代替品として取り入れられます。
基本的にチョコレートとココアは同じものからできています。バナナにココアパウダーを振りかけるだけでも、立派なスイーツの完成です。この際、バナナはシュガースポットのある完熟したものがおすすめです。
バナナにはカリウムが豊富なので、むくみの軽減効果も期待できます。

おわりに

妊娠中の栄養管理の重要性やポイントはご参考になりましたでしょうか?
食事と運動を効果的に組み合わせながら、栄養管理と体重管理を行いましょう。
しかし何事も、「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」と言われるように、やり過ぎるのも、やらなさ過ぎるのも良くありません。
ストレスや危険のない範囲で楽しみながら、残り少なくなってきたマタニティライフを満喫しましょう。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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