知覚過敏とは

知覚過敏とは、正式には象牙質知覚過敏症といいます。
歯の象牙質という部分が露出することで、むし歯でもないのに歯がしみたり痛んだりするのが特徴です。

知覚過敏の症状

知覚過敏の主な症状は、一過性の歯の痛みです。
知覚過敏では主に冷たいものの刺激に反応して、歯がしみたり痛んだりします。

何もしないのに痛い場合や、温かいものの刺激にも反応するようなら、歯髄炎というまた別の病気の可能性が考えられます。
また、知覚過敏の痛みの強さは、違和感程度から少し辛い程度の痛みが多いのですが、中には痛み止めを使わなければならないほど強い痛みを覚えることもあります。

知覚過敏の原因

本来、歯の表面には現れていない象牙質が露出することによって知覚過敏は起こります。
では、象牙質が露出する原因は何でしょうか。最も多いのが歯茎が下がることです。

強すぎる不適切な歯磨き

歯茎が下がってくる原因の中で最も多いとされるのが、不適切な歯磨き方法、特に強く歯茎をこすってしまうような歯磨きです。歯磨きの方法が適切でなく、ひどい場合は、ほとんどの歯の歯茎が下がっていることもあります。
そして歯茎が下がると、歯根部分の象牙質が露出しますので、知覚過敏が起こってきます。

加齢

実は、健康な歯茎でも平均すると1年間に0.2ミリメートルくらいの速さで、歯茎が少しずつ減ってくることがわかっています。
1年間に0.2ミリメートルですから、10年経てば2ミリメートル減るわけです。年齢が上がれば上がるほど減っていくわけですから、加齢も歯茎が下がってくる原因のひとつに挙げられます。
いいかえると、加齢によっても象牙質が露出してくるので、知覚過敏が起こりえるというわけです。

歯周病

歯周病とは、歯周組織に生じる病気のことです。歯周組織は、歯肉(歯茎)、歯槽骨(歯を支えている骨)、セメント質(歯根の表面を覆っている硬い組織)、歯根膜(歯槽骨とセメント質を結びつけている薄い靭帯のような膜)の4つの組織から成り立っています。

歯周病は、まず歯茎の腫れから始まります。

これを歯肉炎といいます。
歯肉炎の段階で適切な治療を受けれればい良いのですが、放置してさらに進行すると歯茎以外の組織に炎症が拡大し、歯周炎になります。
歯周炎になると歯槽骨が吸収されて減ってくるので、それに伴って歯茎も下がってしまいます。

歯並び

全体的な歯の並びから外側(頬側)へはみ出したような位置にある歯は、外側の歯茎が下がりやすい傾向にあります。
歯並びによって歯茎が下がってきた場合でも、象牙質が露出しますので、知覚過敏を起こすことがあります。

歯ぎしり

強い歯ぎしりをする癖があると、歯ぎしりによって歯がすり減ってきます。歯の最も外側にあるエナメル質は骨よりも硬く、身体の中で最も硬い物質といわれていますが、歯ぎしりをすることですり減ってしまいます。
エナメル質がすり減って薄くなるにつれて、歯茎が下がってこなくても象牙質が露出しやすくなってきます。
つまり歯ぎしりをする癖によって、知覚過敏が起こってくることがあるのです。

知覚過敏の予防法

知覚過敏を予防するためには、歯茎が下がらないようにするのが一番です。
加齢によって歯茎が下がるのは防げないので、それ以外の病的な原因によって下がるのを防ぎたいところです。

歯磨き方法の改善

不適切な歯磨き方法で歯を磨くことが、歯茎が下がる最も多い原因なので、まずは歯磨き方法を見直すことから始めましょう。
ご自身に適した歯磨きの方法、歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスについては、歯科医院で相談されると説明してもらえます。

歯周病の治療

歯周病によって歯茎が下がってくるのは、歯周病の治療を受けることで防ぎましょう。
歯周病治療のポイントは、プラークコントロールです。
プラークとは、歯の表面についている白いカスのような付着物のことで、その正体は細菌の塊です。
歯周病を引き起こす歯周病菌は、このプラークの中に潜んでいます。
そこで、プラークを取り除く、プラークコントロールが重要です。
プラークコントロールは、歯科医院で行なうプロフェッショナルケアと、自宅で日々行なうセルフケアのどちらもが大切です。

矯正治療

歯の位置が外側にはみだしたために、歯茎が下がっているような場合には、矯正治療をして歯の位置を内側に移動させると歯茎が戻ってくることがあります。

知覚過敏の治療法

では、知覚過敏になったらどのような治療をするのでしょうか。

薬物治療

知覚過敏の治療の第一選択が、薬物治療です。
薬物治療では、知覚過敏治療剤とよばれる薬を歯に塗布します。知覚過敏治療剤には、塗ってから特殊な光を照射するもの、A液とB液を混ぜ合わせるもの、そのまま塗るものなどいろいろな種類があります。

充填治療

歯茎が下がって、その部分の歯根がすり減ってきたような症例には、すり減った部分にコンポジットレジンとよばれる歯の色に似たプラスチック製の詰めものをする治療が行なわれます。
これを充填治療とよびます。詰めることで、歯の厚みを確保し、冷たいものなどの刺激が伝わりにくくするのです。

レーザー治療

レーザーを照射することで、露出した象牙質の象牙細管を封鎖し、知覚過敏を防ぎます。

抜髄(ばつずい)

抜髄とは、歯の神経を取り除く治療のことです。抜髄すると、歯の神経が無くなるので歯は痛みを感じなくなります。
一度神経を取り除くと、もう二度ともとには戻らないため、抜髄は、よほど症状がつらく、日常生活に支障を来すような場合に限られます。

まとめ

知覚過敏はむし歯でないのに歯がしみてくる病気です。
おいしい食事の最中に歯がしみてくると、せっかくの楽しい時間なのに残念な気持ちになってしまいかねません。今回、紹介した知覚過敏の治療法や予防法によって、知覚過敏を起こさないようにしましょう。

監修

・日本口腔外科学会専門医、日本口腔科学会認定医 見立英史

・日本口腔外科学会専門医、日本口腔科学会認定医 見立英史

専門分野
歯科、口腔外科

経歴
九州大学歯学部卒業。2003年歯科医師免許取得。2009年博士号(歯学)取得。九州大学病院顎口腔外科医員。2011年医療法人仁慈会西原歯科勤務。2013年九州大学病院顎口腔外科助教。2016年福岡歯科大学口腔外科助教。2018年長崎大学病院 顎口腔再生外科

資格
歯科医師免許
日本口腔外科学会専門医
日本口腔科学会認定医

所属学会
日本口腔科学会
日本口腔外科学会
日本口腔腫瘍学会

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