はじめに

男ならば一度はあこがれる筋肉のついた体。筋トレの方法にはいろいろありますが、結局はどこがポイントなのでしょう。
今回は理論から含めて、筋肉をつけるための方法にわかりやすく答えます。

筋肉がつく仕組みについて

2.筋肉がつく仕組みについて

筋肉をつけるために筋トレを行うというのは多くの人が知っている方法ですが、では具体的にどんな仕組みで筋肉というのは増えるのでしょうか。

一般的に「筋肉」というと、体を動かすための骨格筋のことを指すことがほとんどでしょう。
この骨格筋は、細い繊維状の細胞が束になって出来たもので、この一本一本の線維を「筋繊維」と呼びます。筋繊維は体の細胞の中でもかなり大きく、長さ数ミリから数センチと、肉眼でも見ることが出来るサイズなのです。

さらに筋肉が増える仕組みの中で大切なのが、「筋サテライト細胞」という細胞です。この細胞は筋線維の表面にへばりついている小さな細胞で、普段はなんの働きもせず、眠ったような状態で過ごしています。

しかし、筋繊維が強い運動や筋トレによって傷ついたり、断裂したりすると、筋サテライト細胞は、とたんに活性化し、どんどん分裂して数が増えます。これは「分化」と呼ばれ、体を構成するための大事な機能なのですが、筋サテライト細胞が分化した細胞が集まると、「筋管」というものを構成し、それが更に育つことで新たな筋繊維となるのです。

つまり、筋肉が傷つくと、修復の過程で筋肉が増える。
これが、運動や筋トレによって筋肉が育つ仕組みとなっているわけですね。

ムキムキになる方法は?

では、実際に効率的に筋肉をつけるにはどうしたら良いのでしょうか。

筋トレを行うにあたって重要な原則として、最も一般的なのが「過負荷の原則」です。過負荷の原則とは、負荷が通常よりも大きくなければ、筋力の向上を期待する事が出来ないということで、一般的には最大筋力の3分の2以上の強さで筋トレを行う必要があるとされています。


もう1つ大切な原則が、「特異性の原則」と呼ばれるものです。これは、ある種の能力は同種の運動を用いたトレーニングによって効果的に高められるというもので、以下の3つに分けて説明することが出来ます。

1) 筋肉の活動方式からみた特異性
実は、筋肉の動かし方にはいくつかの種類が存在します。例えば、重さを支えて体を静止させるような筋肉の使い方は「等尺性収縮」とよばれ、椅子に座って足をまっすぐ地面に水平に伸ばしたような場合がこれにあたります。
他にも「短縮性」・「伸張性」・「等張性」「等速性」といったものが存在するのですが、同じ動かし方をするようなトレーニングを行うことが、最も効率的であることがわかっています。つまり、等尺性の筋力を鍛えたいのであれば、等尺性の運動を行うのが最も良いということです。

2) 負荷の方式からみた特異性
運動の方式だけでなく、負荷のかけ方によっても得られる効果は変わってきます。
例えば最大の負荷、つまりは自分が持ち上げられる最大のおもりでトレーニングを行うような場合では、最大筋力が最も効率に鍛えられます。逆に負荷をほとんどかけない場合では筋の収縮速度の強化に有効です。負荷と速度をうまく調整し、最大パワー(パワーとは、筋力と速度をかけあわせたもの)がかかるトレーニングを行えば、最大パワーを効果的に鍛えることもできるのです。

3) 動作の方式からみた特異性
筋肉の活動方式を揃えても、実際の動作が違う場合では筋力の増加率に違いが出てきます。例えば、スクワットによって筋トレを行った場合、他の足を使うトレーニングに比べて、スクワットでの筋力が最も効率的に増加します。


まとめると、目的によって効率的な筋トレの方法はかなり変わってくるということになります。例えば、見た目重視で筋肉の肥大を狙う場合は、負荷を最大筋力の60〜70%に抑え、筋トレの量自体を多くすることが良いとされています。
一方、ウエイトリフティングのように最大筋力を伸ばしたい場合は、なるべく最大筋力に近い負荷をかけて、頻度を落とした筋トレを行うのが効率的になるのです。

筋肥大に必要な栄養素

筋肉を増やすにあたって、もちろん効率的な筋トレは大切ですが、同じぐらい重要なのが筋肉を育てるための栄養素の摂取です。

筋肉が増えるためには、まず何よりも「タンパク質」が重要です。大体の目安としては、一日あたり体重一キロに対して1.5gのタンパク質の摂取が求められます。

蛋白質を多く含む食品としては、鶏胸肉、牛肉の赤身、魚、卵、乳製品、大豆などがあります、もちろん、いわゆるプロテインサプリメントを活用するのも手でしょう。
また1つのポイントとして、筋トレを始めたばかりの頃(半年程度まで)は特に筋肉がつきやすいため、タンパク質をやや多めに、体重一キロに対して2gくらい摂取すると良いと思います。

もう一つ大切なのが、「炭水化物」です。炭水化物ダイエットなどというものもあり、ネガティブな印象を抱いている方もいるかもしれませんが、筋を増やすためにはタンパク質に次いで大切な栄養素の1つです。
目安として、一日あたり体重一キロに対して4〜6.5g程度の炭水化物を取ることが良いでしょう。

その他に重要なのが、「食事のタイミング」です。
体の中に常に必要な栄養素がある状態を保つため、食事の回数を増やし、2、3時間に一回タンパク質や炭水化物を多く含む食事を取るようにします。

また、筋トレの前後にはプロテインサプリメントなどを用いてタンパク質の摂取を行うのが効果的です。トレーニング前にホエイプロテインなどの吸収の早いプロテインを摂取することで、筋トレの時に必要な栄養素を確保することができ、トレーニング後にも摂取することで筋の修復に必要な栄養素を不足させる事なく供給できます。

筋トレをして筋肉がつくまでの期間

筋トレをすることによって筋肉がつくのは当然のことですが、実際に筋肉がふえるまでにはどれくらいの時間がかかるのでしょうか。

筋トレの頻度や種類にもよりますが、一般的には筋トレ開始から40日程度で筋肉の肥大が始まるとされています。それまでは筋力は増加するものの、それは主に神経系の改善によるもので、筋肥大は起こっていません。
40日以降にトレーニングの頻度や強度に応じて、緩やかに筋肥大と筋力増強が起こっていくのです。

まとめ

筋トレを効率的に行うためには、まず筋肉の付き方や、トレーニングの性質についてよく知っていなければなりません。それらを理解したうえで、理論にのっとった筋力トレーニングを行うことが、何よりの近道なのです。

監修

・救急医、内科医 増田陽子

・救急医、内科医 増田陽子

専門分野 
微生物学、救急医療、老人医療

経歴
平成18年 Pittsburg State大学 生物学科微生物学・理学部生化化学 卒業
平成22 年 St. Methew School of Medicine 大学医学部 卒業
平成24年 Larkin Hospital勤務
平成26年 J.N.F Hospital 勤務

資格
日本医師資格
カリブ海医師資格
米国医師資格

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